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(前編はこちら)
■アンテナ
──世の中への関心、アンテナを張ることは大事ですか。
中村 絶対に大事ですね。「何にでも興味を持ってみる」「とりあえず見てみる、やってみる」と、世の中の変化に敏感になることは大事です。会社で仕事ばかりしていても新しいことは生まれません。たとえば、18時に仕事が終わって飲みに行くと「水曜日って18時に居酒屋がこんなに混んでるんだ。ノー残業デーが広まっているからビール会社に新たな提案をしてみよう」と考えてみる。
平日に早く仕事を終えてカラオケに行ったらカラオケ店がすいていた。カラオケでは女性も思い切り歌うから冬でも汗をかき、化粧が落ちたり髪のカールが取れたりします。空いている部屋を化粧品メーカーや美容家電メーカーに貸し出して、新商品をまず使ってもらう提案をしてみようとか。「仕事のアイデアは仕事ばっかりしていても出ないよ」と学生に言っています。
──世の中の変化に敏感かどうかの判断は?
中村 学生の志向はなかなか測れないので、私たちが求めるものを言い続けるしかありません。そこに共感してもらえる学生は、DNPに合うんだと思います。
私たちは子どものころから「時間割」を基準に、みんなと同じ行動をすることに慣れてしまっています。ただ仕事はそういうわけにはいきません。誰も指示してくれないし、決めてくれないし、毎日自分で考えて動かないといけません。だから、「やって」と言われたことだけをひたすらやり続けることに喜びを感じる学生は、そもそも当社を選ばないですね。
■何の会社?
──事業分野を見ると、「マーケティングコミュニケーション」「情報セキュリティ」「イメージングコミュニケーション」「生活空間マテリアル」など、印刷会社とは思えない展開をしています。いったい何の会社ですか。
中村 印刷会社です(笑)。みなさんは「紙にインクを乗せるのが印刷」と思っている。「印刷」という言葉の受け取り方にギャップがあると思うんです。私たちは印刷技術を活かして、たとえば再生医療の事業も行っています。印刷は幅広いんです。
──すいているカラオケ店の活用法を提案するのも印刷?
飯田 「情報を届ける」のが印刷の仕事なんです。カラオケ店の例も、紙には印刷しませんが、「場所の有効活用」という情報を企業に届けて、一緒に新しい価値をつくっていく我々の仕事です。次のステップとして、カラオケ店を利用する人に「化粧品サンプルや美容機器がありますよ」という情報を届けなくてはいけません。
本は単なる印刷物ではなく、情報を伝える最先端技術でした。今はネットですね。時代を経て見せ方は変わりますが、印刷会社は印刷会社です。
──「伝える」「広める」会社なんですね。
中村 私たちの強みは「P&I(Printing&Information)」にあります。学生からは「紙の本が売れなくなったからいろんなことを始めたんだな」と思われるんですが、「軸は印刷」ということはブレていません。ずっと変わっていないのです。
飯田 昔から幅広くいろんなことをしていました。「紙とインクだけ」という概念をはずしてもらえれば。
──学生に伝わりますか。
中村 「印刷会社か。紙でしょ、ないな」と学生にシャットダウンされてしまったらもう無理ですね。そこで、学生が企業を絞る前からインターンシップを行ったり、説明会を行ったりしています。まだ学生が「とりあえず、いろんな会社のことを知っておこう」という時期ですね。本格的な就活モードになると、行きたい会社のことしか聞いてくれなくなるので。…続きを読む