⑦医療費=40兆円超、介護費=10兆円超
㊤の「人口の話」で書いた高齢化が進むとともに、医療費が増え続けています。病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)は、1990年度に20兆円を突破したあと、2013年度に40兆円を超え、2015年度には42兆3644億円に。ざっくり「40兆円超」と覚えましょう。介護費も年10兆円を超えました。過去10年で医療費は3割、介護費は6割も増えました。
医療費の財源は、国民や企業が負担する保険料が半分近くを占め、税金で賄う分が4割弱、患者の自己負担分は1割強です。これからも少子高齢化で支え手の現役世代が減り高齢者は増えます。このままでは保険料の負担がさらに重くなるほか、国や自治体の支出がどんどん増えて財政がもたなくなってしまいます。高齢者が窓口で払う自己負担はかかった医療費の1~3割と割安になっていますが、所得に応じて負担を増やす改正も少しずつ始まっています。
医療費の2割が薬代(薬剤費)。たくさんの薬を与える薬漬けの医療に加え、製薬技術の進歩で高額な薬が開発されていることも要因で、政府は薬代の伸び抑えようとしています。製薬業界に大きな影響がありそうです。
(グラフは、国民医療費と1人当たりの金額)
⑧訪日外国人=2400万人、2020年に4000万人?
中国や東南アジアの経済成長、この数年の円安傾向、東京五輪などの話題で訪日外国人が急増しています。2012年に800万人だった訪日外国人旅行者数は、2016年には3倍の2400万人に達しました。訪日客は国内でお金を使ってくれるため、日本の経済活性化に大きな効果があります。政府は訪日客増を成長戦略の一つと位置づけ、入国ビザの要件緩和などで後押ししています。LCC(格安航空会社)が普及したことも要因です。
政府は、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に4000万人、2030年に6000万人に増やす新たな目標を掲げました。ちなみに、2016年の世界の外国人観光客数トップ5は、①フランス②米国③スペイン④中国⑤イタリアで、フランスは8260万人、イタリアは5237万人でした。
一時期話題になった中国人客の「爆買い」が一段落する一方、買い物よりも体験やサービスを重視する「コト消費」が盛んになっています。運輸、旅行、ホテル、メーカー、小売りのほか、エンターテインメントなど幅広い業界がビジネスを拡大しています。
(グラフは、訪日客数の推移)
⑨消費税率=8%→10%
いま8%の消費税は、2019年10月に10%に上げることが法律で決まっています。今回の衆院選挙で、予定どおり引き上げるが借金返済に充てるとしていた使い道を一部教育無償化などに回すと公約した安倍晋三首相が勝ったため、よほど景気が悪化しない限り2年後には上がるでしょう。
その際に議論になるのが、食料品など暮らしに欠かせない品物の消費税率を低く抑える「軽減税率」です。消費税率が20%前後と高い欧州で採り入れられていて、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、医薬品などが対象。日本の消費税は今まですべてのものに一律8%がかかっていましたが、10%に上げるときに初めて採り入れることになりそうです。消費税は誰でも同じ税率なので所得が少ない人がより負担を重く感じる「逆進性(ぎゃくしんせい)」があります。そこで食料品などに限って8%に据え置き、税率を「軽減」することで低所得者の負担感をやわらげるのが狙いです。以前の自民党と公明党の協議で線引きを決めましたが、国会での議論はこれから。
食品関連の業界はもちろん、消費税はあらゆる業界に関わります。志望業界にどんな影響があるか考えてみましょう。
(写真は、消費税が5%から8%にアップする直前の様子=2014年3月撮影)
⑩大卒求人倍率=1.78倍だが大手は0.39倍の狭き門に
最後はみなさんの就活に関わる数字です。2018年3月卒予定者に対する民間企業の大卒求人倍率は1.78倍。リクルートホールディングスが毎年調べていて、前年よりわずかに上がりました。企業の求人数を就職希望者数で割ったもので、学生1人あたりの求人数です。就活を「椅子取りゲーム」にたとえれば、みなさんが座る椅子がいくつ用意されているのかということ。1人に椅子が2個近くある学生優位の「売り手市場」が続いています。
でも、企業の規模別にみると話は違ってきます。
従業員規模 2017年卒 2018年卒
300人未満 4.16倍 ↗ 6.45倍
300~999人 1.17倍 ↗ 1.45倍
1000~4999人 1.12倍 ↘ 1.02倍
5000人以上 0.59倍 ↘ 0.39倍
(リクルートホールディングス調べ)
従業員1000人未満の中堅・中小企業は倍率が上がりましたが、1000人以上の大企業は下がっています。5000人以上の大企業に至っては、3人で1個の椅子を取り合う「買い手市場」。この数年、売り手市場が続き、大企業に入りたい、入れると思う学生が急増したからです。いわゆる「大手志向」が強まったんですね。
人気の大企業を目指す人は、企業研究などで人一倍の努力が必要です。ただ、人気企業にしかエントリーしないのはあまりにリスキーです。大企業でも一般にはあまり知られていないBtoB(企業間取引)企業や中堅・中小企業にも視野を広げることが大切です。
(写真は、企業合同説明会に集まる就活生たち)