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2025年08月29日

文化

「鬼滅」「国宝」……日本映画異例のヒット続出 客の心をつかんだ理由は【時事まとめ】

「鬼滅」すでに日本史上3位の興行収入

 今年は日本映画で大ヒット作が連続しています。最大のヒットとなっているアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来」は、8月24日までの公開38日間で興行収入が約280.8億円に達し、日本で公開された映画で歴代3位に入りました。また、「鬼滅」には及びませんが、歌舞伎をテーマにした実写映画「国宝」の興行収入も公開77日間で110.1億円と、歴代の実写日本映画では第2位となっています。

 かつては「映画館離れ」が叫ばれていましたが、しっかりと観客を呼び込むコンテンツが育ってきています。なぜ、このようなヒット作が生まれたのか。コンテンツ産業をめざす人以外にもぜひ考えてみてほしいテーマです。(編集部・福井洋平)
(写真・映画館に張られた「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」の広告=7月19日、東京・新宿/写真、図版はすべて朝日新聞社)

原作漫画は23巻で累計2億2000万部以上売り上げ

 「鬼滅の刃」は、週刊少年ジャンプで2016年から2020年まで連載された漫画です。炭焼を営む家族を鬼に殺された少年・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、鬼になった妹の禰豆子(ねずこ)を人間に戻すため「鬼殺隊(きさつたい)」に入るストーリーは、ご存じの方も多いと思います。原作の完結から5年がたっていますが、人気は衰えをみえず、今年7月には全世界での売上がデジタル版を含めて全23巻の累計売上数が2億2000万部にのぼったと出版社の集英社が発表しました。ちなみに週刊少年ジャンプで現在も連載中の「ONE PIECE」は累計5億1000万部を超えていますが、こちらは単行本が100巻を超えており、23巻での2億部超えは異例中の異例といえます。

「鬼滅」人気は映画にも波及し、2020年に公開された劇場版「無限列車編」はコロナ禍にもかかわらず興収407.5億円をあげ、国内の映画興収ランキング歴代1位となっています。今回の劇場版はすでにこの無限列車編を上回るペースで興収をあげており、歴代1位をうかがう勢いとなっているのです。もともと「鬼滅」の単行本売り上げは2019年のアニメ化以降飛躍的に伸びており、鬼滅人気の爆発はアニメ化が大きなきっかけとなっていることは間違いありません。家族愛、特訓、味方も敵も個性的なキャラクターばかりという濃密な原作の世界観が、鮮やかにアニメで表現され、幅広い層のファンをつかみました。原作はすでに完結していますが、アニメでその世界を味わいたいというファンが多いことも、今作のヒットにつながっていると考えられます。
(写真・阿波踊りに登場した「鬼滅の刃」のキャラクターの着ぐるみ=2025年8月12日)

東宝もアニメを「第4の柱」に

 今回の「無限城編 第一章」はすでに海外でも順次公開が始まり、9月12日からは全米公開も予定されています。チケット前売り初日の段階で、すでにアニメ映画として過去最高の売上を記録したそうですから、期待度は相当なものです。大谷翔平投手らが所属するアメリカ大リーグ・ドジャースが8月15日に「鬼滅」とコラボした帽子を来場者に配り、試合開始前から球場に長蛇の列ができるなど、人気の広がりが感じられます。

 鬼滅以外にも、アニメは今後の海外展開が大きく期待できるジャンルとなっています。映画配給会社最大手の東宝は、2032年に向けた長期ビジョンでアニメを映画、演劇、不動産に次ぐ第4の柱とする方針を掲げています。東宝の松岡宏泰社長は今年4月配信の朝日新聞のインタビューで、海外でアニメをはじめとする日本のIPに対する興味が急速に高まった理由として「コロナ下での(動画)配信(プラットフォームの成長)が大きいと思う」と語っています。アニメ人気の高まりにつれ、原作となる漫画の海外人気も高まっています。調査会社「ヒューマンメディア」によると、2023年の日本の「出版」の海外売り上げ規模は3200億円で、10年前の2013年(1413億円)の2.3倍に増えたそうです。この大半が漫画とみられています。アニメ原作以外の漫画もヒットさせようと、大手出版社がさまざまな方策を打ち出しているところです。
(写真・東宝の松岡宏泰社長=2025年3月12日)

原作作者は黒衣になり歌舞伎を取材

 「鬼滅」をはじめアニメ映画が興収の上位を占めるなか、実写映画では異例のヒットとなっているのが「国宝」です。8月22日には、公開77日間で興収が110億円を超えたと配給元の東宝が発表。100億円を超えた映画は過去に49作品ありますが、そのうち邦画実写は「踊る大捜査線 THE MOVIE2」(2003年、173.5億円)と「踊る大捜査線 THE MOVIE」(1998年、101億円)、「南極物語」(1983年、110億円)の3作品のみで、「国宝」は22年ぶりの邦画実写映画100億円超えとなりました。

 原作は、「悪人」などで知られる吉田修一さんが2017~2018年に朝日新聞に連載した小説です。伝統芸能である歌舞伎の裏側を克明に描いた作品で、吉田さん自身が3年にわたり「黒衣」として歌舞伎の舞台に実際に参加し、取材を重ねて作品を書き上げました。約10年前、「国宝」の監督である李相日(リ・サンイル)さんが吉田さんと新年会をした際に歌舞伎を題材にした映画の構想があるという話になり、そのあとに吉田さんが小説の執筆を決意。しかし歌舞伎界にはつてがなく、様々なアプローチを重ねてようやく今回の映画にも出演している歌舞伎役者の中村鴈治郎さんと吉田さんが出会い、黒衣として楽屋に入ることを認められて、作品づくりが本格的に動き出したそうです。

国宝は「熟成の期間が必要だった」

 構想から作品の完成までは長い年月がかかり、完結してからも「世間に評価されるまでには時間がかかったと記憶しています」と小説の担当編集者は「AERA DIGITAL」のインタビューで振り返っています。そこから映画の完成までも時間がかかりましたが、「それだけ醸成に時間が必要な作品だったということで、いま、タイパ、コスパで、とにかく早く結果を出すことが求められる時代にあっても、ワインは何年も寝かせることで味を深めていくのと同様、『国宝』には熟成の時間が必要だったのだと思います」とこの編集者は語っています。

 アニメ全盛期にこれだけ実写映画がヒットした要因はいろいろ考えられますが、「国宝」は原作も映画も作者、監督が深い思い入れを持ち、構想から長い期間をかけて丁寧に深くつくりあげられた作品であることは間違いないと思います。
(写真・李相日さん(右)、吉田修一さん=東京都千代田区)

ヒットには様々な要因が

 アニメが興収上位を占める中、近年ヒット作が少なくなってきていると指摘されていたのが洋画です。そのなかでも今年異例のヒットとなったのが、3月に公開された「教皇選挙」です。ローマ・カトリック教会の教皇を決める選挙「コンクラーベ」の内幕を描く映画でしたが、偶然にもフランシスコ教皇が4月に亡くなり、映画公開中に本当にコンクラーベが行われたことから注目度がさらにあがりました。

 原作人気、口コミの伝播、宣伝の効果、偶然……映画のヒットには様々な要因がからまりあっています。コンテンツ産業をめざす方でなくても、何が人の心をつかむのかヒット作をもとに考えることは、ビジネスマインドを養成することにつながると思います。ぜひ、いろいろな情報をチェックして自分なりに考えてみてください。

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