話題のニュースを総ざらい!面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ

2017年08月29日

経済

「円安株高」「円高株安」なぜ? 仕組みを知ろう

円は「安全資産」

 北朝鮮が発射したミサイルが8月28日朝、日本上空を通過して太平洋に落下したのを受けて、この日の市場は「円高・株安」で始まりました。こうした「円高」「円安」や「株高」「株安」という言葉は、ニュースで毎日のように耳にすると思います。時々刻々と変動する円相場や株価は、企業の業績はもちろん、日本の経済、景気にとても大きな影響を与えます。ひいては、みなさんの就職戦線をも直撃します。基本的な仕組みや、今のトレンドくらいは知っておかないと、面接やOB・OGとの会話にもついていけません。「基本のき」を押さえましょう。

 まず円相場について。円相場は日本の通貨「円」と他国の通貨との交換比率のことです。代表的なのは、国際間でもっとも広く使われている米国の「ドル」との比率です。貿易額が大きい中国の「元」、欧州連合(EU)の「ユーロ」との間の円相場も大事ですが、もっともよく使われるのは「対ドル円相場」です。たとえば「1ドル=100円」から円の価値が上がって「1ドル=80円」になれば「円高」、逆に価値が下がって「1ドル=120円」になれば「円安」です。過去10年の円相場をみると、2011年10月の1ドル=75円台という戦後最高の円高から、2015年6月の1ドル=125円台という円安まで大きく変動し、最近は1ドル=110円前後で推移しています。

 円相場は、日本や世界の経済状況だけでなく、国際政治など様々な要因で変動します。一般的には、ある国の経済力が上がればその国の通貨は高くなりますが、円の場合、世界情勢が不安定になったり、経済が悪くなったりすると「円高」に振れるという特徴があります。世界の通貨の中で、円は比較的「安全な資産」だと評価されていて、円を買う人が増えるからです。日本は国債を中心とする国の借金が1000兆円を超す「借金大国」ですが、大半が金融機関など国内での貸し借りのため、もし日本の経済が急激に悪化しても一斉に国債を売り払って価値が急落するような事態にはならないのでは、と信じられているのです。

(写真は、円相場と株価を示すボード=1月12日、東京都中央区)

輸出企業は円安で業績アップ

 日本の企業は、円高や円安でどんな影響を受けるのでしょう。乗用車1台を米国に輸出して1万ドルで売るケースを考えてみます。「1ドル=100円」なら売り上げは100万円ですね。円安になって「1ドル=110円」になれば、売り上げは110万円に増えます。円高で「1ドル=90円」になると、売り上げは90万円に減ってしまいます。輸出で稼ぐ企業は、円安になるともうけが増えて円高になると損するわけです。トヨタ自動車の場合、1円円高になると本業のもうけを示す営業利益が年400億円減るそうです。逆に、輸入ビジネスの企業は円高になると利益が増え、円安になると損をします。

 日本には輸入でもうけている会社もありますが、自動車や電機メーカーなど輸出メインの企業が多く、こうした企業は円安になると業績がアップします。このため一般的には、円安は日本経済全体にとってプラス、円高はマイナスです。

株は「円安なら買い、円高なら売り」

 次に株価です。多くの会社は設立するときに株式を発行してお金を集めます。株式は自由に売り買いができ、企業の業績や資産状況などから売り手と買い手が合意した価格で日々取引されています。売り上げ増などで業績が良くなった企業は、評価が高まり株価が上がります。多くの企業の株価が上がると、日本の経済が活発化して景気が上向いていることを示します。東京証券取引所第1部に上場する約1700銘柄のうち225銘柄で算出する「日経平均株価」が日本の経済状況を示す指標とされています。

 日経平均株価がこれまででもっとも高かったのは、バブル経済最盛期の1989年末の3万8915円。その後の最安値はリーマン・ショック後の2009年3月に記録した7054円です。今は1万9000円台ですが、最高値の半分ほどの水準です。
 
 株価は、米ニューヨーク市場など世界の株価や、国際情勢、日本銀行など各国の金融政策など、多くの要因に左右されますが、円相場とも大いに関係があります。円安になると業績がアップする企業が多いため、今の日本の株式市場では、「円安なら買い、円高なら売り」という公式が定着しています。「円安・株高」「円高・株安」と覚えましょう。

世界はつながっている

 2016年から2017年6月2日までの円相場、日経平均株価を示したグラフを見てください。英国のEU離脱が決まると欧州が不安定になるとの懸念から一気に「円高・株安」になり、米国の大統領選挙ではトランプ氏の景気拡大策への期待から米国の株価が上がり「円安・株高」、フランスの大統領選挙でマクロン氏が当選したときは欧州安定の安心感から「円安・株高」に――といった具合です。ほかにも、北朝鮮や中東の情勢など、円相場や株価を直撃する要因はたくさんあります。世界はつながっています。

 いずれも日々変動するので細かい数字まで知っている必要はありませんが、「円相場は1ドル○○円前後で、円安(あるいは円高)の傾向」「日経平均株価は□□円前後で株高(あるいは株安)の傾向にある」程度は押さえておく必要があります。大きく変動した日は大きなニュースになりますが、それ以外の日もネットや新聞の経済面で確認してください。新聞には上場企業の株価が毎日載ります。志望企業や気になる会社の株価をチェックしましょう。自分の志望する業界や企業が「円安・株高」「円高・株安」でどんな影響を受けるのかも考えてください。業界・企業研究の第一歩です。