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2022年12月09日

環境・エネルギー

気候変動「1.5℃の約束」…企業は? 自分にできることは?【時事まとめ】

甲子園球場にも浸水リスク

 「1.5℃の約束」って知っていますか? 地球温暖化を食い止めるために、18~19世紀の産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えようという世界の目標です。気候変動による豪雨や洪水、干ばつ、熱波などの災害が世界で頻発し、海面上昇も進んでいます。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、途上国を中心に33億~36億人が被害を受けやすい地域に暮らすと指摘。分かりやすいところでは、国内でもプロ野球12球団の本拠地のうち、ZOZOマリンスタジアム、京セラドーム大阪、阪神甲子園球場、マツダスタジアム、福岡PayPayドームの5球場が浸水リスクを抱えるとみられます。温暖化が進むと、グリーンランドや南極の氷床が解け、大西洋の海流が止まり、アマゾンの森林が枯れる──といった環境の激変が突然起こる「ティッピングポイント」が来て、もう後戻りできなくなるとも。いまや企業も温暖化対策に取り組まなければ生き残れません。一方で、先進的な対策は企業にとって大きなチャンスであり、成長にもつながります。志望する企業の温暖化対策への取り組みは、いまや就活の企業研究で欠かせません。個人で取り組めることについても考え、温暖化を「自分事」として考えてみてください。(編集長・木之本敬介)

なぜ1.5℃? 2050年には「実質ゼロ」に

 「1.5℃の約束――いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」は、国連広報センターとメディアが協力し気候変動への行動を呼びかけるキャンペーンです。地球の平均気温上昇は、現状の温室効果ガス排出が続けば今世紀末に産業革命前と比べて3.2度に達する見通しです。気候災害を避けるため、各国は「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑える」ことを目指していますが、IPCCの報告書によるとすでに1.1度上昇。1.5度の目標達成には、3年後の2025年までに各国の総排出量を減少に転じさせ、2050年ごろに「実質ゼロ」にしなければなりません。

 エジプトで11月に開かれた国連の気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)では、温暖化による「損失と被害」を受ける国向けの新たな基金の創設が決まりました。ただ、「1.5度目標」について具体的な進展はありませんでした。

(写真・COP27の閉幕会合で演説後拍手を受ける議長のシュクリ・エジプト外相=11月20日、エジプト・シャルムエルシェイク)

企業サイトで比べてみよう

 企業の姿勢はどうでしょう。朝日新聞の主要100社アンケート(2021年12月発表)で、「2050年度まで」やそれ以前の脱炭素をめざす企業は65社にのぼりました。日本政府も2050年までのカーボンニュートラルを宣言しています。企業として「実質ゼロ」の達成をめざす時期を年度で尋ねたところ、「2050年度まで」が57社、「2040年度まで」が3社、「2030年度まで」が5社でした。5社の一つ、ワコールホールディングスの安原弘展社長は「若年層を中心に環境問題を重視するお客さまが増えている。環境への考えを表明しない会社には投資できない、という海外からの視線もある」と話しています。削減への課題としては、生産・流通などのコストが膨らむ懸念や、それを克服するための技術革新の必要性が指摘されました。クボタの北尾裕一社長は「利益とコストの兼ね合いは重要な課題。環境負荷をかけない技術の開発など、かなりの先行投資をしていく必要がある」と話しました。東レの日覚昭広社長は「これまでと全く変わった発想に基づく『非連続的な技術開発』によって推し進める必要がある」と、国の財政的な支援なども含め、社会全体で取り組むべきだとしました。

 こうした温暖化に対する実績や意欲・姿勢は、みなさんの企業選びでも重要なポイントです。志望する業界の企業が、省エネや再生可能エネルギー、食の改革などでどんな新技術に取り組み、どんな分野に投資しているかが、今後の成長を左右します。多くの企業がコーポレートサイトで、「サステナビリティー」「SDGs」「ESG」といったページを設けて自社の取り組みを特集しています。同じ業界の企業を比べてみましょう。きっと、エントリーシートの内容や面接で志望度をアピールする材料になりますよ。

 企業の具体的な取り組みは、こちらを読んでみてください。
●新連載「若手社員に聞く SDGsに貢献する仕事」の企業一覧

CO₂排出1人7トン→3トンに減らす必要

 温暖化対策を「自分事」にすることも大切です。「個人ができること」をイラストつきでまとめた「気候変動アクションガイド」(グラフ参照)が昨年公開されSNSで広がりました。気候変動対策や防災の情報提供に取り組む団体「FUKKO DESIGN(ふっこうデザイン)」が国立環境研究所のデータを元につくりました。どんな行動をとれば、どれだけ個人の排出を減らせるのか、1年間対策を続けた時に減らせる二酸化炭素(CO₂)換算の量を紹介しています。国環研などの研究によれば、日本では、2015年時点で「年間平均で1人あたり約7トン」の温室効果ガスを排出しています。これに対し、1.5度目標達成のために世界中の人が2030年時点で排出できるのは1人あたり「約3トン」。さらに、2050年時点では1トンまで減らす必要があります。国環研などのウェブアプリ「じぶんごとプラネット」を使えば手軽に計算できます。肉や魚介類を食べる頻度、日常や旅行時の交通手段、電力とガスの使用量などを入力するだけ。やってみてください。

 大学生が「システムチェンジ」を促す動きもあります。学校に再エネ導入を求める「学校再エネ化プロジェクト」は、全国の大学生ら30人以上が連携して活動しています。京都女子大の学生たちは、校舎などに太陽光パネルを設置すれば、大学の年間の電力使用量の15%まかなえると試算。電力が欲しい業者に屋根を貸す「PPA」(電力販売契約)という手法を使えば初期費用を抑えられる、と提案しています。都留文科大(山梨県都留市)のサークル「しぇあはぴ」の学生も今年7月、学長に直接、電力の再エネ転換を提案しました。自分の大学の取り組みはどうなのか、調べてみるのもいいですね。

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