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2022年06月01日

国際

成立した「経済安保法」って? 背景に米中対立、企業には懸念も【時事まとめ】

自由な経済活動を制約?

 「経済安全保障推進法」(経済安保法)が国会で成立しました。「安全保障」というと、まずは軍事・防衛が思い浮かぶと思いますが、「経済」と結びつけたところが今の時代ならではのポイントです。最新の科学技術や情報を外国に盗まれるのを防ぎ、様々な製品に不可欠な半導体や大事な医薬品を確保するのが目的です。国が企業を支援したり規制したりする内容で、違反すると罰則も科されるため、企業には自由な経済活動が制約されるのではないかと心配する声もあります。背景にあるのは、米国と中国の間の先端技術をめぐる覇権争いです。「経済安保」は私たちの生活にも関わりますし、実際に担うのは企業ですから、就活生も知っておくべきキーワードです。分かりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)

野党も賛成して成立

 経済安保法は5月11日、自民、公明の与党に加え、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党も賛成して成立しました。2023年以降、段階的に施行される見通しです。

 法律の内容を見てみましょう。①医薬品や半導体などを安定的に確保するサプライチェーン(供給網)の強化 ②サイバー攻撃に備えた基幹インフラの事前審査 ③先端技術での官民協力 ④原子力や高度な武器に関する技術の特許非公開――が4本柱です。違反した企業などには最大で「2年以下の懲役か100万円以下の罰金」が科されます。たとえば、基幹インフラ企業が新たなシステムを導入する際、問題がありそうな外国製品が含まれていないかを国が審査します。その際、国に計画書を届け出ないなど、違反すれば罰則が科されることになります。

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高度技術や情報を守るため

 岸田政権が経済安保法をつくったきっかけは米中対立。中国は民間企業の高度な技術を軍事面に応用していて、警戒を強めた米国のトランプ前政権は、中国通信大手・華為技術(ファーウェイ)が、中国の軍の影響下にあるとして同社への半導体の輸出規制を強化。膨大な情報を中国に抜き取られると心配したからです。日本でも技術や情報を守るための法律をつくるべきだとの声が高まりました。

 安全保障で米国との同盟関係を重視する日本は、中国とも経済的に強く結びついています。日本企業にとって中国は重要な生産地であり消費地でもあり、「中国抜きに日本経済は回らない」と言われるほどです。ただ、中国に依存しすぎると安全保障上のリスクが高い時代になったため、この法律が必要になったわけです。

(写真は、中国通信機器大手の華為技術〈ファーウェイ〉のロゴ=2021年5月、中国貴州省貴陽市)

「アメとムチ」の法律

 企業にとってはどうなのでしょうか。経済安保法は「アメとムチ」で企業の協力を得ようとする法律です。サプライチェーンの強化では、企業の計画を政府が認定すれば、工場の整備や製品の備蓄に国の助成を受けることができます。対象となる「特定重要物資」への指定が見込まれる業界からは、助成金を期待する声が上がっています。電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの導入拡大に欠かせない蓄電池業界などは、政府の大規模支援を受ける中国や韓国勢との競争が激しいからです。

 ところが、サプライチェーン強化の対象や基幹インフラの対象設備、特許非公開となりうる先端技術などは、法律には具体的に記載されていません。国会の審議を経ない政令省令で定める項目が138カ所に上ります。最も規制色が強いとして経済界が懸念しているのが、基幹インフラの事前審査です。電気、金融、鉄道など14業種のインフラ関連企業が重要システムを導入する際、サイバー攻撃に使われるおそれがある外国製品などが使われていないかを国が審査する仕組みです。どの企業の何の設備が審査対象になるのかは分からず、政府の恣意(しい)的な運用につながりかねないと、国会の審議でも問題になりましたが、政府側は「対象は真に必要なものに絞る」などとあいまいな答弁を繰り返しました。

(写真は、参院本会議で経済安保法案について小林鷹之経済安保相〈手前〉の答弁を聞く岸田文雄首相=2022年4月13日、国会)

今後の政省令に注目

 中国企業に対する輸出規制や中国・新疆ウイグル自治区の人権問題などによる米中対立の影響は、すでに日本企業にも広がっています。朝日新聞が2021年に全国主要100社を対象に行ったアンケートで、「経済安全保障」について、「意識している」と回答した企業が80社に上りました。具体的な対応として、技術や個人情報の流出、サイバー攻撃などに備え、54社が「情報管理の強化を行った」と回答しました。具体的な対策では、シャープ京セラニトリホールディングスなど4社は、「中国に立地する生産拠点の見直し」を挙げました(グラフ参照)。

 経済安保の専門部署をつくる企業もあります。防衛事業も手がける三菱電機は2020年10月、経済安全保障統括室を立ち上げました。10人ほどの社員が各国の輸出入規制の情報を集め、自社製品にどのような影響があるかを分析します。パナソニックリコー富士通なども専門の部署や機関をつくりました。ただ、経済安保法の具体的な内容はこれから政省令で決まるため、あるメーカーの担当者は「何をすればいいかわからず、手探りでやっている」と打ち明けました。企業は、今後できる政省令に注目しています。

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