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2023年01月11日

経済

米ITで相次ぎ大量解雇 日本では?ジョブ型になったら?【時事まとめ】

解雇しにくい日本に弊害も

 アマゾンやメタ(旧フェイスブック)、ツイッターなど米国の大手IT企業で従業員の大量解雇が相次いでいます。コロナ下の「巣ごもり需要」で人員を急速に増やしましたが、コロナの落ち着きに加え、ウクライナ戦争などで世界的な物価高や景気後退への懸念が広がっているためです。日本では低成長が続いているにもかかわらず、こうした大量解雇の動きはありません。大企業を中心に終身雇用制度が根付いており、そう簡単には従業員を解雇できないのです。安心して働き続けられる環境とは言えますが、労働力の移動が鈍い日本では新しい成長産業が起きにくいという弊害もあり、一概にどちらがいいとは言えません。日本でも欧米型の「ジョブ型」雇用が少しずつ広まる中、若い世代には終身雇用より「自分の成長」を求める人が増える傾向も。米国の動きを機に、日米の違いや会社での働き方について考えてみてください。(編集長・木之本敬介)

(写真・ツイッターを買収し人員削減を行ったイーロン・マスク氏)

アマゾン1万8000人、メタ1万1000人…

 アマゾンは新年早々の1月4日、約1万8000人の人員削減を発表しました。同社は巣ごもり需要を受けて2020年からの2年間で従業員を倍増させ、2022年9月には約154万人に膨れあがっていましたが、「経済環境が不透明」として音声認識AIアレクサ」などのデバイス部門を中心に大量削減に踏み切ります。

 米国ではほかにも大手IT企業で大量解雇が相次ぎました。
クラウドサービス大手のセールスフォース 全従業員の約10%削減を発表(2021年時点の従業員は約7万3000人のため削減対象は7000人超の見通し)
◆メタ 2022年11月に全従業員の13%にあたる1万1000人超の削減を公表
◆ツイッター 同年10月の米電気自動車テスラのイーロン・マスク最高経営責任者による買収後、人員削減。米メディアによると約7500人いた従業員数は3分の1ほどの2000人台に。日本法人も影響を受け、広報部門などの従業員らが対象に

 米IT企業の人員削減数をまとめるサイトによると、2022年の削減数は15万人を超えたそうです。IT系だけでなく、金融大手ゴールドマン・サックスが近く、最大で全社員の6%にあたる3200人規模の大規模な人員削減に乗り出すとの報道もあります。

米国は「解雇自由」

 マスク氏は2022年11月16日、従業員にメールで「長時間猛烈に働く」よう求め、「新しいツイッターの一部でありたいと確信がある人は、以下のリンクで『はい』とクリックしてください」と通知。翌17日夕方までに同意できなければ、給与の3カ月分の退職金を得て会社を辞めるよう促しました。

 米国では、なぜこんなに簡単に解雇ができるのでしょうか。米国の労働法に詳しい中窪裕也・一橋大特任教授によると、米国の判例法では、期間の定めのない雇用契約は使用者がいつでも自由に解雇できます。労働組合活動を理由にした解雇は法律で禁止されていますが、使用者が経営上の必要に応じて行う人員整理は「レイオフ」という言葉が使われ、自由に解雇できます。「解雇自由」とされるゆえんです。

雇用維持優先で低賃金の日本

 これに対し日本の労働契約法では、解雇に「客観的に合理的な理由」が必要です。仕事ができないことや規律違反、経営不振による人員整理など、正当な理由がないと解雇はできません。経営不振に陥って社員数を大きく減らすとしても、定年退職者の補充をせず新規採用数を抑えたり、希望退職者を募集したりするケースがほとんどです。

 日本の失業率が欧米に比べて低いのもこのためですが、働き手が企業や産業を移る動きが鈍いことが「失われた30年」と呼ばれる低成長が続く大きな要因でもあります。転職者の割合は過去20年間、働く人の4~5%で変わっていません。雇用維持を優先する代わりに、正社員を非正規に置き換えたり、賃金水準を抑えてきたりしました。経済協力開発機構(OECD)はリーマン・ショック後の日本の雇用政策について、「経済成長を促す労働移動や、より広い意味での経済のダイナミズムを損なう主要因」と指摘しました。

 そこで、岸田文雄首相は「これからの日本の経済を支える成長分野に労働移動を促していく」と訴え、デジタル分野などで教育訓練や正社員への転換を支援する政策を打ち出しています。つまり、終身雇用に安住せず、もっと転職しやすい環境を整えて、古い産業から成長産業に移れるようにしようということです。

若者は「自分の成長」重視

 若い世代の意識も変わりつつあります。学情が2023年3月卒予定の大学生・大学院生を対象に行った調査では(2021年12月実施)、就職活動で「自分自身が成長できそうか」を重視すると回答した学生が半数を超え、「どちらかと言えば」を含めると9割に迫りました。「人生100年時代と言われるので、転職することもあるかもしれない。成長を続けることが必要だと思う」「終身雇用や年功序列が当たり前でなくなっているので、市場価値を高めていきたい」「ジョブ型雇用も増えているので、専門性を磨くことが大切だと思う」といった声が寄せられました。

 新卒採用の募集でも、ジョブ型雇用に近い「職種別採用」を導入する企業が増えています。どの会社を選ぶかも大事ですが、どんな仕事で成長するかがこれからますます大切になっていきます。仕事選びの参考にしてください。

 ジョブ型採用については、こちらを読んでみてください。
「ジョブ型」ってなんだ? 富士通・KDDI…続々導入、採用でも【イチ押しニュース】

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