人事のホンネ

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 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズンがスタートしました。第1弾は、日本を代表する総合商社、三菱商事です。新型コロナウイルスの影響で大混乱に陥った2021年卒の採用選考。この国内トップ企業は、WEB面接を軸としつつ、最後は対面の面接を実施して話題になりました。どんな思いで踏み切ったのでしょう? 「写真2枚」添付というユニークなエントリーシートに込めた思いは? 根掘り葉掘り聞いてきました。(編集長・木之本敬介)

■オンライン選考
 ──前代未聞のコロナ禍での2021年卒採用はいかがでしたか。
 限られた時間の中で、何がベストなのかを考える大変さは、正直なところありました。ただ、就職活動中の学生の皆さんはもっと大変だったと思います。学生の安全をいかに確保できるか、不安をいかに小さくできるかを一番に考え、一部の手法やプロセスを変えました。3月1日の採用広報解禁以降、会社説明会はほぼ100%、オンラインでのセミナーや座談の形で開きました。今までテストセンターで受けてもらっていた筆記試験についても、多くの学生を1カ所に集めてしまうことを避けたいと思い、地域にかかわらず受験できる自宅でのWEB試験に切り替えました。

 ──面接はどう変えたのですか。
 これまでは6月・7月選考それぞれで、対面の面接を3回行っていましたが、2021年卒採用では6月選考は1次から3次までをWEB面接とし、最終の4次だけ対面にしました。7月選考は1次、2次をWEB面接、最終の3次を対面にしました。全部WEB面接にするか迷いましたが、学生からは「人生の多くを過ごすであろう会社に一度も行かず、社員にも会わずに決めていいのか」という不安の声が聞こえていました。会社としても、一緒に働く仲間を一度も会わずに決めてしまっていいのかと考え、最後だけは対面を残しました。弊社の面接はWEBでも対面でも、学生1人対社員2人です。最終面接は東京と大阪の2会場で実施しました。各面接の時間は30~40分です。
 6月選考をこれまでと異なる4回の面接としたのは、7月選考と比べ受験者数が多く、安全性の面から対面での面接人数をなるべく少なくしたかったためです。

 ──WEB面接を始めた時期は?
 6月1日です。延期も考えましたが、不要に学生の就職活動時期を長引かせたくない思いもあり、昨年同様としました。

 ──「三菱商事が最終面接を対面で」の決定はニュースになりました。
 仕事をすべてオンラインで完結できる会社はWEB面接だけでもいいかもしれませんが、弊社の場合、最後は人と人が会って仕事をします。そういう会社で働く仲間をWEB面接だけで選考してしまう懸念もありました。
 最終面接では厳重な安全対策をとりました。検温を実施し、面接ではアクリル板を立ててマスク着用で行いました。お互いの表情が分かるマスク無しがベストでしたが、今回は安全が最重要事項。それに、マスクを着用していても、対面してお互いの思いを伝えることで得られるものが、学生、弊社の双方であったと思います。

 ──WEB面接は初めて?
 はい。各社3月ごろからセミナーや面接をオンライン化したので、学生は場数をこなして慣れていたようで、面接官をする社員のほうが大変という側面もありました。社員には「自分が話しすぎない」「学生のいいところ、言いたいことを引き出す」といった点を意識してもらいました。社員も半分以上が在宅での面接でした。

 ──WEB面接のメリットは?
 学生は圧倒的に効率のよい就活ができたのではないかと思います。対面だと1日に2~3社ですが、オンラインなら4~5社受けられます。自宅で受ける人が多く「本当のホームなのでアウェー感が少ない」「おかげで素が出せた」と言う学生もいました。

 ──緊張感に欠けるケースもあると聞きます。
 最後に対面を入れたのは結果的に良かったと思います。仕事では、会社や取引先・出張先などで誰かと対面するというアウェーな状況が必ずあります。そこで自分の言いたいことが言えるか、自然体でいられるかも仕事には大事です。…続きを読む

みなさんに一言!

 就職活動は自分のそれまでの人生を振り返るすごく良い機会だと、実体験からも思います。就活を楽しんでできる人が強い。面接でうまくいかないこともあると思いますが、落ち込んだときほど人と話すようにして、新しい見方や情報を入れることが大事です。凝り固まった視点で見るのではなく、たとえば商社なら事業会社に出向する、海外に行くというキャリアパスは想像できますから、そういう経験をしている社員の話を聞くとか、深さだけでなく幅も持たせて就活をするといいと思います。就活で出会った人と20年近く経った今もつながっているので、大変だけど楽しい期間なんだと思ってもらえたら嬉しいです。

三菱商事

【商社】

 三菱商事は、世界約90の国・地域に広がる当社の拠点と約1700の連結事業会社と協働しながらビジネスを展開しています。 天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループ体制で、幅広い産業を事業領域としており、貿易のみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生産・製造などの役割も自ら担っています。これからも私たちは、常に公明正大で品格のある行動を信条に、豊かな社会の実現に貢献することを目指し、さらなる成長に向けて全力で取り組んでいきます。

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