話題のニュースを総ざらい!面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ

2024年10月18日

社会

「残りわずか」「○人が閲覧中」で被害総額1兆円も 対策急務の「ダークパターン」とは【時事まとめ】

被害額1兆円超える試算も

 「ダークパターン」を知っていますか。インターネット上で、消費者に望ましくない選択をさせる宣伝やサイトの設計などを指す言葉で、ある調査では消費者の86%がダークパターンを経験したと回答しています。被害総額は1兆円を越すという試算もあり、IT大手は対策をかかげて協会を新設しました。

 ネットをつかった販売やサービスはいまやインフラのような存在ですが、ダークパターンが広がりすぎてしまうと信頼性が大きく下がり、消費行動の低迷、さらには景気のブレーキにもつながりかねません。IT業界への就職を考えている人はもちろん、インターネットを使って消費者と接点をもつ業界に関心のある人、ネットを使ったサービスを今後考えていきたい人など、ダークパターンに関連するニュースはぜひ知っておきたいところです。(編集部・福井洋平)
(写真はiStock)

「むりやり会員登録」「退会なかなかできない」もダークパターン

 OECD(経済協力開発機構)は2022年に、ダークパターンについてとりまとめたリポートを発表しています。リポートをもとに、ダークパターンの7類型を紹介します。

1 行為の強制
 あるサービスにアクセスする際に、特定の行為を強制的に行わせることです。たとえば商品を見たいだけなのに会員登録をさせたり、会員登録の際に必要のない個人情報まで書かせたりといったことです。

2 インターフェース干渉
 企業にとって都合のいい消費者の行動につながるよう、情報を強調したりすることです。企業に都合のいい選択肢がデフォルトの設定になっていたり、うその高値を載せて割引きした値段を掲示したりすることが含まれます。

3 執拗な繰り返し
 通知や位置追跡機能をオンにするなど、企業に都合のいい行動をするよう繰り返し要請することです。

4 妨害
 企業に都合のわるい行動をあきらめさせるようにすることです。解約や退会の手続きを面倒にすることなどが含まれます。

5 こっそり
 消費者が意思を決めるのに必要な情報を隠したり、わざと遅れて開示したりすることです。実際は定期購入品なのに1回だけの購入のようにみせかけたり、明確な同意なくトライアル期間後に自動的に購入が更新されたりすることなどが含まれます。

6 社会的証明
 ほかの消費者の行動を知らせることによって意思決定に影響を与えようとすることです。うそや誤解を招くような「お客様の声」を載せることもこれに含まれます。

7 緊急性
 在庫があとわずかだ、割引期間がもう終了するなど、実際でもうそでも緊急性をあおるような表現をつかって消費者の行動を誘導することです。

 どのパターンも「あるある」と深くうなずきたくなるものばかりです。個人的には飲食チェーン店でタブレットなどを使ってオーダーを入れる際、一緒にこれはいかがでしょうか、あれはどうでしょうかとサイドメニューをすすめてくるインターフェースも、ちょっとやりすぎではないかと感じています。
(図表は朝日新聞社)

EUなどでは厳しい法規制対象

 タイムセールで消費者にアピールしたり、最初に高い値段をつけておいて値引きをしたように見せかけて売ったりといった手法は、ネット普及以前から小売店などではよく見かけたものです。そして1990年代以降、人の心理を読んで経済を分析する「行動経済学」という分野の学問が急激に発達。その知見をもとに、ひじで軽く押すという意味の英語で、人々を望ましい選択へそっと後押しする「ナッジ」という考え方がひろがり、とくにコロナ禍で高い注目を集めるようになりました。この考えを応用するところからダークパターンの進化が進んでいった、と考えられます。ウェブ業界の発達にともない、消費者のデータを取り、企業にとってよりよいサービス設計をしていくスピードも格段にはやまり、ダークパターンは拡大の一途をたどっています。

 あきらかにうその情報で消費者をだますような行為は法律で罰せられますが、わかりにくいところに情報を隠したり、解約手続きを煩雑にしたりするといった行為は必ずしも違法とはいえず、消費者が注意するしかないケースもあります。ダークパターンは欧州連合(EU)などではデジタル時代の消費者問題と捉えられ、厳しい法規制の対象となっているそうです。
(写真・消費者庁もダークパターンへの注意をホームページなどで呼びかけている/朝日新聞社)

日本でも対策協会が発足

 こういったダークパターンを減らそうと、10月2日にIT大手などが「ダークパターン対策協会」を発足させました。ダークパターンとされる行為のガイドラインを作成したり、消費者が安心して使えるサイトの認定制度をつくったりする考えです。プレスリリースでは「“ダークパターン”による消費者の金銭的被害や精神的苦痛を減らし、信用できる誠実なWebサイトを消費者が簡単に判断できる目安を提供する」と表明しています。

 消費者としてだけではなく、今後IT業界に進んだり、ウェブをつかったサービスを提供する仕事についたりする人にとっても、ダークパターンの知識を得ておくことは必須と感じます。ダークパターンに陥らないようにさまざまなサービスを設計する発想も、今後より重要になってくるでしょう。
(写真・ダークパターン対策協会の発足について会見する理事のカライスコス・アントニオス龍谷大教授=2024年10月2日)

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