企業の人材確保競争が激しくなるなか、就職活動の「早期化」が進んでいます。学生はどのように就活に臨めばよいのか。学情キャリアサポート部の萩原聡士(はぎわら・さとし)さんに近年の就活事情と対策、学生時代の過ごし方を聞きました。就活生の保護者も必読のインタビューです。(編集部・福井洋平)
(朝日新聞7月7日朝刊記事に追加情報を加えて再構成)
採用活動早くなっていることを知って行動を

今後も、企業が学生を積極的に確保しようとする流れは続くとみています。ただ、学生からの応募は大手志向や安定志向の影響で一部の企業に集中しているため、大手だけを受けている学生は、売り手市場といえども内定が決まらない状態となっています。一方で新卒学生を採用しきれない企業は、弊社の20代向け転職サイト「Re就活」といった媒体を使い、学生だけでなく第二新卒などの20代全体を採用対象とし始めていることにも注意が必要です。
――就活は「早期化」も進んでいます。就活生はどう対応すればいいでしょうか。
企業の採用競争が激しくなるなか、早期化の流れは止められなくなっています。4年生から就活をはじめてもいいと思いますが、就活の現状、企業や社会の情報を何もいれないまま時間を過ごしてしまうのはよくありません。一部の大手企業も含め多くの企業が採用活動を早めているという現状を知ったうえで、いつ就活を始めるか、自分で考えて決めることが大切です。
数社見ただけでやりたいことはわからない
――いま、就活生はどういった悩みを持っているのでしょうか。
最も多いのは、「何をいつやればいいかわからない」という声です。かつてはエントリーシート(ES)を書く時期、面接練習をする時期、と全員がほぼ同じタイミングで動いていましたが、いまはインターンシップが浸透するなど就活の進み方が多様化し、何をいつすべきか、個々の学生が自分で判断しなければならない時代になっているのです。適切な情報収集が大切と感じます。
――就活のときに「やりたいことが見つからない」という学生も多いそうですね。
その根本的な原因は、ネットの情報を見ただけで知った気になってしまい、実際に企業や業界を知る機会を活用する機会が減り、選択肢が少ないことにあります。日本には約400万社も企業があるのに、数社見ただけでやりたいことがわからないと悩むのは当然だと思います。まずは広く企業を知る時間をつくり、その中から自分に合う企業、合わない企業を見つけ、合う理由、合わない理由を言葉で説明できるようにしていくこと。それが就活において自己分析と企業研究を深める「時間のかかる最短ルート」です。視野を広げるため、「Re就活キャンパス」や各大学などが開催する合同説明会といったリアルなイベントに出向き、思いがけない企業との「偶然の出会い」を積み重ねることも大切だと思います。
一方で、売り手市場で内定を獲得しやすい環境のため、「本当にこの会社でいいのか」と悩んでしまうケースもあります。内定獲得をゴールにするのではなく、インターンシップ(就業体験)などを通じ企業や仕事内容をちゃんと理解したうえで、入社したらどうなっていきたいかという未来を見据え、自分の進路を考えてほしいと思います。
社会への関心を持って

特別なことは必要ありません。大学時代だからこそ感じられること、感性を働かせられることは、たくさんあると思います。その時期を大切にして、さまざまな経験を積んでほしいです。アルバイト、サークル、部活、学業、何でもいいので目的意識を持って全力で取り組み、そこから得た経験を自分の言葉で振り返る習慣を身につけることが大切です。その積み重ねが、AI時代だからこそ問われる機械に変えられない人間力の土台になります。
また、社会への関心を持つことも欠かせません。金利の動向を知らない、シャンプー1本の値段がわからない、そうした社会的な常識が欠けていると、グループディスカッションや面接での会話の質が下がってしまいます。ニュースを見る習慣、家族と社会の話題について話し合う習慣が、就活の場で確かな差となって表れます。社会に出てすぐ通用する人材になるためにも、ぜひニュースをチェックする習慣を身につけてください。
保護者は過干渉も無関心もダメ
――就活生の保護者が気をつけるポイントはありますか。
保護者の方から「いま売り手市場だよ」という言葉を聞いて安心してしまい、就活のスタートが遅くなってしまった、という学生の声も聞きます。保護者の方にはまず就職活動の現状、トレンドを知ってほしいと思います。たとえばいまの就職人気企業ランキングは、保護者の方の時代とはかなり違います。また、インターンシップ等への参加が企業の選考へ繋がっていくといった、スケジュールや手法にも変化があります。
過干渉も、無関心すぎるのもよくありません。子どもの話を否定せずに聞き、時にはアドバイスするなどして、子どもが自分で考え自己決定できる環境を整えることが大切だと思います。また、社会の話題について話し合ったりして、関心を高めるサポートをしてあげてほしいと思います。
AI普及でグルディスや動画選考増える
――就活にAIは欠かせなくなりました。
AI活用については、学生の意識の変化が顕著です。生成AIの使い方を扱う講座を開いても、今の学生は「AIを使うのは当たり前」と感じており、関心を示さなくなっています。問題は、AIで「きれいなエントリーシート」を作成して提出してしまうケースが増えていることです。面接で少し掘り下げられると、書いた内容を自分の言葉で説明できず、人間力の底が見えてしまう。だからいま企業側は、人間力を直接見るためのグループディスカッションや動画選考を増やしているのです。
AIに答えを出させず、「なぜこの答えに至ったのか、その意図や経緯を教えて」と問いかけ、思考の過程を自分自身が理解するための補助として活用することです。AIで表面を作っても、それを支える自分の経験と思考がなければ、面接では通用しません。AIはあくまでツール、判断するのは自分ということを忘れないようにしてください。
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