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2022年10月19日

国際

今さら聞けない!中国共産党と習近平総書記 異例の3期目へ【時事まとめ】

強権の習近平体制が続く

 北京で開かれている中国共産党大会に世界が注目しています。習近平(シーチンピン、シュウキンペイ)総書記国家主席)の3期目続投が決まるとみられているためです。中国の最高指導者である総書記は「2期10年」が暗黙のルールでしたが、これを超えて習近平体制が続くのは確実な情勢です。2030年代には米国を抜いて世界一の経済大国になるといわれる中国は、習総書記のもと、香港の自由を奪い、ゼロコロナ政策を続けるなど、強権体制を強めてきました。習氏が党大会で、悲願の台湾統一について武力行使の可能性に言及したことも懸念材料です。今年は日中国交回復50年の節目の年ですが、米中対立が深まる中、日中関係は厳しい局面が続きます。一方で中国は日本の最大の貿易相手。ウクライナ侵攻後、多くの日本企業が撤退したロシアとは違い、中国なしでは日本経済が成り立たないほどの大きな存在です。今後の情勢次第では企業も難しい対応を迫られます。今回は「隣の大国」を知るために、中国共産党と習近平の「基本のき」を解説します。(編集長・木之本敬介)

●台湾問題については、
台湾めぐり米中緊迫! 「一つの中国」と台湾の歴史を知ろう【時事まとめ】
●香港問題については、
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も読んでみてください。

(写真は、中国共産党大会で政治報告を行う習近平総書記=2022年10月16日、北京の人民大会堂)

米欧と異なる「中国式現代化」追求

 中国共産党大会は5年に一度開かれる最重要会議で、人事や党の長期方針を決めます。習総書記は10月16日にあった政治報告で、中国の長年の目標だった「小康社会(ややゆとりのある社会)」を実現するなど「歴史的な勝利を勝ち取った」と自賛。「中国式現代化」という考え方を強調し、米欧のモデルとは異なる発展の道を歩む方針を打ち出しました。中国現代化は、14億の人口を抱える中国の発展のため、米欧と異なる制度や理念に基づく発展モデルを追求する姿勢です。習氏は、中国式現代化で目指すべき目標として、共産党の一党指導体制を堅持▽質の高い発展▽「共同富裕(共に豊かになる社会)」の実現──などを挙げました。

 台湾問題については、平和統一の実現に向け「最大の努力を尽くす」としつつ、外部からの干渉や台湾独立勢力に対しては「決して武力行使の放棄を約束しない」と述べ、5年前にはなかった表現で中台統一は「党の歴史的任務」と強調しました。

(写真は、開幕した中国共産党大会=2022年10月16日、北京の人民大会堂)

大学の「書記」は学長より格上

 中国を理解するため、みなさんにとって身近な大学を例に説明します。中国では政府機関や学校、企業など多くの組織に共産党の「党委員会」や「党組」があり、そのトップは「書記」です。書記は共産党の指示を伝え、実行させる役回りです。党の規約で「党がすべてを指導する」と定められており、書記は大学なら学長、企業では社長よりも格が上。地方の省や市もトップは書記で、省長や市長ではありません。大学の書記の権限は強大で、人事や予算配分に大きな影響力を持ち、学長は経営や研究、教育活動に責任を負います。習氏が総書記になった翌2013年、党中央から各大学に「七不講」という「七つの語るべからず」を意味するお触れが出ました。報道の自由など米欧の思想や制度を授業で取り上げてはならないとの内容に多くの教員が反発しましたが、書記たちが現場で徹底させました。みなさんが通う日本の大学では当たり前の「学問の独立」や「学問の自由」は存在しないのです。

文化大革命の教訓

 その中国共産党で、総書記は「2期10年」が不文律とされてきたのはなぜか。建国の父でカリスマ的指導者だった毛沢東が始めた文化大革命が、全土を大混乱に陥れた失敗の歴史があるからです。1966~76年の文化大革命は、毛への個人崇拝が引き金になって起きました。その反省から、共産党は集団指導体制への移行を進め、個人崇拝を禁じて指導者の終身制を廃止。歴代政権は「過度な権力集中はもう起きない」とアピールしてきました。しかし、今回の党大会で習氏はこの慣例を破って長期政権を築くとみられています。共産党には、党大会の年に68歳以上であれば退任するとの定年制のルールがありましたが、昨年公表された規定からは消え、習氏が引退しなければならない制度上のしばりはなくなりました。共産党が目指す国家建設のゴールは建国100年にあたる2049年で、それまでに「中華民族の偉大な復興」を実現するため「社会主義現代化強国を築き上げる」としています。今69歳の習氏がいつまでトップで居続けるのか、今は誰にもわかりません。

習近平氏、どんな人?

 そもそも習氏はどんな人なのでしょう。北京市生まれですが、中央部の陝西(せんせい)省で育ちました。副首相まで上り詰めた父親が文化大革命で失脚したためです。16歳で陝西省の農村に送られた習氏は洞窟式住居「窰洞(ヤオトン)」で6年間暮らし、投獄されたこともあります。それでも名門の清華大学化学工業学部に進み、卒業後は共産党の地方組織の幹部として各地を転々としながら地道に出世しました。2007年に政治局常務委員に抜擢され、翌年には国家副主席、2010年には中央軍事委員会副主席と出世しました。妻は国民的歌手、彭麗媛さんです。

 異例の3期目ですが、中国国内では支持する声が強いようです。とりわけ一般市民からは、長年の課題であった党や政府幹部の腐敗に切り込んだことや地方の脱貧困で一定の成果を出したことへの評価が高いといわれています。ただ、高度成長を続けてきた中国の経済は曲がり角にあります。習氏は新型コロナウイルスの拡大を厳しい移動制限で防ぐ「ゼロコロナ」を徹底してきました。その影響もあって、今年上半期の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年同期比2.5%にとどまり、「年5.5%前後」の目標達成は厳しい状況です。少子高齢化も加速しています。

 政治的な対立は続く一方、日中経済は切っても切れない関係です。日本でもっとも多い外国人は中国人ですし、みなさんが手にする商品も「メイドインチャイナ」が多いと思います。中国にある日系企業の拠点数は3万3000を超え(2019年)、海外拠点で最多です。「習近平の中国」から目が離せません。

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