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2022年05月18日

国際

フィンランド、スウェーデンがNATO加盟申請 どんな国?今なぜ?【時事まとめ】

「軍事的中立国」が歴史的転換

 「軍事的中立国」だった北欧フィンランドスウェーデンが、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請しました。ウクライナに軍事侵攻したロシアの脅威をまざまざと見せつけられたからです。欧州の勢力図を塗り替える歴史的な大転換です。政治・経済面では欧州連合(EU)に加盟しながら軍事的には中立を保ってきた両国では、ウクライナ侵攻後、NATO加盟を望む世論が一気に高まりました。加盟すれば両国はNATOの集団安全保障体制で守られます。「NATO拡大阻止」を一つの目的にウクライナに侵攻したロシアの思惑は完全に裏目に出て、自分の首を絞めた形です。実現すればNATOとロシアが接する国境は2倍以上に延び、偶発的な出来事が対立にエスカレートする懸念もあります。遠い北欧の地で何が起きているのか。歴史を振り返りながら、ことの経緯を分かりやすく整理します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、記者会見でNATO加盟申請の方針を決めたと発表したフィンランドのマリン首相〈左〉とニーニスト大統領=2022年5月15日、ヘルシンキ)

ロシアに振り回されてきた歴史

 フィンランドは日本よりやや小さい国土の共和国ですが、人口は550万人ほどで日本の20分の1以下。豊富な森林資源をいかした製紙・パルプ・木材が基幹産業で、ノキアなどIT産業も盛んです。先進的な福祉国家として有名で、サウナや「ムーミン」(トーベ・ヤンソン作)を生んだ国でもあります。

 歴史的には長い国境を接するロシアに振り回されてきました。14世紀にスウェーデンの一部となった後、1809年にロシアに割譲されました。1917年に独立を果たしますが、第2次世界大戦でソ連(当時)に侵攻され領土の一部を失います。戦後はソ連との関係悪化を避けようと、軍事的中立の立場をとってきました。ソ連崩壊後の1995年にEUに加盟するものの、NATO加盟は見送るなど常にロシアの意向を気にかけつつ、先進国では珍しい徴兵制を維持するなど警戒を続けてきました。世論調査でのNATO加盟支持率も長く2~3割でしたが、今回のウクライナ侵攻で一変し8割近くに急増したのです。

 侵攻前からロシアのプーチン大統領と会談を重ねてきたフィンランドのニーニスト大統領は記者会見で「これはあなたがたロシアが引き起こしたことだ」と批判。「彼らは隣国を攻撃する用意がある」ことが露呈したと指摘し、ロシアに対し「鏡(に映った自分たち)を見るべきだ」と語りました。

ナポレオン戦争後200年超の「中立」

 スウェーデンは日本の約1.2倍の国土に1000万人ほどが暮らす王国です。10世紀前後に欧州各地を襲った海賊「バイキング」がいた国のひとつ。自動車やエリクソン(電気通信会社)をはじめとするIT産業が盛んな福祉国家です。ノーベル賞の国としておなじみですし、家具のイケア、ファストファッションのH&Mはみなさんにも身近だと思います。なお、北欧各国は男女平等が進んでいて、世界経済フォーラムの2021年のジェンダーギャップ(男女格差)ランキングでフィンランドは2位、スウェーデンも5位。両国とも首相は女性で、閣僚の半数が女性です。

 ナポレオン戦争に巻き込まれたのを最後に、1814年から他国と戦争をせず、200年以上、軍事非同盟を貫いてきました。1934年に国王が「中立」を宣言。西側に近づいたのはソ連崩壊後で、1994年にフィンランドとともにNATOとパートナー関係を結び、1995年にはEUに加盟。航空機メーカーのサーブ社など最新の軍事技術を持つことで知られ、ロシアによるウクライナのクリミア半島併合後の2017年には徴兵制を復活しました。スウェーデンでもウクライナ侵攻後、世論調査でのNATO加盟支持が5割を超えました。

トルコが難色、加盟までのリスクは?

 ただし両国の加盟にはハードルがあります。新たな加盟には既存の30加盟国による全会一致の承認が必要で、米国をはじめほとんどの国が歓迎する中、ロシアとの友好関係を維持するトルコが難色を示しているのです。エルドアン大統領は「スカンディナビアの国々はテロ組織のゲストハウスのようだ」と述べ、トルコで分離独立を目指す非合法武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)などに居場所を与えていると不満を表明しました。欧米各国はトルコを説得する方針です。

 もう一つの心配は、数カ月から1年かかるとみられる加盟手続きの間にもしロシアが攻めてきたら?ということです。米大統領報道官は「懸念に対処する方法を見いだすことができると確信している」と述べ、何らかの形で安全保障の提供に協力する意向を示しました。英国のジョンソン首相は両国との防衛協力の宣言にサイン。第三国から攻撃を受けた場合、相互に軍事支援する内容です。

 今、世界の歴史が大きく動いています。日本とは反対の西側でロシアと接する国々の動向は、決してひとごとではありません。今後の成り行きに注目してください。

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