第一三共
2023シーズン③ 第一三共《後編》
「イノベーションと思いやり」の素質見る 若手の挑戦支える会社【人事のホンネ】
人事部 人材開発グループ 主査 野口哲司(のぐち・てつじ)さん、主任 森近裕加(もりちか・ゆか)さん
2021年09月29日
(前編はこちら)
■ES
──エントリーシート(ES)の特徴は?
野口 志望動機、学生時代最も力を入れて取り組んだことなど一般的ですが、職種によっては研究内容を詳細に書いてもらいます。研究職や開発職、データサイエンスには英語での自己紹介もあります。開発職は海外での業務もありグローバルなやりとりが頻繁なので語学力も問います。
──コーポレートスタッフやMRにも語学力は必要ですか。
野口 コーポレートスタッフは「TOEIC730点以上が望ましい」と募集要項に明記しています。ヨーロッパやアメリカとのやりとりが頻繁なためです。MRは基本的に国内の医療関係者を担当するので、基準は設けていません。
──ESで重視するポイントは?
野口 職種によって異なります。研究職では研究内容を最重視するので、「インターンシップに参加するより研究に集中して実験を一つでも二つでもやってきて」と言いたいです(笑)。
森近 やはり、他者への思いやりとかチームワークを大事にします。部活やアルバイトのエピソードなら「どのくらい主体的に他者に働きかけたか」ですね。ESから読み取れない場合は、面接でしっかり質問します。エネルギッシュで能力が高い人を採用したい気持ちはありますが、かつ「他者への働きかけによる成果創出」があるのかが大事です。弊社の業務では、チームプレーが重要な場面が多々あるので。
──「1人ですごいことを成し遂げた人」は?
森近 魅力的ですが、言葉の端々に他者を頼りないと思っている雰囲気が感じ取れたり、自分1人でやったほうが楽で早いといった認識があったりして、チームワークに不向きかもしれないと感じれば、注意深く確認します。
野口 個人で成し遂げたとしても、「本当に1人でやったのですか」「陰でサポートしてくれた人はいませんか」と聞きます。周囲が見えていない可能性や、自分の力を過信し過ぎて周囲と調和がとれない可能性もあるので。ただ、得意なことをして自分の成果をしっかり出し、かつ他の人のサポートもしていたら、とても良い人材だと判断することもあります。
──医療や医薬品との関わりが書いてあると説得力がありますか。
森近 「祖父が病気になって医薬品の大切さに気づきました」といった記載はたくさん見ますが、多くの人が経験することなので、特段の説得力を感じることはありません。
──むしろ日常の行動や倫理観、誠実性が大事?
森近 そうですね。医薬品との関わりより日々の経験から身に付けた倫理観や誠実性にひかれます。
野口 面接での受け答えやESの文章表現にも誠実性は表れます。質問を理解して回答しているか、読み手が理解し易いよう丁寧に書いているかなど。物事の見方が一面的になっていないかも気になりますね。
──丁寧かどうかは、手書きなら一目瞭然ですが、WEBでも分かりますか。
野口 速く読んでもスッと頭に入る内容や、理路整然とした論理展開など、相手に理解してもらおうと思って書いているかは分かりますね。
森近 たとえば「1、2、3」と項目立てて書いたり、感情論ではなく数値で成果や規模感を表現したり、理解しやすいよう記載方法を工夫しているかも見ています。
■面接
──どんな面接ですか。
野口 職種によりますが、基本的には3回です。面接時間は30分~1時間ほどで、学生1人に面接官2~3人で対応しています。
──面接で重視する点は?
野口 1次、2次は現場に近い社員が対応します。現場で活躍できるか、適性や素質などを確認します。最終面接ではシニアが細かい部分ではなく組織に適合できるか否かを、長く社員を束ねてきた立場から、他の社員との比較、思考の深さ、リーダーになる素質の有無などの視点から確認します。
森近 研究職は研究、開発職なら開発の職種の社員が対応します。ただ、組織内の視点や実力目線になりがちなので、2次や最終面接では人事部の視点を加えて総合的に判断します。企業理念やコーポレートスローガン「イノベーションに情熱を。ひとに思いやりを。」を実践できる素質を持っているか確認します。こうして「第一三共人」としての共通感を保っています。
ニュースに接する学生は発言に深み 「サイエンス+コミュ力」大切
──ニュースや世の中への関心は必要ですか。
森近 世の中に関心を持つことは当然必要です。面接で特定の記事について聞くことはありませんが、インターンや面接で話すと、ニュースに接している学生の発言には深みを感じます。物事のたとえや視点に触れた際、言葉の端々に表れます。アンテナを張っていなくて知識の浅い学生に比べるととても魅力的ですし、学生からの質問内容も的を射ており感心してしまいます。
──コロナ関連のニュースが話題になることも?
森近 はい。以前は「ワクチン」といった言葉がニュースに出ることはあまりありませんでした。今は新聞を読んでいる学生から「御社のワクチンについて教えてください」「どのような点が他社ワクチンと異なるのでしょうか」と、ピンポイントで質問されます。
野口 ニュースに接している学生は、質問力に長けていますね。「新聞で御社のこういうニュースを見たのですが」と質問してくる優秀な学生もいて、うれしく思います。「COVID-19」はこの業界を志望する学生にとって最大のキーワードかもしれません。
──ドクターと話すMRは幅広い関心がないと困るでしょうが、研究職にも必要ですか。
野口 医療機関、グローバルな関連会社、社内の別部所などさまざまなステークホルダーがいます。さまざまな部所のさまざまな人と、さまざまな情報を基に薬を創るので、サイエンスだけに固執して生きていては駄目です。臨床開発職にも幅広いコミュニケーション能力は大切です。
■インターンシップ
──インターンシップについて教えてください。
野口 2023年新卒対象のインターンシップは夏と冬に行います。夏はMRと開発職で、冬にはコーポレートスタッフ、安全性情報管理職、研究職、データサイエンス、MRも受け付ける予定です。
──これもWEBですか。
野口 この状況下なのでWEBが基本で、2DAYSが多くなりそうです。
森近 参加者数は職種によりますが、それぞれ40~50人で参加倍率はかなり高くなります。
──インターン参加者は本選考で優遇しますか。
森近 インターン参加者と未参加者の選考スキームは全く同じです。ただインターンに参加した学生は当社に強い愛着を持ってくれます。理解も深いため、面接で話す内容の厚みが増し、当社への思い入れもあるので熱量も圧倒的に違います。インターン参加学生を対象に再度WEBイベントを行ったり、復習のコンテンツや理解を深めるワークを実施したり、フォローします。1年近く接点を持つので、インターン参加者の志望度は確実に高まると感じます。
──内定者のうちインターン経験者の割合は?
野口 職種によりますが、MR、開発職は半数程度です。
世の中の期待にこたえる達成感 評価されたのは「失敗からの巻き返し」
──ワークライフバランスではなく、「ワークライフサイクル」という言い方をするのですね。
野口 ワークで得られた思考・判断軸などはライフにもいかせますし、プライベートの時間に身に付けた知見や経験はワークにも影響します。ワークとライフを完全に切り分けて「バランス」を保つのではなく、それぞれがお互いに影響を与え相乗効果で補完し合う考え方のため「サイクル」という言葉を使っています。
──第一三共ならではの取り組みはありますか。
森近 たくさんありすぎて何を話したら良いか迷いますね(笑)。社員の誰もが感じているのは、「とっても良い会社だ」ということです。
野口 最近注力している取り組みにスマートワークがあります。「むやみに働き過ぎるな」ということです。業務に集中して、効率よく成果を創出するよう心がける風土です。ゴールデンウィークをはじめ夏季休暇、年末年始休暇はそれぞれ9連休以上取得できますし、子の看護休暇は法定より長く小学4年生までが対象です。一部の事業所には事業所内保育所もあり、子どもを連れて出社し子ども連れで帰宅する社員もよく見かけます。男性の育休取得も増えていて、私も2年前、2人目の出産の際に計3週間くらい取りました。
■社風とやりがい
──どんな会社ですか。
野口 「イノベーションに情熱を。ひとに思いやりを。」を体現している社員が多いと思います。高度な科学技術の結晶である医薬品をつくる会社なので、最先端の知識や技術が重要です。それがイノベーションにつながり革新的な医薬品を生み出します。そして、患者さんやチームメンバーに思いやりを持ち、困っている人がいたらサポートし合う風土があります。
森近 私はMR出身で、不安を抱えながら人事部に赴任しましたが、どの部所にいても人の良さが変わらないと痛感しました。「第一三共人」という軸は「イノベーションに情熱を。ひとに思いやりを。」から全くぶれていないと心から感じています。
──やりがいと厳しさは?
野口 世の中に期待されている医薬品を創出し、しっかり仕上げ送り届けたとき、達成感を感じます。そうした経験を通じて自身の成長につながる機会が多い会社です。一方で大変なことも多々経験します。今までなかったものを創るので、全く予期しなかった困難やタフな状況を乗り越えなければならない場面もあります。
森近 長い歴史がある内資系製薬企業で昔ながらの年功序列型の会社だと思われがちですが、若手ほどチャレンジさせてくれる会社です。社長が日ごろから社員に伝えていることに「部下は上司に提案すること。上司は部下の提案に耳を傾けること。それができない上司はその任にあらず」という言葉があります。たとえば、海外駐在に若手社員が選抜され大きなプロジェクトを任されていますし、MRの現場でも「どんどんやってこい。何かあったら私が謝るから」と若手の挑戦を全面的に支えてくれます。学生の皆さんにも、若手のうちから自らの力で挑戦できる環境にある点は期待してほしいところです。
■就活と経歴
──ご自身の就活について教えてください。
野口 2000年入社なので「就職氷河期」でした。大学院修士課程の理学部化学科で有機合成化学の研究をしており、低分子医薬品の合成研究をする研究職で入社しました。就活では、好きな化学に関する仕事がしたいと思い、製薬企業や化学メーカーを受けました。化学で世界に貢献するところがしっくりきて、第1志望だった当社の内定をもらい就活を終えました。すぐに研究に戻りたかったこともあります。
――経歴は?
野口 ずっと創薬研究をしてきて、10年目に会社の支援で博士号を取得しました。研究リーダーも務めて2018年に人事部に異動し新卒とキャリア採用を担当しています。
印象に残っているのは、研究職リーダーのときの仕事ですね。疼痛(とうつう)の研究で今までにない「夢の薬」につながるデータが得られて「すごいものを創ったんじゃないか!?」と。がんの痛みはモルヒネなどの麻薬で抑えますが、依存や中毒性があるため麻薬並みに薬効が強くて中毒性がないのが夢の薬です。成功する確率は2万5000分の1といわれる中、上司に「恐れ入りました」とまで言われました。最終的には、さまざまな理由により目標は達成できなかったのですが。
──森近さんは?
森近 2012年入社で「超氷河期」と言われたときです。大学は京都の薬学部で、地元の広島に帰りたい気持ちもありました。薬剤師を中心に考えていましたが、就活に熱心な周囲に影響されて始めたら企業で働きたい気持ちが強くなり、大手製薬会社に20社くらいエントリーしました。武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共の上位3社に行きたいと思い、最初に弊社の内定をもらったので決めました。当時、第一三共のMR採用は30人くらいの少数精鋭とのことで、とても必要とされていると感じました。
実は、面接では大失敗しました。1次面接の学生時代に最も力を入れて取り組んだことに関する7分間スピーチで緊張し過ぎて6分間も黙り込んでしまいました。最後になんとか「これを伝えたかったんです」と絞り出したのですが、それでも採用してくれました。スピーチのうまさや饒舌さではなく、失敗からの巻き返しを評価してくれたようです。自分の内面に向き合ってくれる会社なんだと強く感じました。
入社後は大阪で5年半MRをして、2018年から人事部で新卒とキャリア採用を担当しています。
──印象に残っている仕事は?
森近 やはりMRですね。認知症の薬は当時世界に四つしかありませんでした。まだ治す薬はなく進行を抑制する薬ですが、その一つを弊社が販売しており唯一他の薬と一緒に服用できました。まずはその情報を広めるのが仕事でした。担当エリアには高齢者が多く住んでいましたが、私が情報提供して病院に勧めなければ選択肢にも入りません。病院や診療所を一軒一軒回りました。大阪でもトップクラスの基幹病院で、医薬品情報の提供だけでなく認知症の方の家族の会を医師と共に立ち上げたり、医師の講演会をお手伝いしたりして、その病院だけで年間売上の約1000万円アップを達成しました。「売上=患者さんに届いた」ということなるので、地域医療の貢献につながり、自分の力が認められたようでとても嬉しかったです。
(写真・大嶋千尋)
みなさんに一言!
就活は自分自身と一番向き合う時期です。「自分は何なのか。どういう存在で何をやりたいのか」を突き詰めて、いろいろな情報、親や友達、さらに は周囲の話もしっかり聞いて、本当にやりたい仕事を見つけてください。その先に第一三共があったら我々はとても嬉しいです。身体には気をつけて、研究を精一杯頑張ってください。(野口さん)
人生を捧げてやりたい仕事に出会ってほしいと思います。今は「省エネ就活」とも言われていますが、一生懸命就活して、「何をしたいのか。何に貢献したいのか。どんな人と働きたいのか」を考え抜いた末に、自分が納得いく形で就活を終えてほしいです。もしかしたら人生で最も悩み、最も頑張り、最も成長する時期かもしれません。一歩一歩楽しみながら前進して、自分の未来を創っていってください。(森近さん)
第一三共
【医薬品】
第一三共は革新的医薬品の創製に注力する研究開発型製薬企業です。拠点展開国は24カ国、販売実績は100カ国以上にのぼり、現在、世界中でアンメットメディカルニーズ(未充足な医療ニーズ)の高いがん領域を中心としてグローバルに事業展開を行っています。がん領域においてはADC(抗体薬物複合体)技術を応用したグローバル製品候補などを複数持ち、標準治療を変革する先進的な医薬品やパイプラインが充実しています。
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