人事のホンネ

スクウェア・エニックス

2023シーズン② スクウェア・エニックス《前編》
ゲーム業界入りに何が必要か考えて行動を ダブルスクールの学生も【人事のホンネ】

人事総務本部 人事部 新卒採用担当 利根川優一(とねがわ・ゆういち)さん

2021年09月08日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2023シーズン第2弾は、ゲームを軸にしたエンタメ企業、スクウェア・エニックスです。東京五輪の開会式で「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」のテーマ曲が流れ、世界中で話題になりました。コロナ禍でゲーム人気はさらに高まっていますが、選考では「好き」なだけで、軸が定まっていない学生が目立ったそうです。「エンタメを仕事にする」とはどういうことなのでしょうか。(編集長・木之本敬介)
(取材はオンラインで行いました。)

■2022年卒採用
 ──2022年卒もコロナ禍での採用になりましたが、いかがでしたか。
 WEBでの説明会や選考を継続しました。コロナ禍の採用も2年目となり学生はオンライン選考の準備ができていたようで、比較的スムーズに説明会やWEB面接に参加してくれました。

 ――コロナ禍でゲーム人気が高まりました。エントリー数は増えましたか。
 コロナ禍で学生がエンタテインメントに触れる機会がすごく増えたようで、多くの学生が志望してくれてエントリー数が2割ほど増えました。2021年卒採用ではエントリー開始を3月1日から2月1日に早め、応募方式を変えたこともあって若干減ったのですが、2022年卒はこうしたことが事前に分かっていた事情もあると思います。

 ──なぜエントリー開始を早めたのですか。
 1カ月間だったエントリー期間を、2月から3月末までの2カ月間とすることで、学生がエントリーシート(ES)をきちんと準備できる時間を設けました。
 それから近年、多くの同業他社が選考を非常に早めているので、4月からの面接を少し早く始めるようにしました。

 ──応募方式はどう変えたのでしょう。
 以前は、まず簡単なWEBアンケートに答え、説明会を経て正式にエントリーするステップでした。それを、ES提出と適性テストを経たうえでエントリーする方式に変えました。アーティスト職など一部職種では、この段階で作品も提出してもらいました。
 最初からESを出してもらうようにしたのは、それなりの覚悟というか、熱量を持って応募してほしかったからです。エンタメ業界はすごく華やかで楽しそうなイメージがあると思いますが、「エンタメを仕事にする」ということをどう考えているのか、エントリーの段階で確認したかったんです。

 ──単に「ゲームが好きだから」という応募が多かった?
 そういう学生もいます。「ゲームが好き」とか「マンガが好き」ということが入り口なのは大歓迎です。ただ、仕事にするとなると「楽しいから」だけではうまくいかないこともあると思います。ゲームやマンガなどのエンタメを仕事にするというのはどういうことなのか、しっかり考えてくれる学生と会いたいと思っています。

■WEB説明会・面接
 ──WEB説明会で工夫したことはありますか。
 職種が複数あってIT分野、総合職、ゲーム開発系と職種ごとに分けて説明会を開いたのですが、日程が合わない学生もいるので、各回必ず全職種の説明をするとともに、「この日に集中的に説明するのはこの職種です」という事前アナウンスを徹底しました。あと、ZoomウェビナーのQ&Aを利用して、質問にはできる限り時間をとって手厚く答えました。たくさんの質問が寄せられて残念ながら全てにはお答えできませんでしたが、それだけ興味をもってもらえる学生が多く、うれしく思いました。

 ──説明会や面接がWEBになったメリット、デメリットはどう感じていますか。
セミナーも面接もWEBになって、遠方者が参加しやすくなりましたね。対面でセミナーや面接を行っていた際は1日がかりで本社まで来てもらうこともあったので、移動や交通費など苦労も多かったと思います。都内の学生も時間調整がしやすくなったようで、面接の欠席率が減りました。
 面接について言うと、学生は慣れた環境で比較的リラックスして受けられるので話しやすいと思います。本音で語ってくれる学生も多かったのではないでしょうか。デメリットとしては、熱量や雰囲気は対面でないと感じ取れない部分もあると思いました。

 ──対面だと、熱量をどのように感じ取るのでしょう。
 対面だと、話し方や身ぶり手ぶりから熱量を感じ取れます。会ったときの雰囲気や印象もWEBと対面では全然違うので、直接会った際はそういうところから得られる感覚を大切にしています。WEBではあまり緊張していない学生が多いのですが、対面だとほどよい緊張感があります。当社への志望度が高い人は結構緊張している分、気持ちが自然に伝わってきます。「本当に当社入りたいんだな」と感じることができて、とてもうれしく思います。WEBだけだとそこが難しいですね。

 ──2022年卒採用も前年に続いて全てWEB面接に?
 当初は最終面接だけは対面にする予定だったのですが、緊急事態宣言が発出されてから、すべての選考をWEBに切り替えました。一部、宣言前から選考を進めていた人には対面で会いましたが、ほとんどの人はWEBのみでした。学生側にとっても一度は会社に来て、対面で面接官と話し会社の雰囲気などを感じ取りたいのではないでしょうか。2023年卒採用では、最終面接はできれば対面で行いたいと思っています。

WEB選考でハードル下がるも企業研究・自己分析不足が目立つ

■職種
 ──職種が8種類ありますね。「総合職」「編集職」はイメージできますが、他の職種について教えてください。
 「ゲームデザイナー職」はゲームコンテンツ自体の企画職です。
 「エンジニア職」はコンテンツ開発に関わる技術職。ゲームのほか、専門性や志向によってはゲームサウンド、CG映像、R&D(研究開発)といった仕事に関わることもあります。
 「アーティスト職」は主にグラフィック、つまりゲームコンテンツの視覚的な部分を制作する職種です。
 2021年卒採用から設けたのは「テクニカルアーティスト職」です。まだ社会的には認知されていない職種ですが、技術部門のエンジニアとグラフィック(絵)を描くアーティストの架け橋的な役目を担います。たとえばグラフィックのリソースをつくるときに同じデザインの衣装モデルを子どもや大人、巨人などの複数の異なる体格に合わせてコピーし、簡単に生成するツールをつくるとか。アーティストの負担を減らして効率的に業務改善を図っていくような仕事です。近年、ゲーム業界やCG映像業界で需要が高まっている職種です。

 ──「サウンドデザイナー職」はゲーム音楽をつくる仕事ですか。
 そうですね。効果音の制作や音声の収録、サウンドデータ加工の仕事です。

 ──「エンジニア職」と「ITエンジニア職」はどう違うのですか。
 当社の「エンジニア職」はゲーム開発に関わる職種で、ゲームを動かすためのプログラムの実装から、専用エンジンやツールの開発・支援を行います。「ITエンジニア職」はゲーム開発以外の領域で、必要なシステムの運用・管理を担当します。具体的には、当社が運営するネットワークゲームあるいはオフィス業務そのものに必要なネットワークインフラの設計・構築・運用などを行うインフラエンジニア、各種ゲームのユーザー認証など社内共通のシステムを主に扱うアプリケーションエンジニアなどです。

 ──「総合職」「編集職」以外は芸大、音大、工学系の学生が多いのですか。
 「アーティスト職」「ゲームデザイナー職」「エンジニア職」と「サウンドデザイナー」は専門学校卒が多いですね。文系でも、学業以外でプログラミングやグラフィックスなどを学んでから応募してくれる学生もいて、内定した人もいます。

 ──特に人気の職種は?
 「ゲームデザイナー職」ですね。ゲームコンテンツの企画に興味を持ってくれる人多いです。

 ──やはり、ゲーム関連職の人気が高いのでしょうね。
 そんなこともなくて、「総合職」として営業・宣伝という面からエンタテインメントに関わりたいという学生も多いですよ。ちなみに総合職では、総務・人事・CS(顧客満足度)などの全社共通部門や、IP(知的財産)に関わる法務・知的財産系の業務も年度により募集しています。

■採用実績
 ──2022年卒採用の内定者数を教えてください。
 全体で60人ほどです。ゲーム開発系の「ゲームデザイナー職」「エンジニア職」「アーティスト職」「テクニカルアーティスト職」「サウンドデザイナー職」で30人ほど、あとの半分が「総合職」「編集職」「ITエンジニア職」です。

 ──幅広い専攻分野の学生が応募する「総合職」「編集職」は何人くらいですか。
 20人弱ですね。そのうち編集職は若干名です。

 ── 男女比、文理の割合は?
 男女比は7対3ないし6対4で、女性の割合は近年少しずつ増えています。
 文理は募集においては不問ですが、専門的な知識が必要な職種も多いので半分くらいは理系です。エンジニア系職種は理系大学院卒の採用も多いですね。

 ──ゲーム業界はコロナ禍で活況ですが、採用数に変化は?
 2021年卒採用が66人だったので、少し減りましたが、今後もこの規模を目標に採用していきたいと思っています。
 おかげさまで業績は非常に好調なんですが、新卒採用となると育成を考えなくてはいけません。各部門でしっかり育成できる人数を採用しています。

 ──応募が増えたのに採用人数が減ったのはなぜでしょう。
 コロナ禍で学生がエンタメに触れる機会は増えた一方、企業研究や自己分析が少し足りていない人も多い印象でした。将来、自分が何をやりたいのか、どうしてエンタメ業界を志望しているのか、軸がぶれていて、当社が目指すところとマッチしない学生も多かったように思います。

 ──コロナ禍が影響したのでしょうか。
 選考のオンライン化が進み、応募のハードルが下がったのは良いのですが、ウェブサイトや会社説明会なども含め受け取る情報量が多すぎて、かえって取捨選択が難しくなっているのかなとも感じました。情報を得るだけでなく、応募先の企業でどういった貢献ができるか、どんなことに関わりたいか、もう少し深く考えられると良いと思います。当社の企業理念を一言一句言えなくてもいいんですが、どんなことが書いてあるのかは知っていてほしいのが企業人事の本音です。もっとも、企業側としてもオンラインで当社の社員に接してもらう機会をあまり設けられず、学生に刺激を与えられなかったのかもしれません。この点は今後の情報提供の改善点ですね。