2026年09月17日

就活「早期化」の本質は「二極化」にある 情報格差時代を生き抜く方法とは? 常見陽平さんインタビュー【就活のキホン】

テーマ:就活のキホン

 人手不足のなか企業の人材確保競争が激しくなり、就職活動は年々早期化してきていると言われます。しかし働き方評論家で『日本の就活』の著書がある千葉商科大教授の常見陽平さんは、就活は全体的に早期化しているのではなく、早くから情報を集めて活動しているグループとそうでないグループに二極化しているのが現状だと分析しています。早期化の実態とは何か、なぜ二極化するのか、乗り遅れないためには何をすべきか――。多様化がすすみ見えづらくなっている就職活動を乗り切る方法をインタビューしました。(編集部・福井洋平)
(イラストはiStock)

早期選考、応募前に把握できていた学生は約半数

 日本の就職活動の歴史は、そのまま早期化の歴史でもあります。昭和初期に選考は大学卒業後に行うという「六社協定」が生まれてからもうすぐ100年になりますが、どの時代においても優秀な学生を早く採用したいという「青田買い」が問題視され続けてきました。ただ、いまは全体として早期化が進む一方で、早く動く学生と動かない学生の動きがはっきり分かれるという「二極化」も進んでいることに注目する必要があります。

『就職白書2026』(インディードリクルートパートナーズ)では、26卒学生の56.7%が早期選考(卒業年次前年3月=広報解禁時より前に行われる選考)に参加経験があり、企業側も少なくとも一部を早期選考から採用した企業は67.0%と多数派に達しています。ただし、早期選考の実施時期や参加方法を応募前に把握できていた学生は約半数にとどまり、さらに参加した早期選考のうち限られた学生のみがアクセス可能なルートで案内された選考の割合は59.3%に達しています。早期選考の多くが限られた学生にのみ実施時期や参加方法が案内されている状況がみえます。一方、学情の調査では27年卒学生の14.3%が3年生3月以降から就活を開始しており、これは26年卒(5.3%)から約3倍に増えています。早く動く学生とゆっくり動き出す学生がはっきり分かれるようになってきているのです。

優秀な学生ほど現状に危機感もち就活早める

(常見陽平さん=写真)
 就活生の動きの二極化は、大学、企業、学生それぞれの要因が絡み合って起こっていると考えられます。

 過去の調査から、いわゆる偏差値が高い大学の学生ほど就活のアクションを起こすタイミングも早いという傾向が指摘されています。企業側も情報発信にコストがかかるため、早く・多く動く学生が集まりやすい上位校にアプローチが集中します。上位校向けの就活サービスが浸透していることはそのあらわれと思います。

 なぜこういう傾向になるかですが、私は、いまは特に優秀な学生ほどいろいろな情報に接して、AIの進化や世界情勢の変化などを敏感に感じ取り、このままではいけないという危機感を強く持って就活を早く始めるようになっているのではないかと考えています。待遇のいい外資系コンサルタントや総合商社も人気が高いですが、私の周りではいわゆる「ブラック企業」と呼ばれるような会社も、自分を鍛えるためにはいい環境ということで優秀な学生が入社先に選んでしまうという傾向も出てきています。

大学ごとの就活へのスタンスの違いも目立つ

 一方で、そもそも「就活ってどこから始めるの?」という学生もいます。どれだけのキャリア教育が行われても、何から始めていいか分からないという学生が一定数いるのが現実です。以前はテレビニュースや新聞を通じてある程度の情報に触れられましたが、いまはスマートフォンのプッシュ通知に届くものがすべてという学生も少なくありません。人気企業ランキング上位にくる総合商社でも、その存在を知らない学生がいるのが現実です。こういった学生の情報感度の差は大学だけでなく、中高時代を含めた教育環境に大きく影響されていると感じます。

 さらに、いまは大学ごとの就活支援、指導に対するスタンスの違いも目立っていると感じます。就活早期化が学業の邪魔になるということで就活情報を積極的に流さない大学もあれば、1~2年から会社説明会やインターンシップ紹介などをカリキュラムに組み込んで就活支援を行うようになっている大学もあり、大学のスタンスの差が学生の動き方に影響を与えている側面もあります。

他大に通っている友人と情報交換を

 今の就職活動は情報チャネルもマッチングの手段も多様化し、誰がどういう就活をしているかがどんどんわかりにくくなっています。氷河期世代のように「就活が苦しい」という仲間意識を持つこともできません。だからこそ、自分が見ている就活だけが就活のすべてではないと気づくことが出発点です。

 情報格差を感じている就活生は悩みを一人で抱え込まず、大学のキャリアセンター、リアルで行われている合同説明会、先輩・友人からの情報収集など、複数のルートから情報を得ながら進めることが大切です。大学が提供しているプログラムやガイダンスにはぜひ素直に食らいついていってほしいですね。就職ナビの登録会があれば登録する。学内に講師が来て講演があれば参加する。学内企業セミナーではきちんと質問する。こうしたことを積み重ねていくと、納得感のある就活には十分たどり着けます。また、4年夏ごろまでは大手企業やその子会社などの追加募集が水面下で動いていて、大学に直接「内定枠がまだあるので1人紹介してくれないか」と言ってくることも少なくありません。キャリアセンターに足を運ぶことで、そういった情報にアクセスできることもあります。大学のリソースはぜひ活用してください。

 また、同じ大学の友人と話すだけでは、就活の多様な実態は見えてきません。高校時代の友人で、違う大学に通っている人5人に声をかけてみるといいかもしれません。他大に通っている友人に「最近就活どうなの?」とLINEで連絡を取るだけで、「うちの大学はもう動いているよ」という話が聞けることがあります。

 最近は就活エージェントを利用する学生も増えました。学生の希望や適性に沿ったマッチングをしてくれるという点ではよいサービスと考えていますが、いまはそういった希望などを無視してエージェント側の意向に沿った企業をおしつけてくるといったトラブルも多発しています。採用が決まったら企業側から報酬がでるというビジネスモデルのため、こういったトラブルが出てくることには注意が必要です。
(著書『日本の就活』(岩波書店))

早期化は本当に学業を阻害しているか、丁寧に検証必要

 そもそも本当に早期化によって学業にどれくらい影響があるか、データに基づいて考える必要があります。私の勤めている千葉商科大学では、35人程度が履修している3年秋の必修科目で、就活を理由に休む学生は週1~2人でした。むしろ就活してなくて大丈夫か? と思うくらいです。オンライン化が進んだことで、物理的な時間のロスが以前より大幅に減った影響もあると思います。

 現在の学生は、時間とお金がふんだんにある層と、アルバイトに追われ奨学金を借りながら生活している層に二極化しています。後者の学生に「卒業してから就活しなさい」と言っても、それはハッピーな選択肢ではありません。現状の枠組みで、たとえば3年の夏休みを利用してサマーインターンに参加し、そこで内定を得る。そうすると内定はキャンセルも可能ですし、その後は学業に集中できるというメリットもあるわけです。早いか遅いかという時期の問題よりも、就活が学生にどれだけの負荷をかけるか、どれだけ学生生活を阻害するかについて実態をふまえて議論することが大切だと思います。

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