人事のホンネ

最新記事

2018シーズン【第11回 伊藤忠商事】
個性豊かな社員、会社と仕事に誇り 求めるのは「やり抜く力」

人事・総務部 採用・人事マネジメント室長 甲斐元和(かい・もとかず)さん

2017年05月08日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの第11回は、人気の総合商社の中でも「非財閥系」として異彩を放つ伊藤忠商事です。2016年度には、三菱商事を抜いて「総合商社首位」になり話題になりました。働き方や採用方法でも常に新しい試みをしています。いったいどんな学生を求めているのか。根掘り葉掘りうかがいました。(編集長・木之本敬介)

■採用人数
 ――採用実績を教えてください。
 総合職は、2016年度は141人(男性124、女性17)が入社しました。女性比率は約12%。文理別では文系が122人、理系が19人。学部卒が131人、院卒が10人です。業務拡大で前年より10人ほど増やしました。
 2017年度入社は143人。男性121人、女性22人で、女性比率は15%です。文系120人、理系23人。学部卒が130人、院卒が13人でした。
 女性の総合職採用は、同業他社も15%から20%くらいですね。
 事務職(一般職)は、2016年度で12人採り、2017年4月入社は7人です。全員女性です。

 ――他の業界に比べると女性総合職が少ないのは、商社の仕事の事情でしょうか。
 もともと商社ビジネスはBtoB(企業間取引)中心であったこともあり、業界全体の傾向としても男性比率が高かったと言えます。1986年に男女雇用機会均等法が施行された後、弊社でも1989年から女性総合職の採用を始めましたが、しばらくは毎年5人前後と少数でした。
 そのような商社もBtoC(消費者向け)ビジネス(いわゆる「川下分野」)を広く展開するようになり、女性が活躍できる現場も徐々に広がってきたのではないかと思います。たとえば弊社は1998年2月にファミリーマートに投資していますが、これはその分かりやすい例の一つですね。もともと弊社は繊維や食料などの生活消費分野に強みをもっており、ここ数年はさらにその動きを加速させ、戦略的に非資源分野への注力度合を増していますが、こうした会社全体の動きも少なからず人材の多様化(ダイバーシティー)の背景になっていると思います。

 ――ダイバーシティーはいつごろから?
 取り組みをスタートしたのはかなり早かったと自負しています。他社に先駆けて、2003年に「人材多様化推進計画」を経営会議で決定したうえで5カ年計画を始めました。企業の持続的発展のためには「組織としての多様性が不可欠」との認識のもと、性別・国籍・年齢を問わず多様な人材を確保し活躍を支援することで企業の競争力を高めるための計画です。とくに女性の活躍支援を重点的に推進し、5カ年計画を2回、計10年間進めました。これにより女性の数は一定数まで拡大し、定着・活躍支援のための制度も整備されました。
 現在では女性の増加・職域拡大に伴い、個々人が直面する現場の状況や悩みも多様化しているため、一律の制度による支援に加え、「げん・こ・つ改革」を展開中です。現場の「げん」、個別支援の「こ」、つながりの「つ」の頭文字をつなげたものです。「現場」に根ざした血の通った「個別」支援であり、会社と常に「つながり」を持つという意識の醸成を図るものです。たとえば、育児休業中も会社との「つながり」を意識して、スキルアップに取り組んだり、職場と連絡を取ったりしてスムーズな復帰を目指してもらっています。

 ――数値目標はありますか。
 はい。女性の活躍支援にはさらに注力し、総合職に占める女性の割合を現在の9%から2020年度末までに10%超にするのが目標です。管理職に占める女性の割合も、現在の6%から2020年度末までに10%超にすることを目指しています。
 毎年の女性の新卒採用数に定量目標は定めていません。採用後の定着が課題と考えます。働きがいを持って会社に貢献し続けられるような環境を整備するという観点から、出産・育児関連の支援制度は法律で求められている以上のレベルで用意してきました。一方で、商社で働くということは華々しいことばかりではなく、「厳しさ」が求められる業界でもあります。採用の段階でも、仕事の厳しさをきちんと伝えたうえで「商社で働き続ける覚悟を持った方に来てほしい」というメッセージを出しています。

 ――「厳しさ」とは?
 入社後8年間は教育期間としてじっくり指導・教育をしていきますが、処遇体系は成果主義で、「かけた時間」ではなく「アウトプットの質と量」で評価されます。また、商社では「海外駐在」が重要なキャリアパスとなりので、女性は結婚、出産といったライフイベントと、自身のキャリアの両立をどのように図れるかが一つの分かれ道になりますね。
 対策の一つとして、女性総合職に「子女のみ帯同」を支援する制度を設けています。父親は日本で働き、母親である社員が子どもだけを連れて駐在する形です。既にニューヨークに赴任した実績があります。

 ――内定者にはどんな女性が多いのですか。
 留学していたり、アフリカやアジアでも発展途上国の貧しい国で何か活動を行っていた人、あるいは体育会だけでなくいろいろなクラブ活動、学内活動で成果を上げたり、ゼミや研究室での勉強を必死に頑張ってきた人など、自分の好きな分野の何事かに注力して、失敗や壁に直面してもそれを乗り越え、最後までとことんやり抜いてきた、やり切ってきた経験を持った人が多いですね。これは男女の別なく言えることだと思います。…続きを読む

みなさんに一言!

 就職活動は人生の中で特異な時間です。電話1本、メール1本で大人が利害関係なく会ってくれて、運がよければコーヒーやランチをごちそうになりながら、仕事のことだけでなく、人生観や家族観まで語ってくれる。初対面の社員が、ですよ。こんな機会は一生の間でも就活の数カ月間しかありません。だから、チャンスと捉え、ぜひ楽しんでほしいですね。これだけ世の中が変化すると、成長が見込まれる産業とそうでない産業を区別する物差し自体が変わります。自分に限界を設けず、少しでも興味があることにはどんどん飛び込んで、自分の目で見てください。
 そして、いろいろなバックグラウンドを持った社会人の価値観や人生観に触れてほしい。影響を受けまくってほしい。自分の価値観が変わってしまってもいいです。そのプロセス自体が就活ですし、みなさんの成長につながります。
 最後に1社に決めるときは「エイヤ」で決めればいい。親や友人の意見も重要かもしれませんが、決めるのは自分であってほしい。「他人軸」でなく「自分軸」で決めることが重要です。どんな会社に入っても、若いときは数限りなく失敗し、壁にぶつかることになりますが、もし他人の意見で就職先を決めていたら「やっぱり他の会社に行けばよかった」と思ってしまうんです。他人のせいにして、結局踏ん張り切れない。逆に自分で決めていれば、誰にも文句は言えません。「なにくそ」と思って、もう一度仕事に立ち向かえます。だから覚悟を決めて飛び込んでほしい。
 自分のキャリアを築いていくうえで、進路を選ぶこと自体は実はそれほど大切ではないと私は思います。就活が成功したか失敗したかなんてことは自分自身ですら何年も経ってからでないと分からないし、ましてや他人に評価されるべきものでもありません。他人が何と言おうと「自分軸」で「エイヤ」で決めて飛び込み、時間が経って振り返ったときに「あぁ、あのとき自分なりに悩んで選んだこの道は正解だったな」と心の底から思えるように、自分で選んだ道で愚直に努力を続けることのほうが百倍も千倍も大事です。ですから、苦しいかもしれませんが、逃げずに「自分軸」で進むべき道を決めるようにしてください。
 そして、もし伊藤忠商事を志望してくれるのでしたら、是非弊社の門戸をたたいてみてください。皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

伊藤忠商事株式会社

【商社】

 伊藤忠商事は、1858年初代伊藤忠兵衛が麻布の行商で創業しました。世界63カ国に約120の拠点を持つ大手総合商社として、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入及び三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開しています。  コーポレートメッセージでは「ひとりの商人、無数の使命」を掲げており、伊藤忠商事の強さである卓越した「個の力」を活かし、広く社会に豊かさを提供し続けることが、創業者である伊藤忠兵衛をはじめとする近江商人の経営哲学「三方よし」と一致する持続的発展の道筋であり、当社が果たすべき「使命」と考えています。  これからも常に「商人魂」を原点に据えながら、売り手にも、買い手にも、世間にも、よりよい商いをめざし、社会に対しての責任である「無数の使命」を果たしていきます。

過去の記事一覧へ