話題のニュースを総ざらい!面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ

2023年06月21日

社会

日本の男女格差、過去最低の世界125位に 就活生が意識するべきポイントは【時事まとめ】

前年から順位を9つ落とす

 男女の格差(ジェンダーギャップ)の国別ランキングで、日本の低迷傾向が止まりません。毎年世界経済フォーラムがまとめている「ジェンダーギャップ報告書」の2023年版で、日本の男女平等の達成度合いは調査対象となった146カ国のうち125位(前年は116位)。経済と政治分野の遅れが響き、2006年の発表開始以来、順位は最低となっています。この就活ニュースペーパーでも何度もジェンダーギャップの問題をとりあげて来ていますが、改善のきざしはいまだに見えていません。就活の局面でも、またこれから社会人として成長していくためにも、ジェンダーギャップの問題は自分ごとに引き寄せて考えておくべき課題だと思います。(編集長・福井洋平)

政治分野では138位

 6月21日に発表されたジェンダーギャップ報告書については、海外ニュースを発信する朝日新聞のウェブサイト「Globe+」に詳しく掲載されています
(日本のジェンダーギャップ指数125位 「政治」で大きな格差 依然として改善せず)
。男女平等の達成度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」(100%=完全な平等達成を示す)で、日本は「教育」「健康」の分野ではそれぞれ99.7%(47位)、97.3%(59位)と健闘しました。しかし「経済」分野では56.1%(123位)、「政治」分野はなんと5.7%(138位)と、大きく低迷。国会議員の10%、閣僚の8.3%しか女性がいないことなどが要因となっています。さまざまな制度や法律をつくる政治の世界で男女平等が進まない現状では、日本社会全体でのジェンダーギャップ解消への道のりは遠いと言わざるをえません。

「仕事優先」という無言の圧力

 2018年には、男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党や政治団体に求める「候補者男女均等法」が施行されています。今年4月の統一地方選では女性の当選者が過去最多となったものの、まだ男性との開きはあり、女性の政治参画は加速しているようには見えません。

 朝日新聞では、男女に限らず幅広くジェンダーの問題についての情報を発信する「Think Gender」というコーナーを設けています。2022年6月27日の記事では、当選1回の女性国会議員に「女性議員にとって国会の『壁』は何か」を聞いたところ、「育児との両立の難しさ」という答えが一番多かったと紹介しています。ある女性議員は「子どもが高熱を出したので、病院に連れて行かないといけない」と党の男性幹部に伝えて、国会の仕事を断りました。そのときは「分かった」と言ってくれたそうですが、後日「また子どもが病気だって」と言っていたことを人づてに聞かされたといいます。「国会議員たるもの、仕事が最優先だろうという無言の圧力を感じる」と女性議員は話しています。

(写真・有権者と触れ合う市議選の女性候補者=2023年4月)

クオータ制日本では導入せず

 ハラスメントの問題も見逃せません。元衆院議員の金子恵美さんは朝日新聞のインタビューで、タクシーの中で同乗したベテラン議員に「かわいいねえ」とほおをなでられた、といったエピソードを紹介しています。妊娠を報告した際には、党幹部に「ずっと休んでてもらっていいから」と言われたり、地元議員から「次の選挙で3000票は減るなあ」と言われたりしたこともあったそうです。金子さんは「『スーパー昭和』な発言をするような古い考えの人を減らし、女性や若い議員が増えていくことで、ようやく永田町の価値観は変わってくるのだろうと思います」と述べています。

 女性議員を増やす方策としてよく取り上げられるのが「クオータ制」です。候補者や議席の一定数を女性に割り当てるという制度で、約120の国と地域で導入されていますが、日本では導入されていません。「男女関係なく、その人の能力で当落は決まるべきだ」という反対意見がよく聞かれますが、女性が主力として家事や育児を担うべきだという考え方やさまざまなハラスメントが放置されている文化のなかでは女性が議員になるためのハードルは男性より高くなっている、という現状を踏まえるべきです。

(写真・市民団体「クオータ制を推進する会」の集会であいさつする国会議員=2022年3月、国会内)

女性登用しない会社の価値は下がる?

 政治の世界はとびきり遅れていますが、経済分野でも男女平等はまだ進んでいません。内閣府によると、民間企業の女性管理職比率(課長相当職)は2021年時点で12.4%。東証プライム上場企業に占める女性取締役の割合は2022年7月時点で11.9%という別のデータもあります。家事や育児を過度に担わされた結果、将来の役員候補となるべき女性が脱落させられている構図や、2022年の流行語大賞にノミネートされた「オールド・ボーイズ・ネットワーク」(男性中心に形成された人間関係で、女性の活躍やイノベーションを阻害する要因になる)の存在が数字の低さにつながっています。これらを放置する限り、数値は改善しないでしょう。

 いわゆる「物言う株主」といわれる投資家は、この状況を批判的に見ています。女性登用に熱心でない企業を「恥ずべきガバナンス」と断じるある投資ファンドのトップはその理由を「女性は人口の半分を占め、企業にとって顧客の一部。従業員や株主の一部でもある」と語っています。積極的な女性活用施策を打ち出していない企業は、今後価値が下がっていく可能性があります。そういった観点から、企業の取り組みをチェックしていくべきでしょう。

これまでの経緯ふまえて考えよう

 これから、採用者数や昇進者数の一定数を女性とする取り組みをする企業は増えていくでしょう。男性のなかには、「逆差別ではないか」と感じる人もいるかもしれません。もちろんそういうケースもあるかもしれませんが、なぜそういう取り組みが求められるようになったかについては、これまでの経緯をふまえてちゃんと認識しておく必要があります。

 2018年、複数の大学医学部の入学試験で、女子に不利な扱いをしていたことが発覚しました。女子の合格ラインを男子より高く設定していたある私立大学は、「女子の方がコミュニケーション能力が高く、男子を救う必要がある」とその理由を述べたといいます。別の大学は「女性は妊娠や出産というライフイベントがあるので、将来的に大事なポジションにつく者が男性に比べて少ない」という理由で女性に不利な扱いをしていました。また、東京都では都立高校で定員を男女別にしていましたが、2021年の東京都教育委員会の分析では女子700人、男子100人が、男女合同の定員であれば合格だったにもかかわらず不合格となっていました。男性であるだけで制度的に女性より恵まれたポジションを得られた可能性があったことも、男女平等の問題を考える際には頭に置いてほしいと思います。


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