話題のニュースを総ざらい!面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ

2023年05月10日

社会

「労働組合」って? 入るメリットは? 「ない会社」との違いは?【時事まとめ】

世界中でメーデーのイベント開催

 5月1日は働く人・労働者の祭典「メーデー」の日で、世界中で様々なイベントが開かれました。日本ではゴールデンウィークの間にあたるため、最大の労働組合全国中央組織連合(日本労働組合総連合会)」は4月29日に東京の代々木公園で中央大会を開きました。ところで、その「連合」って知っていますか? 連合自身の調査では10代、20代では「知っている」は半数にとどまりました。「労働組合(労組=ろうそ)」については中学や高校の授業で習ったと思いますが、「どんな団体なのかはよく知らない」という人が多いのではないでしょうか。日本では労組に入っている労働者の割合(組織率)は減る傾向にあり、2022年には過去最低の16.5%に下がりました。それでも大企業ではほとんどの社員が組合員という会社も多く、入社後に労組のお世話になる人もいるはずです。そもそも労組って何をしているどんな団体なのか。労組が「ある会社」と「ない会社」はどちらがいいのか。労働組合の「基本のき」を押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真・連合のメーデー中央大会であいさつする岸田文雄首相〈右〉と連合の芳野友子会長。首相の出席は9年ぶり=2023年4月29日、東京都渋谷区)

「労働三権」の復習

 給料を上げてほしい、残業代が払われない、育児休暇をもっと取りたい、パワハラを受けている……。働く人には様々な思いや要望がありますが、一人で会社に訴えるのは勇気がいりますし、簡単に応じてもらえるものでもありません。そこで、立場が弱い労働者が団結して雇用主と対等な立場で交渉するのが労働組合です。働く人の、働く人による、働く人のための組織で、労働者の権利を守り、働く条件や職場の環境を改善して社員が働きやすくする役割です。一人ひとりが組合費を出して、その活動を支えます。

 日本国憲法28条では、
①労働者が労働組合を結成する権利(団結権)
②労働者が使用者(会社)と団体交渉する権利(団体交渉権)
③労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権=争議権)
労働三権が保障されています。

 団体交渉で労働条件を良くするため話し合いますが、要求が通らない場合に労組は仕事をしないことで抗議する「ストライキ(スト)」をすることができます。英国やフランスで大規模なストがあり、都市機能が一部ストップしたニュースが最近もありましたね。日本でも1960~70年代には電車や航空機の運航が止まるような大規模なストが頻繁にありましたが、近年は起きていません。

若者の半数「連合知らない」

 労組は産業革命時代の英国の同業者組合が起源で、欧米では企業の垣根を越えた産業別の労組が一般的ですが、日本では企業別の労組が主流です。ただ、主要な企業別組合の多くは「電機連合」「自動車総連」などの産業別の労働組合に加盟しています。産業別労働組合のほとんどはさらに「連合」などの中央組織に加盟しています。中央組織には連合のほかに、「全労連(全国労働組合総連合)」、「全労協(全国労働組合連絡協議会)」があります。最大組織の連合は労働者の代表として、働き手を守るルールの強化などの政策を提言したり、経団連などの経済団体に働く環境の改善を訴えたりしています。立憲民主党や国民民主党の国会議員には連合など労組出身者がいて、組織的な応援を受けています。

 しかし、連合が全国の15歳以上の2000人に昨秋行ったインターネット調査で、43.4%が連合を「知らない」と答えました。存在感の低下があらわになりました。「名前を聞いたことがある」が36.8%、「どのような組織か知っている」は19.8%。「知らない」と答えた割合は前回の2021年調査より5.8ポイント増え、特に10代は47.5%、20代は49.3%と半数を占めました。

労組の有無のチェック方法

 厚生労働省によると、労組の組織率は1949年の55.8%をピークに低下傾向が続き、直近20年間は10%台後半です。低迷の要因は、労働市場の4割近くを占める非正規労働者の多くを取り込めていないこと。パートタイム労働の組合員は増加傾向にあるものの組織率は8.5%です。組合員が多い製造業からサービス業への産業構造転換や、フリーランスなど働き方の多様化も背景にあります。

 それでも組織率を企業の規模別に見ると、従業員1000人以上の会社は39.6%に跳ね上がります。就活生に人気の5000人以上の大企業では、労組加入が当たり前で半数以上が組合員という会社も多くあります。一方で100~999人の会社は10.5%、99人以下は0.8%ですから、労組による恩恵は大企業のほうが受けやすいことがわかります。

 大企業でも労組がない会社はあります。労組の有無は、上場企業ならコーポレートサイト等で公表している有価証券報告書(有報)の「従業員の状況」に明記することになっています。「就職四季報」(東洋経済新報社)にも、【組合】の欄に「あり」「なし」が載っています。カリスマ的な創業者が家族主義的な経営理念を掲げ、労組なしのまま大企業になった会社もあります。

ワーク・ライフ・バランス重視の人は……

 では、労組が「ある会社」と「ない会社」はどちらがいいのでしょうか。ほとんどの会社は4月の新年度から賃金を改定します。労組がある企業は2~3月の「春闘(春季生活闘争)」の時期に、新たな賃金や労働条件などを労組と交渉して決めます。労組がない企業は、業績や世間の相場を参考に経営側が決めて社員はそれに従うことになります。

 一概には言えませんが、一般的には「ある会社」のほうが安心でしょう。労組は企業の経営方針や労働条件、職場環境のチェック機能を果たします。「ない会社」は中小企業だったり、新しく立ち上げたばかりだったりするケースが多くあります。違法または悪質な労働条件で働かせるブラック企業には、労組のない新しい会社が多いといわれます。極論すれば、まともな労組があって本来の役割を果たしている会社なら、ブラックな働き方はないはずです。現実には経営陣のいいなりになる「御用組合」もあるので、「ある会社=いい会社」とは言い切れませんが、明らかに理不尽な働き方を強いられたときなどに労組があればきっと力になってくれるでしょう。福利厚生については「ある会社」のほうが充実している傾向はあると思います。労組の要求にこたえて制度や設備を整えることが多いためです。企業選びでワーク・ライフ・バランスを重視する人は、参考情報のひとつとして労組の有無もチェックしてみてください。

 「ない会社」の社員でも、個人で入れる労組があります。申し込みはインターネットできたり、月1000円ほどの組合費で一緒に闘ってくれたりするので、覚えておいてください。

(写真・春闘の回答状況が書き込まれた労働組合の産業別組織JAMのホワイトボード=2023年3月15日、東京都港区)

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