人事のホンネ

Honda

2022シーズン⑦ Honda《後編》
「ワイガヤ」議論は文化 車だけじゃなく移動の喜び届ける会社【人事のホンネ】

人事部 採用グループ 相澤くる美(あいざわ・くるみ)さん

2020年12月09日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2022シーズン第7弾、Hondaの後編です。ワイワイガヤガヤ議論する「ワイガヤ」はこの会社のキーワード。新入社員のときから「君はどう思うの?」と問われ続けたことが成長につながったといいます。(編集長・木之本敬介)

(前編はこちら

■インターンシップ
 ──2022年卒対象のインターンやイベントについて教えてください。
 事務系のワンデーイベントは7月に対面で実施しました。対面イベントをする会社は少なかったので「Hondaには興味はないが、対面が魅力で応募した」という学生もいました。イベントの実施にあたっては感染症対策を徹底し、自治体の3密回避のガイドラインを順守しました。6人でのグループワークは席を間引き、消毒液やアルコールウエットティッシュを常備し、マスク着用で進めました。今後は12月と1月にWEBでの開催を予定しています。
5日間のインターンは、WEBで3日間に短縮し9月に開きました。冬も行う予定です。

 ――ワンデーと3日間の違いは?
 ワンデーはHondaの社風を感じてもらうのが目的です。企画提案型のグループワークで、30代の社員がチームメンバーとして一緒にアイデアを出したり、ブラッシュアップしたりします。夏のワンデーでは「2030年を見据えた新しい製品やサービスを提案せよ!」がテーマでした。2030年がどうなっているか資料を確認したり、想像力を働かせたりして、Hondaの技術や可能性と掛け合わせて「こういうターゲットに提供します」と発表してもらいました。
 Hondaには、ワイワイガヤガヤ議論する「ワイガヤ」というミーティング手法があり、立場や年齢、経歴、専門に関係なく自分がこうだと思ったらはっきりと言います。物怖じせず相手に伝えて、そのアイデアに別の誰かが重ねていく、そういう文化を感じてもらいます。

 ──「ワイガヤ」は社風かと思っていました。
 社風がよく表れている言葉だと思います。研究所には「ワイガヤルーム」もあります。我々採用グループも施策やイベントを考えるときに「ちょっとワイガヤしようか」と5~6人が集まり、ホワイトボードに書きながら話します。答えや結論を出す前にもっと自由な発想を意識しようというミーティングです。「立場は関係ない」「人の意見は否定をしない」が原則で、進め方のルールはありません。

 ──3日間インターンの内容は?
 「海外営業」「購買」「人事」など4~7人でコース別に分かれ、それぞれにメンターがついて並走します。たとえば「購買コース」では購買の仕事を講義形式で伝え、取引先との打合せにも同席しました。

 ──WEBで「同席」って?!
 今は購買もWEBで取引先と商談しています。そこに学生も同席し、社員が話を振りました。事前に「今日はどこどこのサプライヤーさんで、この部品についてやりとりします」と予習しました。学生にはなかなかできない経験だと思います。
 ベトナムの駐在員とつないで、仕事内容やどんな思いで海外赴任しているのかを聞くなど、対面では思いつかなかったこともできて幅が広がりました。

 ──学生の反応は?
 本来の5日間の対面インターンは、ワンデーでは経験できない実際の職場に足を踏み入れて仕事を一緒にすることです。WEBの3日間でできるか心配でしたが、一緒にランチを食べたり、雑談も入れ込んだりして、学生からは「たくさんのインターンに参加したが、ここまで一人ひとりに向き合ってくれた会社はない」と言ってもらえました。

 ──技術系のインターンは100コース以上あるとか。
 いろんな技術領域があって二輪も四輪もジェットもあり……、計108コースです。技術系もWEBになり、5日間を最長でも3日間に短縮しました。夏に各コース3~4人、計約400人が参加しました。
 工場体験などはできませんでしたが、四輪の自動運転の様子を動画で見られるようにし、エンジニアへの質問コーナーを設け、「ワイガヤ」を体感する2時間のグループワークを入れるなど工夫しました。

 ──人気のコースは?
 自動車は全般的に人気ですが、とくに先進領域ですね。「専門性はないが、インターンでは見ておきたい」という人もいます。
技術系も冬にワンデーと3日間を実施します。

 ──インターンの選考は?
 事務系は簡単なエントリーシート(ES)と、「チャレンジしていること」の1分動画を提出してもらいました。面接はありません。
技術系は本番のESに近いものを書いてもらい、WEB面談をしました。

「君はどう思うの?」「どうしたいの?」問われ続け

■社風
 ──他の自動車メーカーと「Hondaはここが違う」は? 
 ズバリ、自動車メーカーではないところです。自動車もつくっていますが、二輪で世界一、ジェット機も、パワープロダクツなどのライフクリエーションもやっていて、いろんな移動や生活のサポートをしている会社です。その人のニーズに合わせた価値の提供に関しては圧倒的なアドバンテージがあると思います。自動車メーカーとしては、エアバックやカーナビなどを世界に先駆けて開発していますし、最近でも自動運転のレベル3を世界で初めて販売する予定です。国内の主要自動車メーカーの中では業界への参入が遅かったのですが、「世界初」には非常にこだわっていますね。

 ──どんな社風ですか。
 思いの強い人が多く、その思いをお互いに表出し合う文化があります。熱さや思いが普段からすごく出ている人も、普段はあまり外に出さないけどここぞというときにガッと出す人もいます。
 私の場合、入社1年目から今にいたるまで、「君はどう思うの?」「どうしたいの?」と問われ続け、自然と自分を主語に考えて行動しないといけないと思うようになりました。自立というか、そういう精神を無理やり養われた感覚です。

 ──若い社員に任せることも多い?
 はい。私は入社して熊本製作所の総務課に配属されてすぐ「2500人の給与の責任者は君です」と言われ、「嘘でしょ?!」とびっくりしました。私がやるべきことを達成しないと給与が正しく支払われないので必死に学びスキルアップを考え、叩き上げられました。
 Hondaには「4割任用」という考え方があります。仕事に必要な能力に対し、「この人は4割」となった時点で「じゃあ、やってみよう」とチャレンジさせます。6割足りないけれど4割はあるんだから可能性と伸びしろを信じて任せてみよう、というやり方です。チャレンジすることが良しとされ、失敗しても仕方ないと許す文化があります。

■やりがいと厳しさ
 ──仕事のやりがいを教えてください。
 メーカーですし、移動する喜びを社会に届けるのがHondaの価値だとすると、それを街のいたるところで見られることです。私はよく海外旅行に行くのですが、ベトナム、ヨーロッパ、どこにでも車やバイク、パワープロダクツがあります。人事部なので製品をつくったり提供したりはしていませんが、私が働く会社はこういう形で誰かの役に立っているんだ、生活を支えているんだと感じられます。

 ──厳しさは?
 製品をつくっているのは工場なので、「グローバル展開」「世界規模の会社」というきれいなところだけに目を向けてしまうと、ギャップに苦しむことになるし、もったいない。地道な作業があり、部品一つひとつが集まって世界の人々に喜んでもらえるんです。事務系で能力が高くて「グローバルにプレゼンスを高めたい」学生が、ギャップを感じ、こんなはずじゃ……と思うことがあります。だからこそ採用では、グローバルに活躍できるHondaだけでなく工場で製品をつくっている姿や、製品をお客様に買っていただく苦労などもしっかり伝えなければ、と意識しています。

 ──採用で競合するのは?
 自動車メーカーは多いですね。ほかはメーカー中心で、文系だと総合電機、技術系は総合電機、情報、技術、通信……。海外という視点ではインフラなど幅広いですね。

 ──選考で語学力は重視しますか。
 語学力のあるなし、高い低いで合否を決めることはありません。学んできたことや思い、努力のプロセスは評価しますが、語学力だけでは見ません。