人事のホンネ

ジェーシービー(JCB)

2021シーズン⑧ ジェーシービー(JCB)《後編》
「1対n」のコミュ力重視 拡大するキャッシュレス市場に魅力

人事部 採用・研修グループ 主任 志賀雄太(しが・ゆうた)さん、大阪支社 人事部 人事グループ 木村和幹(きむら・かずき)さん

2019年12月04日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2021シーズン第8弾、ジェーシービー(JCB)の後編です。日本で唯一の国際カードブランド。これから本格化するキャッシュレス社会に向けて、どんな人材を求めているのでしょうか。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

※主な回答者は志賀さん(写真右)。木村さんの回答のみ(木村)と表記しています。

■面接
 ──グループ面接では何を聞きますか。
 (木村)面接官1人対学生3人で、30分です。「学生時代に何をしていた」は、とっかかりに聞きます。WEB履歴書をベースに、学生時代に力を入れたこと、挫折経験、ターニングポイントとなったことを聞いていきます。その学生の芯が何でつくられたのか、一つの言葉や複数のファクターからいろいろ聞かせてもらいます。

 ──GDは?
 (木村)6人グループで、30分間ほど討議してもらいます。テーマはJCBの事業のケースワークに近い内容で、四つの選択肢の中から選びます。ビジネスパートナーとなる企業へ対し、どんなソリューション、サービス、商品を提供していくかを選ぶ内容です。

 ──GDで見るポイントは?
 (木村)まずは周囲の学生とどうコミュニケーションをとるのか。遠慮せず、ちゃんと自分の気持ちを伝えられるか。
 求める人物像につながりますが、周囲の人間を巻き込んで、矢面に立って頑張れるか。壁にぶつかったとき、チームに働きかけながら、しっかり乗り越えて自分の答えを出せる力があるか。個人ではなくチームで仕事をするので、「1対n(複数人)」のコミュニケーションをとれるかも見ます。

 ──リーダータイプが評価されるのですか。
 チームの結果に「価値提供」できた人を評価します。その価値は「リーダーとしてチームを引っ張る」でも、「しっかりチームを支える」でも構いません。個人の性格によるし、同じような人間ばかりが集まる会社ではありませんから。評価の観点は、「チームに対して何ができるか」「周りの人と一緒にゴールに向かって戦えるか」です。

 ──個人面接のポイントは?
 1対1で、管理職面接の面接官は管理職層、最終面接は人事部長職です。1人30分あるので、それまでに聞ききれなかった思いや、過去のエピソードにまつわる感情なども聞き、当社での活躍イメージを描きます。

 ──面接会場は東京ですか。
 東京、大阪だけでなく、支社がある札幌、仙台、名古屋、福岡でも選考します。ただし最終面接だけは東京か大阪に来てもらいます。

 ──金融業界は激変中です。面接でニュースについて聞きますか。
 (木村)会話の流れの中で「気になるニュースは?」「どうして気になるの」を聞いて、学生のアンテナの張り方を聞くことがあります。幅広い分野にアンテナを張って、能動的に情報を取ってほしい。関心を持つことは大事です。

「国際カードブランドの影響力」と「消費決済で生活支える仕事」にやりがい

■銀行との違い
 ──採用で競合する業界は?
 (木村)バラバラです。総合商社、生損保、IT・通信、コンサル、航空系、メーカー、メガバンク、銀行など様々な業界・企業と競合している傾向にあります。

 ──必ずしも金融関連じゃないんですね。
 「金融業界」として興味を持っているわけではなく、業界ごとの個別の要素がフックになっているからです。総合商社や損保とは「グローバルなフィールド」や「日本発の企業として挑戦する姿勢」に共通点を見いだしている学生が多い。IT・通信やコンサルだと「データの利活用」が重なります。うれしいのは、「金融業界の一事業」としてのカード会社にではなく、キャッシュレスのポテンシャルに興味を持つ学生が増えてきたことです。

 ──銀行との違いは?
 業界として市場拡大の余地が大きいことがあげられると思います。国内のキャッシュレス決済比率は20%ほどといわれています。海外マーケットもポテンシャルが大きい。

 ──海外展開にも積極的ですが、採用時に英語力は必要ですか。
 見ていません。語学力は一つのアドバンテージにはなりますが、判断基準にはなりません。研修制度が充実しているので、必要なスキルは入社してからでも学べます。
 
 ──「働き方改革」の取り組みは?
 入退室管理を徹底しています。「仕事は職場でしっかりやる」が基本。ずるずる残業したり、資料を家に持ち帰って仕事したりすることはありません。
 社員の半数以上が女性で、採用研修グループは約20人のうち14人が女性です。産休・育休を経てもほぼ全員が復帰しています。

■社風とやりがい
 ──どんな会社ですか。
 三つの意味で、面白い会社です。一つは、業界自体が「変化するビジネス」であること。「決済」は生活に密着しているので、ライフスタイルや技術が変化すると提供するモノもサービスも変わっていきます。
 二つ目は「任せてくれる」ことです。新入社員は1年目はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で仕事を学びます。年の近い先輩の指導のもと、良い意味で「楽」をさせてくれません。常に自分の実力をちょっと超えるような質・量・成果を、年の近い上司からずっと求められる。「こんなこと、私がやっていいのかな」と思うほど裁量があり、信頼もしてもらえます。
 三つ目は「人」です。いろんな人がいて、タテ・ヨコ・ナナメの関係で仲がいい。風通しが良い会社です。

 ──他部署の人と知り合う機会が多いのですか。
 (木村)業務後に他部署の人と飲む機会が多いし、クリスマスパーティーも会場を貸し切ってホテルで行います。懇親会が多く、部活動も盛んです。

 ──JCBの仕事のやりがいと厳しさを教えてください。
 (木村)やりがいは、日本発唯一の国際カードブランドとしての影響力の大きさですね。消費決済は人にとってマストな活動なので、水道やガスといったライフラインと同じくらい大切です。世界に展開していて会員数も多いので、「消費決済を通じて生活を支える、変える」仕事ができます。その半面、システムエラーや個人情報の漏洩などがあると世界規模でお客様にご迷惑をかけてしまう。それをいかに防ぎ、信用を築いていくかかが業界ならではの厳しさです。