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2021年06月23日

国際

中東の大国・イランに注目 「核合意」どうなる【時事まとめ】

イランに新大統領

 中東中東の大国・イランに注目が集まっています。6月20日に投票された大統領選挙で、保守強硬派のエイブラヒム・ライシ師(60)が当選しました。イランは国際的に認められない核の開発をしてきました。2015年の「イラン核合意」で落ち着いたのですが、米国のトランプ前大統領が2018年に核合意を一方的に離脱して経済制裁を再開したため、イランの経済が疲弊して国民の不満が高まっています。今のバイデン米大統領は核開発の制限を条件に核合意に復帰する意向で、最終合意に向けて世界が注目しています。遠い中東の話ですが、その情勢は世界の安定や平和を大きく左右します。原油の輸入を中東に頼っている日本にとっても、この地域はとても重要です。そもそもイランってどんな国なのか。対立の構図を含めて「キホンのキ」を学んでおきましょう。(編集長・木之本敬介)

昔の「ペルシャ」

 まずはイランという国について。「ペルシャじゅうたん」って高級品で有名ですよね。この地域はかつて「ペルシャ」と呼ばれ、紀元前には強大な「ペルシャ帝国」を築きました。7世紀にアラブ人に支配されてイスラム教が入り、20世紀になってから「イラン」と称するようになりました。世界のイスラム教徒の中では少数派のシーア派が多数を占めています。王制時代は親米国でしたが、1979年の「イスラム革命」でシーア派の指導者が実権を握りました。イランから逃れた国王を米国が受け入れたことから444日間にわたる「在イラン米国大使館人質事件」が起き、1980年に両国は断交。以来ずっと敵対関係が続いています。原油天然ガスの埋蔵量は世界トップ級の資源大国で、中東では米国の支援を受けるイスラエルや、スンニ派の大国サウジアラビアなどと対立。シリアイエメンでの紛争では、シーア派のテロ組織を支援しているといわれています。

「イラン核合意」とは

 そのイランが核施設を建設していることがわかったのは2002年。中東ではイスラエルが核兵器を持っています。敵対するイランが核兵器保有国になれば、地域の緊張は格段に高まります。イランは原子力発電所や研究目的だと主張しましたが、国際社会は核兵器をつくろうとしていると疑い、開発をやめさせようと経済制裁をかけました。2015年、米国、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアの6カ国とイランは、イランが核開発を大幅に制限する見返りに経済政策を緩和する核合意を結びました。核兵器に転用できる高濃縮ウラン兵器級プルトニウムを15年間は生産しないことや、ウラン濃縮に使われる遠心分離機の大幅削減も盛り込まれました。しかし、核開発の制限に期限が設けられ、弾道ミサイル開発の制限が盛り込まれていないとして、当時のトランプ米大統領は「致命的な欠陥がある」と非難。2018年に核合意を一方的に離脱し、イランへの制裁を再開しました。イランは国家収入の6割を占めるとされる原油収入が激減。反発したイランは、核合意の制限を超えてウラン濃縮度を引き上げるなど核合意違反を続けています。

生活困窮で国民に不満

 イランにも保守穏健派や自由の拡大を訴える改革派がいます。今のロハニ大統領は穏健派ですが、経済制裁に加え、米国がイランの「英雄」だった司令官を2020年に空爆で暗殺したこともあり、米国に厳しい保守強硬派が力を増しました。今回の大統領選では、最高指導者ハメネイ師の意向を受けた護憲評議会で穏健派や改革派の有力候補は失格とされ、選挙前から強硬派のライシ師の当選が確実視されていました。このため選挙戦は盛り上がらず、投票率は48.8%と過去最低に。多くの国民が棄権しました。

 イラン国民の不満は高まっています。経済制裁で2019年の実質GDP(国内総生産)はマイナス6.8%に落ち込みました。通貨暴落や物価高騰で多くの人の生活が困窮しています。イランには反政府デモで多くの犠牲者を出した苦い経験があります。2009年、大統領選の不正を訴えるデモを政府が武力で鎮圧しデモ参加者ら70人超が死亡。2019年のガソリン価格の値上げによる反政府デモでは治安部隊が出動し、死者は300人を超えたといわれています。保守強硬派のライシ新大統領は、米国への強硬姿勢を取りつつ経済再生を目指す難しい舵取りを迫られます。大統領当選後の記者会見では「米国は即座に核合意に復帰し、合意内容を履行するべきだ」と述べ、米国の制裁解除が先という条件を示しました。

日本-イランは友好関係

 イランは日本との関わりが深い国です。かつて日本はイラン最大の原油輸出先で、日本にとっても原油輸入量の3割をイラン産が占めたこともありました。イスラム革命後に米国と国交断絶した後も友好関係を続けてきました。経済制裁でイラン産原油の割合は数%に減りましたが、中東産は9割近くを占め、そのほとんどがペルシャ湾の入り口、イランとアラビア半島にはさまれたホルムズ海峡を通って運ばれます。プラスチックなどの原料になるナフサ(粗製ガソリン)も輸入の6割が中東からです。イランはかつて経済制裁に反発してホルムズ海峡の「封鎖」を示唆したことがあります。イランには日本の商社やメガバンク、石油元売り大手、海運会社、化学メーカーなどが進出しているほか、中東情勢が悪化して原油価格が高騰すれば、影響はあらゆる業界に広がります。ひとごとではありません。志望企業の中東との関わりも調べて見ましょう。

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