人事のホンネ

YKKグループ

2020シーズン【第3回 YKKグループ】(後編)
求めるのは「有言実行」できる人 富山での研修は必須

人事部ファスニング人事グループ 東京人材開発チーム採用リーダー 谷本徹(たにもと・とおる)さん

2018年10月04日

 「人事のホンネ」2020シーズン第3弾、YKKグループの後編です。YKKは東日本大震災の後、リスク分散のために東京・秋葉原の本社から一部機能を富山県黒部市に移転しました。全員が少なくとも8カ月から1年間は富山で研修を受けます。学生の反応は?(編集長・木之本敬介)
前編はこちら)

■英語力
 ──ここからは、谷本さんが担当されるYKKの事務系についてうかがいます。YKKは海外メインのグローバル企業です。採用試験で英語力はどの程度重視しますか。
 YKK事務系の場合、海外赴任の可能性は高いのですが、TOEICやTOEFLはそれほど重視していません。それよりも、異文化を受け入れる力がある方、現地でタフに働ける方かを重視します。

 ──YKK事務系志望者のうち、海外志向の人の割合は?
 ほとんどが海外志望です。重視しないとはいえ、TOEIC800点以上の人も多いので、こちらがドキドキします(笑)。ただ、やはり「仕事ができて、語学ができる」が一番です。海外では日常会話をしてきてほしいわけではなく、仕事をしてほしいのですから。また、「資格・特技」欄に、「スペイン語ができます」「スワヒリ語ができます」「中国語検定○級」などとあると、インパクトがありますね。
 とはいえ語学力がすべてではなく、たとえば上下関係がしっかりしている体育会系の学生も評価します。マイナースポーツを大学で始めて全国大会に行った人、国公立大学でメジャースポーツをしている人、頑張って取り組んでいれば強豪校である必要はありません。

 ──適性検査では何を見ますか。
 能力値に加え、性格面も見て判断しています。海外赴任があるので、ストレス耐性が低い人は厳しい。過去の優秀層の統計からつくった指標も参考にします。

■面接
 ──YKK事務系の面接の形式は?
 1次面接は1対1、2次面接が2対2、執行役員が担当する最終面接は複数対学生1人です。

 ──それぞれの面接のポイントは?
 1次は30代で部下のいる社員に「一緒に働きたい人か」「チャレンジ精神があるか」を見てもらい、専門性はあまり重視しません。評価項目を決めて点数制にしています。
 2次はグループ長クラスが「組織の一員になれるか」を見ます。営業系と管理系の面接官がペアで面接するので、どの業務に興味があるかを聞きます。あとは周囲との関係性、関係構築ができるかどうかをメインで見ます。

 ──最終面接は?
 最終は営業部門から複数名(販売部門、営業部門責任者)、管理部門から複数名(人事部長と各部門長)で、学生からは「TVドラマで見る役員面接のように人数が多かった」と言われます(笑)。
 各部門の役員が面接に参加することで、後から「採ったのは誰だ?」とは言われません(笑)。役員もみんなで一体となり、採用に関わってもらっています。

学生時代の経験から思慮深さ、計画性、責任感掘り下げる

■富山の拠点
 ──東日本大震災後、総務・人事などの本社機能の一部を富山県黒部市に移しましたね。学生の反応は?
 事務系は、営業・管理どちらの新入社員も、入社式の後、そのまま8カ月から1年間は富山で研修します。メーカー社員として、実際のものづくりを体感してもらうこと、現場に入り込むことを重視しています。とはいえ、以前は「入社式で初めて富山に行く」という人が多く、なかなかの田舎ぶりに引いてしまい、早期に辞めてしまう人もいました。ここ数年は「どうせなら入社前に確認してもらおう」と思って、内定者(未承諾者を含む)に内定直後に富山を見学してもらい、工場や寮の見学に加え、「ここで数カ月生活できるか」という観点での確認を促しています。中には、この段階で辞退する学生もいますが、入社直後に退職するよりはお互いにとってよいのでは、と考えています。

 ──管理部門は、研修の後も富山勤務ですか。
 東京本社にも人事、経理、情報システムの機能はありますが、規模は富山の方が大きく、新入社員は富山配属です。管理系の内定者には「あなたたちはお客さんじゃなくて、2年目以降はここで働くんだよ」と理解してもらいます。新幹線がないころは、最寄り駅を見せただけでみんな泣きそうになっていましたが(笑)、今は駅前にも寮のそばにもコンビニがあるし北陸新幹線の駅もできましたので、我々からするとものすごい進歩なんですが(笑)、首都圏しか知らない人には衝撃かもしれません。

 ──ずっと富山勤務?
 いえ、海外に出ます。東京勤務より先に海外に行くケースが多いですね。
 営業系は、研修終了後は東京勤務者が7割以上となりますが、次の勤務地が海外、というケースが多いですね。

■求める人材
 ──採用HPの求める人物像に「声の大きさ」とあります。
 先ほどの話ではないですが、体育会ならいい、ということではありません。地声の大きさや発言力のある人と誤解されることもありますが、逆に「発言だけの人物」は求めておらず、発言したことに責任を持って有言実行できる人、また発言の裏付けを持っている人を求めています。とりあえず「やります」じゃなく、ちゃんと根拠があって「やります」と言ってほしい、そういう人を求めています

 ──面接でどうやって判断しますか。
 思慮深さを持って活動しているか、計画性の有無、責任感があるかを見ています。学生時代の経験は、「サークルの○○長でした」「アルバイトのリーダーでした」と、一見すると書かれていることはみなさん大体一緒です(笑)。それに対し「そこで具体的な役割は? どのように考えて行動していたの?」と深掘りをします。ある意味、話を盛っている人は、その後の話が続かず、ということもあるので、面接官による掘下げが肝となっていると考えています。そのため、面接官教育をしっかり行えば、本当に欲しい人材か判断できると信じています。

 ──「働き方」への取り組みは?
 女性が働きやすい会社だと思います。育児休業や短時間勤務は当然ですが、富山の社宅には自社運営の保育園もあります。平均勤続年数は男女ほぼ同じ、女性のほうが長くて約20年。富山県は共働きが一番多い県でもあります。もちろん、男性の働き方も変わってきています。