人事のホンネ

伊藤園

2022シーズン⑫ 伊藤園《後編》
伝統的な飲料で革新的事業を展開 挑戦したい人来て【人事のホンネ】

能力開発部 副部長 菊地洋子(きくち・ようこ)さん

2021年03月03日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2022シーズン第12弾、伊藤園の後編です。「千三つ(せんみつ)」という言葉を知っていますか? 1000種類の商品を出して市場に残るのは三つという意味です。全社一丸のマーケティングが、千三つに残るヒット商品を生む秘訣だそうです。(編集長・木之本敬介)

(前編はこちら

■逆質問
 ──面接で「気になるニュース」について聞きますか。
 あえて確認することはありませんが、たとえば面接の最後に聞く逆質問で「ESG(環境・社会・企業統治)についてどのような取り組みをしていますか」と質問したり、SDGs(持続可能な開発目標)、プラスチックゴミなどの課題についての取り組みをしているのかを質問したりする人はけっこういます。そういう人はいろんな業界を調べているし、いろんなところに興味があって弊社を選んでくれたんだなと分かるので、「なるほど」と思います。

 ──SDGsやESGについて語る学生が増えている?
 少しずつ増えています。とくにプラスチックゴミの問題が出てからは、多いですね。ホームページを見て「SDGsへの取り組みは、どういう目的がありますか」などとけっこう深い話を聞いてくる人がいます。

 ──学生から「逆質問で何を聞いたらいいか分からない」という悩みをよく聞きます。
 やはり何でもいいから聞いてもらいたいですね(笑)。たとえば、「菊地さんはどうして伊藤園に入社したのですか」と質問をする人もいて、自分が入社するかどうかの参考にしているのかなと。質問から、どういう考え方をしている人かが分かったりもします。

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 2020年の9月にワンデーのイベントを実施予定でしたが、対面では難しく、WEBに変更して12月に行いました。2021年2月にも実施しました。午前と午後それぞれ3時間ずつ、最初に食品業界の説明をして、その後「伊藤園の新商品を自分たちで考えてみよう」というグループワークをしました。初めての人同士がZOOMで意見を言い合うのは難しいと思い、事前に課題を出しました。「自分ならどんな商品を提案しますか」というシートをつくり、それをもとにみんなで打ち合わせをして一つの商品に決め、各グループに発表してもらいました。我々がグループごとにフィードバックをしました。

 ──具体的には?
 弊社の商品開発のコンセプトは「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」なので、「5つのコンセプトがないと商品化できないことを念頭に置いて」と伝えました。もう一つは、「STILL NOW(お客様が今でもなお何を不満に思っていらっしゃるか)」。時代の流行を追うだけではなく、お客様が何を望んでいるか、何を不満に感じているかを考えたうえで商品設計をしてほしい。この2点を説明してつくってもらいました。
 みなさん、とてもいい商品設計をしてくれました。たとえば、サブスクリプションの仕組みを使って、弊社のグループ企業のタリーズでお茶を飲めるシステムなど、すごく面白い発想がたくさん出てきました。柔軟な発想っていいなと思いました。

 ──営業というより商品開発的な内容ですね。
 マーケティング的な考え方というか、商品のターゲットを誰にするか、どこで販売するか、どのくらいの容量で、どのくらいの金額にするか、まで考えます。
 「学校の近くだと学生が多いからこんな商品がいいのではないか」といったマーケティング的な考え方と、お客様の立場に立って考える「お客様第一主義」の二つの観点から商品設計をしてもらいます。

 ──学生の評判は。
 「商品づくりで伊藤園の考え方がよく分かった」という声のほか、一番多かったのは「ちゃんとフィードバックをもらえるのがうれしかった」という声ですね。

 ──9月のイベントの参加者数は?
 前年より回数を増やして、4~5人の5~6グループで1週間ほど午前・午後と行ったので、計300人くらいです。WEBイベントはパソコンさえあればできるので、多くの学生に会えるし、弊社や食品業界のことも知ってもらえるので、いいシステムですね。

 ──参加者は面接で選ぶのですか。
 いえ、書類選考のみです。なるべくたくさんの学生に会えるよう今後、回数を増やしたいと思っています。

インドアだった緑茶をアウトドア飲料に 全員一丸でマーケティング

■働き方
 ──コロナ禍で働き方はどう変わりましたか。
 時差通勤、在宅勤務、WEBでの来客受け付けや訪問など働き方に柔軟性を持って対応しました。ただ、弊社は地域密着型営業が強みの会社です。学生からも「WEBより対面で話したい」という声を多く聞くように、営業でも「WEBより対面で」と言われます。やはり、お会いすることでその方の雰囲気を感じるので、感染リスクに配慮しながら、相手にしっかり分かってもらいたい商談のときにはお会いできる場をつくるなど、メリハリが必要。今は、何でも「WEBでいいじゃないか」という風潮になりがちですが、お客様のことを考えれば安全に配慮し、対面の営業も必要だと思います。

■社風
 ──ずばり、伊藤園はどんな会社ですか。
 お茶の会社なので、伝統を守る古くさい会社と思われがちですが、世界に先駆けて緑茶の飲料化に成功したのは伊藤園なんです。家庭で急須でいれて飲むインドア飲料だった緑茶を、「いつでもどこでも」飲めるアウトドア飲料として、緑茶飲料市場をつくりました。缶飲料からペットボトルへ、ペットボトルも温められるように、冷めても電子レンジでチンできるように……とお客様のライフスタイルに合わせて、どんどん進化しています。チャレンジしていろいろ失敗もしますから、失敗を認める文化が伊藤園にはあります。新しい市場を開いたり、新しいパッケージを開発したり、伝統的な飲料を扱いながらも革新的なことをしている企業です。挑戦したい、チャレンジしたい、何か新しいものをつくっていきたい気持ちがある人に、とても向いています。

 ──ヒット商品が出るまでには、たくさんの失敗作があるのですか。
 ありますね(笑)。食品業界には「千三つ(せんみつ)」という言葉があり、1000の新商品が出て市場に残るのは三つと言われています。それでもみなさんに支持されるようなロングセラーの商品をつくる。お客様が今何を求めているか、「STILL NOW」の気持ちを持った社員が日々営業をしています。
 弊社には、営業が「お客様からこういう声があった」「お客様はこう思っているんじゃないか」と提案する「VOICE制度」があります。そこからできた商品もたくさんあり、実は営業員も商品開発に関わっているんです。全員が一丸となってマーケティングを行っています。

 ──どんな社員が多いのでしょう?
 前向きで、明るく積極的な社員が多いですね。素直な人も多く、お客様の言葉を素直に受け取って、どうすればいいかを考えています。

 ──採用ページには「実力主義」という言葉もあります。
 弊社には学閥も門閥もなく、国籍、性別も関係ありません。入社したときがスタートで、その中で頑張って成果を出した人をきちんと評価します。「チャンスは平等にあります。ただし評価は公正に行います」という意味の実力主義です。個人も表彰しますが、グループでの表彰、あるいは拠点で賞を受賞することもあり、頑張った人に必ず報います。実力主義だから自分1人が頑張ればいいという仕組みではありません。ギスギスした雰囲気はなく、リーダーがメンバーを助けたり、メンバー内で助け合ったりということが自然にできている会社だと思います。

 ──伊藤園で働く「やりがいと厳しさ」は?
 営業職からは、お客様から「ありがとう」と言われたとき、「〇〇くんが来てくれているから、ここに商品を置かせてあげるよ」とお客様とうまく関係を築いて営業ができているときがうれしい、やりがいを感じると聞きます。厳しさは新規開拓ですね。新規のお客様はなかなか契約には至りません。何回もチャレンジするのは大変ですが、成功したときはやりがいにつながるので、表裏一体ですね。