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(前編はこちら)
■ES
──どんなESか教えてください。
住谷さん(写真左) A4サイズ1枚で、手書きです。「学生時代に力を注いだこと」(ガクチカ)にはタイトルもつけてもらいます。表現力や本人の考えが分かるからです。あとは、「食を通じて実現したいこと」と「あなたの個性を自由に表現して」だけ。「個性」の欄は狭いのですが、学生は絵を描いたり色をつけたり工夫してきます。当社の商品「缶つま」を描く人もいました。
──あえて手書きにしている理由は?
梅澤さん(写真右) 性格が出るからです。私は名前をよく見ます。自分の名前は幼いころから書き続けてきているので、大きく書く人、小さく書く人、斜めに書く人と個性が出ます。字のきれい下手ではなく、ESに思いを込めようとすれば丁寧に書きますよね。反対に「おお、この誤字・脱字はすごいなあ」と思うもの、枠からはみ出して途中から縦書きになっているものも。1枚のESから集中力や良識が伝わってくるんです。かといって、ハードルの高い項目はなく、文字量もさほど多くない。志望動機欄もありません。
住谷 手書きで大変なのは分かりますが、明らかに雑でちょっとしか書いていないESもあります。必ず目は通しますが、気持ちがマイナスから入ってしまう。反対に、何度も書き直してきっちり枠内に納めたんだなと感心するものもあります。私が就活生のときもESを何回も書き直しました。
──志望動機ではなく、「食を通じて実現したいこと」を聞くのはなぜ?
住谷 食にまつわる経験、思いをベースに「将来何をしたいか」が当社に入ってやりたいこと。そこを書いてほしい。商品からイメージしやすい食品メーカーと違い、当社は口に入るものは何でも扱うし、お得意先も多岐に渡ります。それを理解したうえで、食をどう変えるかを書いてほしいですね。たとえば、「日本の食を私の手で変えたい」「海外旅行で改めて日本食はおいしいと思った。大好きな日本食を海外に広めたい」などと書いてきた学生がいます。
■面接
──次は面接ですね。
梅澤 すべて1対1の面接です。面接官と学生がテーブルを挟んで向かい合う30分の面接を、最終まで4回繰り返します。面接の場を通して企業側は学生を選考し、学生もまた企業を選ぶ。お互いに選び合う場ですから対等な力関係であるべきで、この形をとっています。距離が近いので、たまに評価シートをのぞき込む学生もいますが(笑)。
1次面接は係長クラス、2次が課長クラス、3次が人事担当で、最終面接は役員が対応します。30分の面接を4回も繰り返せば、どんな人か分かります。WEB適性検査でごまかしたとしても必ずバレます(笑)。面接では、ESの内容と実際に発言する内容、そのときの表情などが一致しているかを見て、信用できる人物かどうか判断します。当社の社是は「信用」です。ESに無理に奇抜なことを書いたり、過去の内定者のESをコピペしたりしていると、「残念ながら……」となります。自分本来の個性を大事にしてほしいですね。
──それぞれの段階で見るポイントは?
梅澤 1次、2次で、学校生活に関することはほぼ確認がとれます。3次では、PDCA(Plan計画→ Do実行→ Check評価→ Act改善)を回す力ですね。目標を持って、そこに向かって自分なりにPDCAを回した具体的な体験談が聞きたい。とくに、人をどう巻き込んだかが大切です。メーカーと小売業の間に入って、商品と情報をつなぐのが商社の仕事ですから、基本は「ヒト」です。目標を達成するにはいろんなパターンがありますが、そこに「ヒト」が入っているかどうかは大きいですね。
──面接で「気になるニュース」を聞きますか。
梅澤 私は「今日のトップニュースは?」「今日の日経平均株価は?」といった聞き方はしませんが、本題に入る前のアイスブレイクとして聞きます。そこで普段どんな情報を取り入れているか、新聞を読んでいるかどうかは分かります。新聞はコンパクトに論理的に書いてあるので、読んでいる人はネットしか見ていない人よりも自分本位ではなく客観的に話ができます。
たとえば「オリンピックのチケット当たった?」と聞いて、「選考方法をいろいろと調べました」なのか、「ボランティアをしようと思いましたが、あの時期は就活生には難しい」なのか。情報の取り方によって話の膨らみ方が違います。情報を取っていない学生だと、「応募しませんでした」だけで話が終わってしまいますから。
──行動力や人間関係が見えてきますね。
梅澤 自然なコミュニケーションが大事です。…続きを読む