人事のホンネ

エイチ・アイ・エス(H.I.S.)

2021シーズン【第3回 エイチ・アイ・エス(H.I.S.)】(後編)
手書きESで旅や社への想いがわかる 旅行で世界平和めざす会社

本社人事本部 採用・人材開発グループ 採用チーム チームリーダー 杉浦孝範(すぎうら・たかのり)さん

2019年09月25日

 人気企業の採用担当者にインタビューする「人事のホンネ」2021シーズン第3弾、エイチ・アイ・エス(H.I.S.)の後編です。エントリーシート(ES)に志望動機欄はありませんが、旅行のエピソードから熱い想いを感じ取るそうです。旅行で人が行き来すると相互理解が深まって平和につながる。だから、「旅行は平和産業」だといいます。なるほどですね。本気で「世界平和」を語る会社でもあります。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

■手書き
 ──ESに「あなたにしかできない、H.I.S.で挑戦(実現)したいオンリーワンの商品(または事業)を提案してください」という欄があります。「商品」はBtoCで、「事業」はBtoBですか。
 そうですね。ここで見たいのはストーリーです。前問からの続きで、ここにつながるエピソードがあるはず。かつエイチ・アイ・エスのことを知っていないと商品の提案はできません。発想力、想像力、企画力、論理性が必要ですね。
 ESはWEB入力ですが、ここだけは手書きで、字の特徴、書き方、雑さも見ます。人間性が出ます。絵や写真を使う学生もいれば、字だけずらっと書く学生、2行で終わる学生もいます。

 ──ここで差がつきますね。
 ここの作り方で旅やエイチ・アイ・エスへの想いを感じとれます。面接で聞くと、「1週間考え抜いて書いた」という学生がいる一方、20~30分でパッとつくったとわかるものもあります。
 「野球しかやってこなかったから、野球で世界をつなげたい。目標はダルビッシュ選手とキャッチボールをすること」と書いてきた学生がいました。英語がだめでもキャッチボールで人とつながれるかを試し、本当にダルビッシュさんとキャッチボールした写真が添えられていました。

 ──それでも商品の提案になりますか。
 「キャッチボールで世界をつなげる」という旅になります。「自分×エイチ・アイ・エス」なので、ヒット商品を書くわけではなく、自分にしかできないこと、大切にしていることを書いてもらえればと思います。

 ──ESの3大テーマといわれる「自己PR」「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)「志望動機」が一つもないですね。
 志望動機で月並みなことを書かれ、面接で覚えてきたことを言われても、お互い時間がもったいない。もっと根っこの部分にしっかりしたものを持っているかどうかが入社後の活躍につながると思います。

 ──英語力は重視しますか。
 英語力はあるに越したことはありませんが、なくて落ちることはありません。もちろん「TOEIC900点」と書いてあれば、その取り組みや努力は評価します。

■面接
 ──面接はどんな内容ですか。
 グローバルコースもリージョナルコースも2~3回です。地区によって違いますが、学生2人に面接官1人のグループ面接が多い。他者のやりとりを傾聴できるか見るためです。「自分が、自分が」と発言するが他人の発言のときボーッとしている学生は、お客様の話をちゃんと聞けない傾向があります。我々の仕事には、自己PRがうまいだけでなく、全体の様子を見て察知する能力も必要です。時間は30分くらい。

 ──重視するポイントは。
 評価ポイントはステップごとに違います。総合職の1次面接ではエイチ・アイ・エスの社員のDNAを持っているかどうかを見ます。細胞一致率というか、「チャレンジ」「明るさ」「元気さ」といったDNAですね。2次になると、ビジネスリーダーとしての素養や、他者を巻き込めるか、グローバル性も見ます。リージョナルコースの面接はホスピタリティーや傾聴力が大事です。
 面接では学生生活や今まで生きてきたストーリーも出てくるので、本当に頑張ったことを自分の言葉で話せるか、自分と向き合って解決したかを聞き、課題に対して自ら動いたかを判断します。
 志望動機も選考が進む中では当然聞くし、身だしなみも見ます。

 ──旅行会社は世界情勢がビジネスに直結します。面接でニュースについて聞きますか。
 世界目線というか視座を高くしてもらいたいので、話の流れで世界情勢の気になることなどを聞くことがあります。

副業解禁、卒業→海外→入社もOKの「入社月選択制度」

■働き方
 ──働き方改革を進めていると聞きました。現状は?
 残業はかなり減りました。業務によってはフレックスタイムを導入し、予定をしっかり立てて時間をコントロールして仕事するようになりました。働く時間は7割くらいになったと思います。それぞれが成果を出せばよく、「9時~5時まで会社にいなくてはいけない」ということがなくなりました。店舗ではラストオーダー制を導入して、最後のオーダーを30分前、電話は1時間前とするなど、残業が発生しないようにしています。

 ──離職率は?
 社内環境を整えてきた成果も出始め、改善してきています。ほかにも、「副業解禁」「リモートワーク」「リエントリー(退職した社員の受け入れ)」「時短勤務」の四つの「働き方改革」をしました。副業解禁は、他社に雇用されるのは禁止ですが、たとえばツアーコンダクターに登録し外国人のアテンドをして語学力を伸ばす人、チアリーディングのコーチをする人、カメラの技術力をいかしてフリー素材をつくる人もいます。普段の仕事では会えない人に出会って人間関係を築き、自分の価値を広げてもらいたいと思っています。

 ──「入社月選択制度」があるそうですね。
 卒業半年後の10月1日入社でもいいし、1年後の4月1日でもいい。学生時代の海外留学だけではあきたらず、海外で働いたり、海外ボランティアなどで何か成果を残したりして、その後の旅行事業にダイレクトに役立てたいという学生がいるからです。
 社内選考があり、計画書を書いてプレゼンしてもらいます。半年間、家で寝ているのはダメ。「この経験をしたら違う価値を持って戻ってきてくれるだろう」と判断した人が制度を利用できます。これまで、世界一周をしたり、海外支店でインターンを経験したり、ライフセーバーとして世界で活躍している人がいました。全国で年に十数人程度です。

 ──採用で競合する会社は?
 BtoCだと旅行会社はもちろんですが、航空会社、空港で働きたいという学生もいます。BtoBはメーカーや総合商社などですね。リージョナル職志望の学生だと、地元の地銀や信用金庫、地元のメーカーもあります。