
(イラストはiStock)

日本の就職活動の歴史は、そのまま早期化の歴史でもあります。昭和初期に選考は大学卒業後に行うという「六社協定」が生まれてからもうすぐ100年になりますが、どの時代においても優秀な学生を早く採用したいという「青田買い」が問題視され続けてきました。ただ、いまは全体として早期化が進む一方で、早く動く学生と動かない学生の動きがはっきり分かれるという「二極化」も進んでいることに注目する必要があります。
『就職白書2026』(インディードリクルートパートナーズ)では、26卒学生の56.7%が早期選考(卒業年次前年3月=広報解禁時より前に行われる選考)に参加経験があり、企業側も少なくとも一部を早期選考から採用した企業は67.0%と多数派に達しています。ただし、早期選考の実施時期や参加方法を応募前に把握できていた学生は約半数にとどまり、さらに参加した早期選考のうち限られた学生のみがアクセス可能なルートで案内された選考の割合は59.3%に達しています。早期選考の多くが限られた学生にのみ実施時期や参加方法が案内されている状況がみえます。一方、学情の調査では27年卒学生の14.3%が3年生3月以降から就活を開始しており、これは26年卒(5.3%)から約3倍に増えています。早く動く学生とゆっくり動き出す学生がはっきり分かれるようになってきているのです。

一方で、そもそも「就活ってどこから始めるの?」という学生もいます。どれだけのキャリア教育が行われても、何から始めていいか分からないという学生が一定数いるのが現実です。以前はテレビニュースや新聞を通じてある程度の情報に触れられましたが、いまはスマートフォンのプッシュ通知に届くものがすべてという学生も少なくありません。人気企業ランキング上位にくる総合商社でも、その存在を知らない学生がいるのが現実です。こういった学生の情報感度の差は大学だけでなく、中高時代を含めた教育環境に大きく影響されていると感じます。
さらに、いまは大学ごとの就活支援、指導に対するスタンスの違いも目立っていると感じます。就活早期化が学業の邪魔になるということで就活情報を積極的に流さない大学もあれば、1~2年から会社説明会やインターンシップ紹介などをカリキュラムに組み込んで就活支援を行うようになっている大学もあり、大学のスタンスの差が学生の動き方に影響を与えている側面もあります。

そもそも本当に早期化によって学業にどれくらい影響があるか、データに基づいて考える必要があります。私の勤めている千葉商科大学では、35人程度が履修している3年秋の必修科目で、就活を理由に休む学生は週1~2人でした。むしろ就活してなくて大丈夫か? と思うくらいです。オンライン化が進んだことで、物理的な時間のロスが以前より大幅に減った影響もあると思います。
現在の学生は、時間とお金がふんだんにある層と、アルバイトに追われ奨学金を借りながら生活している層に二極化しています。後者の学生に「卒業してから就活しなさい」と言っても、それはハッピーな選択肢ではありません。現状の枠組みで、たとえば3年の夏休みを利用してサマーインターンに参加し、そこで内定を得る。そうすると内定はキャンセルも可能ですし、その後は学業に集中できるというメリットもあるわけです。早いか遅いかという時期の問題よりも、就活が学生にどれだけの負荷をかけるか、どれだけ学生生活を阻害するかについて実態をふまえて議論することが大切だと思います。
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