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2022年10月26日

国際

英国・イタリアに40代の新首相 何が起きてる?欧州情勢に注目【時事まとめ】

きっかけはウクライナ危機

 英国の新首相にリシ・スナク元財務相(42)が就任しました。物価高対策などで失敗したトラス前首相がわずか1カ月半で辞任したためです。一方、イタリアでは、ジョルジャ・メローニ新首相(45)が誕生しました。かつて独裁者ムソリーニについて「よい政治家だったと思う」と発言したことがあり、ヨーロッパでは右傾化や欧州連合(EU)との関係が心配されています。インド系のスナク氏は、英国では初めての非白人の首相です。メローニ氏はイタリア初の女性首相で、「極右」と称される政治家の首相就任は戦後初めて。スウェーデンでも政権交代で右派政権が誕生しました。いずれも、ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー価格が高騰したことなどがきっかけで、世界が激動しています。主要国首脳会議(G7)のメンバーとして縁が深い英伊両国の動向は、日本の政治や経済にも大いに影響しそうです。2人とも40代で、今の日本では考えられない若いリーダーの誕生という点も注目です。どんな人物で、ヨーロッパで何が起こっているのか、わかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、総選挙で第1党に躍進する見通しとなり、「ありがとう イタリア」と書かれたカードを持って喜びを表す右翼政党「イタリアの同胞」(FDI)のジョルジャ・メローニ党首=2022年9月26日、ローマ)

英国社会の多様化を象徴

 英国では、新型コロナによるロックダウンのさなかに首相官邸でパーティーを開くなど不祥事が続き、7月に当時のジョンソン首相が辞任を表明。与党・保守党の党首選に勝利した女性首相トラス氏が後を継ぎましたが、大型減税を打ち出して英通貨と国債が急落するなど市場が大混乱に陥り、10月20日に辞任表明に追い込まれました。44日間と英国史上最短政権でした。これを受け、トラス氏と党首選を争ったスナク氏が党内で支持を集め、首相に選ばれました。

 英国の植民地だったインドをルーツに持つ英国民は140万人以上で、人種としては英国系白人に次ぐ規模です。教育水準が高く、平均成績は英国系白人よりも上回り、弁護士や技術者などの専門職につく割合は人種別で最も高く、政財界での影響力も大きいといわれます。英下院で非白人の議員が占める割合は1割で、増える傾向にあります。スナク氏の首相就任は、英国の政治や社会の多様化の象徴的な出来事とも受け止められています。

 スナク氏の両親はインド系移民で、父は町の医師で母は薬局経営の薬剤師。名門オックスフォード大学で政治や経済を学び、米スタンフォード大学で経営学修士を取得しました。米金融大手ゴールドマン・サックスヘッジファンドで働き、30代半ばで政界に移るエリート街道を歩んできました。39歳でジョンソン政権の財務相に抜擢され、コロナ禍では財政出動で雇用を守る政策を打ち出して評価されました。妻はインドのIT大手インフォシスの共同創業者の娘で、英紙によると夫妻の純資産は計7億3000万ポンド(約1226億円)に上ります。食品価格など生活費が高騰する中、「庶民感覚を知らない」との批判もあります。財政規律を守りつつ、インフレに苦しむ国民の暮らしをどう支えるか、手腕が試されます。

メローニ氏って?

 イタリアでは、急激に進んだインフレを背景にドラギ前首相が辞任に追い込まれ、9月の総選挙で第1党になった右翼政党「イタリアの同胞(FDI)」のメローニ党首が首相に就任しました。イタリアメディアなどによると、メローニ氏はローマ郊外の労働者階級の地区で育ちました。父親は小さい頃に家を出て、母親と姉、祖父母の5人で暮らしました。15歳でムソリーニの精神を受け継ぐネオファシスト政党「イタリア社会運動」の青年組織に加入して政治の道に。さらに、その流れをくむ右翼政党「国民同盟」の学生組織で責任者を務めました。19歳のときには、フランスのテレビ局の取材に「ムソリーニはよい政治家だったと思う。彼がしたことはすべてイタリアのためだった」と語っています。29歳で下院議員に当選し、2008年に若者担当相として史上最年少で閣僚入り。2012年に「FDI」を立ち上げました。

 今回の総選挙では、ファシズムについて「歴史にしまってきた」とつながりを否定しましたが、「愛国者の政府が必要だ」と述べるなど「自国第一」の姿勢は一貫しています。かつてはEUについても懐疑的な態度を示していましたが、今回はEUに協力しウクライナ支援を継続する方針を示しています。ただ、FDIと連立を組む右翼政党「同盟」は対ロシア制裁に不満を表明。「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相は、ロシアのプーチン大統領と親しい関係で知られています。対ロシアでEU各国と足並みをそろえられるのか、心配する声が出ています。選挙戦では大胆な減税などを公約に掲げ、物価高対策に取り組む考えですが、財政拡大につながる政策にはEU内に警戒感が出ています。

志望企業と欧州の関係調べよう

 イタリアはウクライナ侵攻前は天然ガスの輸入の4割をロシアに依存してきました。エネルギー価格の高騰に対する国民の不満が、「自国第一」を掲げる右派政権発足につながったとみられています。エネルギー不足と急激なインフレは各国共通の課題です。この冬、エネルギー不足が深刻化すれば、ヨーロッパで「自国第一」主義が広がり、対ロシア制裁の足並みが乱れかねません。国民の不満や将来不安の受け皿として極右やポピュリスト政党が支持を広げる可能性もあります。

 エネルギー不足とインフレ、その対応策が招く財政の問題は、日本にとってもひとごとではありません。外務省の資料によると、英国に進出している日本企業は1000社近く、イタリア進出企業も約300社にのぼります。この機会に、自分の志望企業と英国、イタリア両国などとの関係も調べてみましょう。ヨーロッパ情勢と企業の関係について語れれば、面接でもアピールできますよ。

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