人事のホンネ

国分グループ

2021シーズン⑫国分グループ《前編》
全国展開のGCとエリアのAC 業界通じ伝わる食品卸の魅力【人事のホンネ】

人事総務部 人材開発課長 梅澤篤(うめざわ・あつし)さん、人事総務部 人材開発課 主任補 住谷宏樹(すみや・ひろき)さん

2020年02月19日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2021シーズン第12弾、最終回は国分グループです。食品関連の業界は大人気ですが、日々商品に接するメーカーや買い物で訪れる小売業と違って、食品卸の専門商社についてはイメージが湧かない人も多いと思います。どんな会社で、どんな仕事があるのでしょうか。(編集長・木之本敬介)

■2020年卒採用
 ──2020年卒採用はいかがでしたか。
 住谷さん(写真右) 学生の動きが二極化しました。3年生の6~8月のインターンシップで「就活を始めるぞ」と夏に動く層と、サークルや学園祭が落ち着いた12~2月の解禁直前に動き始める層に分かれました。その間の秋は動きが鈍く、学内説明会や合同説明会の参加者は少なかったですね。8月に動いていた層も3月の就活解禁まで休憩している印象でした。
 梅澤さん(写真左) 情報をたくさん集めて判断する学生が少なくなったと思います。「売り手市場」のためか、ある程度活動すると企業を絞ってしまうようです。業界と企業の絞り込みが早くなりました。

 ──3月1日の就活解禁後の動きは?
 住谷 解禁後、1週目はバーッと盛り上がりましたが、2週目以降はどのイベントに行っても学生が少ないと感じました。もう企業選びは終えて、エントリーシート(ES)の提出や企業セミナーの参加に移ったんですね。各社、エントリー数が減っていますから、企業広報解禁で行きたい業界の情報を得たら「この中のどこかに行けるだろう」と考えているようですね。

 ──結果はどうでしたか。
 住谷 幸い当社はエントリー数が減らず、採用もおおむね順調でした。ただ、3次面接や最終面接の前段階での途中辞退が増えました。当社は6月以降に内々定を出しましたが、ゴールデンウィークの前後に内々定を出した企業も多く、辞退の電話に気持ちがなえました(笑)。

■採用実績
 ──2020年卒の内定者数を教えてください。
 梅澤 全国で活躍する「グループキャリア(GC)」が41人(男性29人、女性12人)。文系30人、理系11人で、うち院卒は1人です。特定地域で働く「エリアキャリア(AC)」が71人(男性38人、女性33人)、文系59人、理系12人でした。
 2019年卒の新入社員はGC34人(男性26人、女性8人)、文系33人、理系1人で、うち院卒1人でした。ACは57人(男性27人、女性30人)で文系44人、理系13人。うち院卒は1人でした。

 ──2020年卒採用でACを増やしたんですね。
 梅澤 GC40人、AC60人が目安ですが、良い人材がいれば採用する方針なので優秀なAC志望者が多かったということです。「全国どこでも行きます」という学生もいますが、「地元で地域貢献したい」という学生も増えています。

■理系採用
 ──商社は文系のイメージが強いのですが、理系もいるんですね。
 梅澤 「商社=営業マン」のイメージで「会話上手な文系が有利」と思われがちですが、そんなことはありません。当社のお得意先は3万5000社、メーカーは1万社。物流部門がありますし、物流を動かす情報システム部門も重要で論理的思考力のある理系人材が必要です。ただ、職種別採用はしていないので、理系の学生も国分グループ社員としての資質を見極めています。入社後の働きぶりや本人の希望、適性を見て情報システム部門などに配属します。
 理系の学生は物事を突き詰めてロジカルに考える力があります。もっと来てほしいのですが、当社は、BtoB(企業間取引)の会社で仕事内容が分かりづらいので、なかなか学生に届かないもどかしさもあります。

GCは1年間地方研修 30歳までに3部署経験

■職種と研修
 ──GCはいわゆる総合職ですね。ACは?
 梅澤 当社は「地域密着 全国卸」を掲げ、全国を7エリアに分けて事業を展開するカンパニー制度をとっています。GCが全国転勤しながらキャリアを積むのに対し、ACは「国分東北」や「国分九州」に入社します。他社でいう「エリア総合職」に近いですね。
 GCの新入社員は原則として一人暮らしを経験させます。社会人としての自立を促すために、東京出身なら大阪や北海道など出身地や出身大学以外の地方に配属します。

 ──GCは地方で実施研修するんですね。研修の期間は?
 梅澤 1年2カ月です。入社後、最初の2カ月は東京・日本橋のグループ本社での導入研修で、国分グループの機能を知ったり、「メーカー」「卸」「小売り」の違いを学んだり。2週間ほどスーパーの売り場に立つ経験もします。6月から各エリアカンパニーで、商品の在庫管理業務を中心に「営業内勤」を1年間経験します。研修中の住まいは会社が借り上げたマンションを「独身寮」にしているので、比較的リーズナブルに生活できます。
 入社2年目の6月に新入社員と交代し、正式に配属されます。研修の地に残る場合もあれば、別の地方に行くことも、グループ本社勤務になる場合もあります。
 
 ──なぜ1年間も?
 梅澤 実際に働いてみないと分からないことが多いはず。当社にはいろいろな仕事があるので、入社の前と後では仕事に対する考えやキャリア観も変わります。入社前は、商品開発を志望していたが、「営業を経験しないとお得意先に求められる商品はつくれない」と気づいたり、ダイナミックな仕事ができる物流を志望したり。ある程度仕事を経験したころに、人事総務部メンバーによる個人面談を行い、周囲や上司の意見や本人の希望を確認したうえで配属を決めます。

 ──入社後のミスマッチを防ぐには効果的ですね。その後のキャリアは?
 梅澤 ずっと同じところにいると、自分の部署の都合でしか判断できなくなります。お得意先がいてモノが流れて、それぞれの部署が相互に連携していることを学ばないと国分らしさは出ません。そこで研修を含めて30歳までに三つの部署を経験するような人事ローテーションを行っています。

 ──「営業」以外にはどんな職種がありますか。
 梅澤 「マーチャンダイジング」「マーケティング」「情報システム」「物流」「オリジナルブランド」「新規事業」「スタッフ」とあります。人数は営業が多くて全体の3分の1くらい。
 同じ営業でも外食・給食産業、スーパー、コンビニ、ネットビジネス、海外事業などお得意先の業態も違うし、食品、酒類、菓子、チルド、冷凍などを取り扱うカテゴリーも多く、さまざまな営業が活躍しています。

メーカー、卸、小売り、インフラが食品業界の4プレーヤー

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 住谷 8月、12月、2月に行いました。従来は12月、2月だけでしたが、2021年卒向けから8月のインターンを始めました。この時期に学生が国分を知っているか不安でしたが、かなり集まって定員オーバーになるほどでした。
 夏インターンの狙いは早い時期から「卸」のファンをつくることです。1回60人前後×1日で、全国各地で二十数回開きました。

 ──学生が集まった理由は?
 住谷 広報活動の成果だと思います。6月1日のインターン情報解禁とともに大型イベントに出て、「食品業界のインターン」と大々的に訴えました。
 食品業界には「メーカー」「卸」「小売業」「インフラ(パッケージ会社や計量機器メーカーなど)」の四つのプレーヤーがいます。大手飲料メーカーさん、大手スーパーさんといった他社と一緒に就活イベントに出ることもあります。学生は有名な大手企業さんの名前を見てやってくるのですが、そこで業界のつながりを知り「面白そう」と当社のインターンに来たり、選考にエントリーしたりしてくれます。こういうイベントに来る学生は食品業界に対する意欲が高いんですよ。

 ──どんなインターンですか。
 住谷 グループワークと企業理解です。グループワークは脳みそに汗をかく、考える系の実践的内容で、最終的には発表してもらい当社の社員が講評します。その後は座談会を開催します。営業、物流、商品開発、マーケティングの現場にいる若手社員と、「NGなし、何でも聞いて」と、ざっくばらんに話す場です。当社の社員は良くも悪くも何でも話すので、学生には「入社後のイメージができた」と好評なんですよ。

 ――インターン経験者は内定者の何割くらい?
 住谷 2020年卒だとGCは2割、ACは3割くらいでした。ただ、当社のインターンは選考とは切り離していて、あくまで企業理解の場なので参加できなくても問題はありません。

■選考フロー
 ──本選考のエントリー数は?
 住谷 2020年卒の本エントリーは約3700人。当社は、本社とエリアカンパニーなど計9社のグループ一括採用で、ESから2次面接までは一緒です。①国分グループ本社 ②国分首都圏 ③国分西日本、など第3希望まで併願できますが、2020年卒採用では「国分北海道だけ」といったエリア単願が多くなりました。地元志向が強い学生が増えているように感じます。

 ──採用の流れを教えてください。
 住谷 「ES→WEB適性検査→1次面接→2次面接→3次面接→最終面接→内々定」です。3次面接からはカンパニーごとの選考です。

 ――会社説明会は?
 住谷 ES提出の前の3月に行っています。日本橋の本社に来て先輩社員に質問して国分のことを知ってもらう場です。各カンパニーの本社が所在する主要都市でも行っており、任意参加ですが、当社はCMを流していないし、BtoBでもあり、どこかの段階で話を聞かないとどんな会社か分からないと思います。
 そのためフェイス・トゥ・フェイスでの説明に力を入れています。全国の大学を計120校くらい訪問して説明したり、インターンをしたり。文字通り「足で稼ぐ」スタイルですね。

 ──ESの締め切りは?
 住谷 4月上旬、ゴールデンウィーク明け、6月中旬と3回設けています。我々の競合企業はまず食品メーカーで、次が専門商社です。BtoC(消費者向け)の食品メーカーはとても人気が高く、4月早々に夢破れる学生がいます。ただ、メーカーを調べると「食品卸」について知り、どの社に行っても名前が出る「国分」という会社の存在に気づくんです。だから、食品メーカーや大手企業の選考が終わった6月中旬になっても、国分だけは煌々(こうこう)と採用の明かりをつけています(笑)。応募は4月が多く、4月、5月、6月で「7対2対1」くらいですね。ただ、6月の応募者の中からも毎年、内定者は出ています。
後編に続く)

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 視野を広げて、自分の目や心で就活をしてください。私もそうでしたが、就活を始めた当初に知っている企業や業界はごく一部だと思います。私も国分を知ったのはたまたまです。食わず嫌いをせず、いろんなところに首を突っ込んでみてほしい。今はネットでいろんな情報が集まりますが、自分から出向いて話を聞いてみてください。企業が何でも情報を開示してくれるのは今だけです。視野を広く持って、自分で聞いて得た知識・感情を大切にしてください。(住谷さん)
 
 出会いやご縁を大切にしてほしいですね。ビジネスの基本は「ヒト」です。人に会って、その場所に行って、共感した先にゴールがあると思います。ネットで探せば口コミ情報はあふれているし、企業のホームページにはキラキラした言葉が並んでいますが、自分が直接ゲットした情報にはリアリティーがあります。就活は諦めなければ必ず良い結果が出ます。最後まで頑張ってください。(梅澤さん)

国分グループ

【商社】

 国分グループは1712年の創業以来、300年を越え、全国各地のグループ企業とともに食の流通に携わってきました。「食のマーケティングカンパニー」として、食を扱うすべての事業者の真のニーズに対して主体的にお応えし続け、顧客満足度No.1企業を目指してまいりました。国内においては各エリアの国分グループ各社の連携により「地域密着全国卸」としての機能を発揮するとともに、海外においても卸売業、物流事業の展開を図っております。