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2024年08月23日

政治

自民党総裁選、9月に実施 日本の将来を決める大事な選択に【時事まとめ】

事実上、次の首相を選ぶ選挙に

 今年9月に行われる自民党総裁選は、岸田文雄首相が不出馬を表明したことで立候補が増えそうです。裏金問題で派閥の力が弱まったこともあり、これまでにない乱戦が予想されています。

 自民党総裁選は事実上、次の首相を選ぶ選挙でもあります。政治の動きは就職活動に直接関係はなさそうですが、次期首相の考え方によっては日本の経済の動き、将来の国のあり方は大きくかわります。ぜひ関心をもって、日本の将来を決める総裁選のニュースをチェックしてみてください。(編集部・福井洋平)
(写真・記者会見で自民党総裁選への不出馬を表明する岸田文雄首相=2024年8月14日/写真はすべて朝日新聞社)

派閥弱体化して立候補者増える見込み

 岸田首相は当初、総裁選での再選に意欲を燃やしていたといいます。しかし昨年発覚した裏金事件の実態解明の不十分さや、首相自身が責任を取らないことへの批判が強く、朝日新聞の世論調査によると内閣支持率は昨年10月以降、20%台と低迷しています。自民支持率にいたっては今年6月に19%まで落ち込み、現行方式になった2001年4月以降、初めて20%を切りました。これほど人気が低迷すると国政選挙で自民党が大きく議席数を減らす可能も高くなり、岸田首相は立候補断念に追い込まれました。

 岸田首相が立候補断念を表明してから、候補者として名前の挙がった自民党議員の数は10人を超え、これまで最多の5人を超える候補者が出る可能性も出てきました。理由のひとつは、派閥の弱体化です。

 自民党総裁選に出るためには、まず国会議員20人の「推薦人」を集める必要があります。これまでは、自民党の派閥の幹部が立候補し、自分の派閥の所属議員を中心に推薦人をあつめるケースが目立っていました。そのため、若手や中堅の議員、派閥に属さない議員にとっては推薦人を集めることが難しかったのです。しかし昨年発覚した裏金問題で派閥の力は大きく弱まり、今回は自分の力で推薦人を集められさえすれば立候補への道が開けるようになりました。最初に立候補を表明した小林鷹之・前経済安全保障相(49)=二階派=は当選4回と自民党的には若手ですが、所属する二階派以外からも推薦人を集めています。また、これまであまりなかった同一派閥からの複数人の立候補も出てきそうです。派閥のかけひきで当落が決まってきたこれまでの総裁選とは違い、より人物や政策に焦点をあてた総裁選が行われることを期待したいものです。

岸田政権で賃上げ上昇、防衛力強化路線

 では、今回の総裁選はどういったことが争点になりそうなのでしょうか。

 まず、岸田首相の3年間の政策についてどう評価するかがポイントとなります。岸田首相は就任時に「新しい資本主義」を掲げ、コロナ禍で傷んだ経済を立て直すと宣言しました。大企業や富裕層優遇と批判されていた「アベノミクス」の修正に手をつけるとみられていましたが、結果的に急転換はしませんでした。また、半導体など特定の業種を手厚く支える旧来型の産業政策も強化しています。2022年のウクライナ戦争を機に世界的な物価高にみまわれてからは、大企業に利益の還元を促し、今年の春闘での大幅な賃上げ率につなげています。

 エネルギー政策では原発の再稼働を進め、2023年8月には福島第一原発にたまる処理水の海洋放出も始めました。また、国家安全保障戦略など安保関連3文書を改定し、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を決定。2027年度の防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針も決めています。日本とアメリカの同盟関係はこれまで以上に強くなり、首相自身は一連の防衛力強化政策を「俺は安倍さんもやれなかったことをやった」と周囲に語ったといいます。

 一方で、防衛費増額の一部を増税でまかなうとしましたが、経済界や党内の反発を招き棚上げに。肝いりの「異次元の少子化対策」では財源を社会保障の歳出削減や新たな支援金制度でまかなうとして「実質負担ゼロ」をうたいましたが、結果的に大きなインパクトは与えられませんでした。「増税メガネ」と揶揄されたイメージを変えようとしてか、ガソリン補助金や電気・ガス料金の補助、今年には定額減税も実施するなど、ばらまき政策を繰り返し、国債(借金)の残高は在任期間中におよそ100兆円増えています。

次期総裁が直面する課題とは

 次の自民党総裁=次期首相は、どんな課題に立ち向かうことになるでしょうか。

 ひとつは経済政策です。賃上げの流れは進んでいるものの、まだ物価高を超える水準をキープできるかは未知数です。今後も賃上げを続けられるようにして、経済を好転させられるかが大きな課題となります。一方で大幅な防衛費増額や「異次元の少子化対策」で必要となる財源をどう確保するか、支持率打開のために繰り返されてきたばらまき政策にどうけりをつけるかも重要な問題です。

 外交面では、11月に誕生するアメリカの新政権と向き合う必要があります。なかなか好転の兆しがみえない日中関係をどうするか、岸田政権では実現できなかった日朝首脳会談を実現できるか。外交も課題山積です。

 憲法改正に対する姿勢も問われます。岸田首相は8月、自民党の憲法改正実現本部で突然、憲法に自衛隊を明記する議論を加速するように指示しました。党内保守系の議員に対するアピールとみられますが、新しい総裁が憲法改正への意欲を強く示すのか、ほかの政策を優先するのかも注目したいポイントです。一方で、選択的夫婦別姓問題についてはずっと消極的な姿勢を見せ続けている自民党ですが、新しい総裁になって方針が変わるかどうかも気になるところです。

派閥解消も規正法改正も進まず、次期総裁は?

 岸田政権の支持率低迷は、裏金問題を機に浮上した「政治とカネ」問題への対応が手ぬるかったことが大きな要因です。裏金作りの温床となった派閥について岸田首相は自分が率いる 岸田派を解散すると宣言し、他派も 麻生派を除いて追随しました。しかし、4派が 総務省への政治団体としての廃止の届け出をしないままです。政治資金規正法の改正も、野党が求めた企業・団体献金の禁止は見送られています。首相は不出馬表明の会見で「もとより所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかのちゅうちょもない」と裏金問題について語りましたが、問題の発覚からずいぶん時がたったいま「ちゅうちょもない」という発言をするのは何かのジョークにしか聞こえません。

 政権運営が行き詰まったときに総裁をすげ替えて「刷新感」を狙う手法は、自民党がこれまで好んで使ってきたものです。それがもっともうまくいったのは2001年。内閣支持率が1ケタ台まで落ち込んだ森喜朗首相が退陣、「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎氏が総裁選に勝って首相になり、支持率は急騰しました。今回、小泉純一郎氏の次男で元環境相の小泉進次郎氏が総裁選に立候補する意向と報じられており、歴史は繰り返すかもしれません。
(写真・自民党新総裁に選ばれ、拍手にこたえる小泉純一郎氏=2001年)

「目新しさ」だけでは課題に対応できない

 経済政策、政治とカネの問題、アメリカ新政権への対応といった外交問題など、新しいトップが向き合う課題はかつてなく大きなものになっています。ただ目新しい、刷新感があるというだけでは、政権運営は早晩行き詰まるでしょう。日本の将来を考えるうえでもいま、誰が総裁になるかは非常に重要です。

 総裁選は党員・党友以外は投票できないのですが、これから候補者がどういった政策プランを打ち出すのか、総裁選の過程でどういった議論がすすめられていくのか、ぜひ高い関心をもってチェックしてみてください。朝日新聞では、立候補が取りざたされる議員の政策について、東大の谷口将紀研究室との共同調査を分析した結果を連載しています。ぜひこちらもチェックしてみてください。

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