2027年卒の大卒・院卒採用人数を、前年から75%減らすと公表した機械メーカーのクボタ。事業計画見直しのなかで、これまで採用した人数で「充足」したと判断し、採用数の大幅削減に踏み切りました。厳選採用にかじを切る中、採用担当者が学生のインターンシップ経験よりも重視するポイントとは? 「Will」よりも「Can」を重視する会社選びとは? 今後の採用方針、求める人材像、就活生へのアドバイスまでじっくりインタビューしました。(編集長・福井洋平)
クボタ
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【人事のホンネ 特別編】大卒新卒採用「75%減」の理由は? 今後の方針、どういう人材にきて欲しい? クボタにとことん聞きました
HR本部 人財開発部長 谷口慶太(たにぐち・けいた)さん
2026年06月17日
2027年卒の大卒・院卒採用人数を、前年から75%減らすと公表した機械メーカーのクボタ。事業計画見直しのなかで、これまで採用した人数で「充足」したと判断し、採用数の大幅削減に踏み切りました。厳選採用にかじを切る中、採用担当者が学生のインターンシップ経験よりも重視するポイントとは? 「Will」よりも「Can」を重視する会社選びとは? 今後の採用方針、求める人材像、就活生へのアドバイスまでじっくりインタビューしました。(編集長・福井洋平)
積極採用してきた人材のアウトプット伸び、新規抑制可能に
■採用抑制の理由
――2027年卒(2027年4月入社)の採用計画について、大卒・院卒の採用数を前年度から大きく減らすと公表されました。
プレスリリースで公表している大卒・院卒の採用数は、全体で60人です。2026年4月入社は約240人なので、前年比で75%減という計画です。リーマンショック期でもここまで絞ったことはありません。ただ、これは長期的な方向転換を示すものではなく、あくまでこの単年の入社をどうするかという判断での数字です。
――なぜ、新卒採用を抑制されるのですか。
弊社では2021年から、クボタが果たすべき役割とグループ全体での取り組み方針を示す「GMB2030」という長期ビジョンをスタートさせており、前半5カ年が2025年で一区切りとなりました。この前半期は一言で言えば「拡大期」で、事業の拡大に伴って、新卒採用もキャリア採用もかなり積極的に進めました。結果として事業目標も達成でき、年によっては新卒で300名、キャリア採用で400名以上が入社するという、当社としては過去最高水準の規模になった年もありました。
ただ、これからの後半5カ年は少し異なるフェーズになると見込んでいます。2026年2月に公表した中期経営計画とあわせ、後半の5カ年で経営の重点をどこに置くかを整理した結果、事業を「成長牽引事業」「価値再構築事業」「構造改革事業」の3つに整理し直しました。
前半5カ年で積極採用してきた人材が実力をつけ、アウトプットが1.2倍、1.5倍と伸びてきています。具体的にこの事業で人材がいらなくなったということはないのですが、既存の人材で業務を回しながら、社内の流動化によって成長牽引事業に必要な人員を補える見通しが立ったため、新規採用をいったん抑制しても成り立つ、と考えました。「採用がある程度充足した」状況ととらえています。
――2027年卒(2027年4月入社)の採用計画について、大卒・院卒の採用数を前年度から大きく減らすと公表されました。
プレスリリースで公表している大卒・院卒の採用数は、全体で60人です。2026年4月入社は約240人なので、前年比で75%減という計画です。リーマンショック期でもここまで絞ったことはありません。ただ、これは長期的な方向転換を示すものではなく、あくまでこの単年の入社をどうするかという判断での数字です。
――なぜ、新卒採用を抑制されるのですか。
弊社では2021年から、クボタが果たすべき役割とグループ全体での取り組み方針を示す「GMB2030」という長期ビジョンをスタートさせており、前半5カ年が2025年で一区切りとなりました。この前半期は一言で言えば「拡大期」で、事業の拡大に伴って、新卒採用もキャリア採用もかなり積極的に進めました。結果として事業目標も達成でき、年によっては新卒で300名、キャリア採用で400名以上が入社するという、当社としては過去最高水準の規模になった年もありました。
ただ、これからの後半5カ年は少し異なるフェーズになると見込んでいます。2026年2月に公表した中期経営計画とあわせ、後半の5カ年で経営の重点をどこに置くかを整理した結果、事業を「成長牽引事業」「価値再構築事業」「構造改革事業」の3つに整理し直しました。
前半5カ年で積極採用してきた人材が実力をつけ、アウトプットが1.2倍、1.5倍と伸びてきています。具体的にこの事業で人材がいらなくなったということはないのですが、既存の人材で業務を回しながら、社内の流動化によって成長牽引事業に必要な人員を補える見通しが立ったため、新規採用をいったん抑制しても成り立つ、と考えました。「採用がある程度充足した」状況ととらえています。
採用は人的リソース課題解決の最後の手段
■高卒現業職の採用維持――大卒・院卒採用を大幅に減らす一方、高卒・高専卒(技能系)採用数は維持されています。
高卒・高専卒の現業職(テクニカル社員)については、27年卒についても年間200人ほどの新卒採用を継続する予定です。国内生産を大幅に縮小する方針はなく、65歳定年による人員の自然減に対応するため、定期的に一定数の補充は欠かせません。年齢構成のバランスを見ながら、断絶が生じないよう採用を続けているということです。
一方で総合職は、前半5カ年の成長フェーズで事業拡大に合わせて増やしてきた部分が大きく、その拡大ペースが一段落した今、採用を絞っても問題ない状況になったと考えています。
■HRBPとは
――今年から導入されたHRBP(HRビジネスパートナー)とはどのような仕組みですか。
HRBPは、事業部長の右腕として人事の切り口から経営課題を一緒に考え解決していく役割です。例えば、これまでは事業部が積み上げた採用要望数を人事が精査して採用計画をつくっていましたが、会社の成長局面では「事業量が増えているのだから人員も増やしていいだろう」というおおざっぱな追認になりがちでした。新設したHRBPを通じ、採用は人的リソースの課題を解決するための最後の手段であるという考え方に基づいて、採用人数の精査をより厳しくする仕組みに変えています。
今後は建機、インド発事業分野に注力
■改革する分野、成長牽引分野――今後、成長を牽引する事業として挙げているのはどの分野ですか。
主に建設機械(建機)事業と、インドを起点とした「インド発」事業の2つです。建機については、都市型の小型建設機械の分野で国内のインフラ整備、欧州や北米など世界の都市整備に貢献しています。各国・地域のニーズに合わせた製品開発が評価をいただいており、この分野での成長を引き続き見込んでいます。
インド事業については、現地トラクターメーカーのエスコーツ社をグループ化し、同社が持つ「ファームトラック」「パワートラック」ブランドにクボタブランドを加えた3ブランド体制で展開しています。インドは年間100万台のトラクターが売れる世界最大市場です。インド国内のシェア拡大に加え、アジア、アフリカ、欧州への足がかりとしても活用したいという意味で「インド発(はつ)事業」と呼んでいます。
――一方で、「構造改革事業」に分類されたのはどの分野ですか。
たとえば、ヨーロッパで展開している農業機械(農機)事業です。当初の目論見どおりに欧州農業市場へ浸透することがなかなかできていないという意味で、立て直しが必要な局面と考えています。
■グローバル展開の歴史
――御社は海外売上比率が約8割というグローバル企業ですが、どのように海外売上をあげていかれたのですか。
私たちの事業は大別して農機や建機などの機械事業と、水道関連や下水・廃棄物処理などのインフラを整備する水環境事業があります。クボタは今、売上の約8割を海外で稼ぐ会社になっていますが、いち早く海外にも積極的に進出し、長い時間をかけて「世界のニーズに合わせたビジネス」を広げてきた結果です。ただ製品を輸出するだけでなく、現地で生産・販売・サービスを行う体制を整え、その国の人たちが本当に使いやすい製品を提供してきました。農業機械だけでなく、建設機械、水道インフラや水処理など「生活に欠かせない分野」で、世界中で安定して需要を取り込むことができました。
日本では農業機械として田んぼで活躍しているトラクターですが、北米では日本のトラクターはコンパクトなサイズなので、広大な庭の整備に用いられます。北米は郊外に住宅を構え、自分の土地は自分でメンテナンスするというDIY文化が根づいていて、そこに当社の製品も組み込まれていきました。近年ではコロナ禍の巣ごもり需要がそうしたトラクターの売れ行きを一段と押し上げたこともあり、この5カ年では北米が全体売上の4割を超える最大市場となっています。
できるだけバラエティーに富んだ人材を
■2028年度卒以降の見通し――今後の採用計画はどうなりますか。
2028年度卒以降の数字はまだ決まっていません。今年の上半期で社内の人材流動化をどこまで進められるかを見極めながら、年内に方針を決めていく予定です。ずっと60人という規模になるとは思っていませんが、前半5カ年の最大300人近い水準に戻ることもなく、その間のいずれかの水準に落ち着くのではという見通しです。
――採用計画を決めるにあたって、AIの影響はありますか?
反復定型業務をAIや自動化で置き換える取り組みは継続していますが、その効果が採用数の削減に直接つながるレベルにはまだ達していないというのが現状です。
■エンジニア職
――今年の採用で、特に重視している職種はありますか。
エンジニア職の採用は全体の半分以上を占めます。また、研究開発職だけではなくより製造現場に近いところで事業を支える職種も含み、生産技術、製造スタッフ、品質保証、製品法規、知的財産、水環境事業のプラントエンジニア(設計開発・施工管理)や、財務経理といった職種があります。こうした職種については職種別採用の枠を設け、5日間のインターンシップで実際の職場メンバーと共に働いてもらったうえで応募を判断してもらう流れを設けています。なおインターンシップについては、事務系についても5日間のプログラムを実施する予定です。
■採用フロー
――職種別採用と通常採用では、選考方法は違いますか。
選考フローそのものは、書類選考→1次面接→最終面接の3段階で変わりません。今年の方針としては、書類だけでは見えない部分があると考えて極力絞らず、できる限り実際にお会いする機会を作るようにしています。
――採用数を絞ったことで、選考方法に変化はありますか?
人数を絞ったとしても、できるだけバラエティーに富んだ人材が欲しいという要請があり、方法を検討しているところです。応募者についてはむしろ大学名を問わずすべての方の書類を確認し、特定層の大学に偏らないように選考を進めています。これまでご縁のなかった大学の応募者の中にもフィットする人材がいるかもしれないと考えています。
従来とは違う人材にもきて欲しい
■選考基準――逆に、どういう基準で応募者を絞り込んでいくのですか。
求める人材像としては「チャレンジ精神」「粘り強さ」「チームワーク」の3点を挙げています。プラスして、私は会社と方向性が一致しているかという点も大切だと思っています。能力とやる気があっても方向性、つまりこの会社で自分がどう在りたいかという価値観の向きが合わなければ、掛け算でゼロになってしまうという感覚があります。
ただ私たちは、新卒の方でもこれまでのクボタにないものを持ち込んでほしい、今までのクボタにいないタイプの人も採用したいとも考えています。金太郎飴のような採用にしたくないという思いもあるので、ここは本当に気をつかって判断したいポイントです。最終面接は1人の役員がゴーサインを出す形ではなく、複数の面接官がチームを組んで合議で判断しています。「チャレンジする姿勢がいい」「研究をしっかり頑張っているところがいい」など、多様な視点から評価するようにしています。
――いま「従来とは違う人材」を求めているのはなぜですか。
中期経営計画の課題として「新しいビジネスが創出できていない」という点を明確に挙げています。弊社社長の花田晋吾も「探索」を今年のキーワードとして掲げており、既存の従業員も変わらなければならないし、それをドライブしてくれる人材に来てほしいというメッセージを発信しています。
そういう人材にリーチする方法として、ダイレクトスカウトも検討しています。自分で目標を設定し、それを達成するために周囲の人を組織化して動かした経験を持つ人がスカウトの候補になるでしょう。
Will=やりたいことにこだわらず、Can=できることを伸ばせる選択を
■大学時代に経験してほしいこと――就活生のみなさんに、どのような経験をしてきてほしいという要望はありますか。
採用する側として常に気をつけているのは、「面接の日に成熟度が数カ月先行しているだけの人材」を採ってしまわないかという点です。当社は長期育成を前提にしています。5年後、15年後の本当のリーダーを育てるという視点では、成長ポテンシャルをしっかり見ることが大切で、面接時点で光って見えるだけの学生を採っても意味がありません。
長期インターンシップを経験するとプレゼン力や面接力が鍛えられ、就活に対する慣れがうまれると思います。ただ弊社では、それだけを積極的に高評価するスタンスはとっていません。それよりも、部活動、学内組織、アルバイトやNPOなどで自ら組織を動かした経験のほうが、ポテンシャルの証拠として重みを持つと考えています。学生のみなさんには、インターンシップなどで就職活動に受かるためのキーワードを追い求めるより、自分から動き周囲を動かす体験をたくさん積んでほしいと思います。
■就活生へのアドバイス
――就職活動中の学生に向けて伝えたいことはありますか。
自分のキャリアを選択するにあたって、「Will・Can・Must」(やりたいこと・できること・求められること)の3つが重なる領域の仕事を探すという考え方はよく知られています。ただ、Will偏重で「自分は何をやりたいのか」に向き合いすぎると、かえってハッピーな仕事に出会いにくくなると私は思っています。
どんなにこのジョブをしたいという強いWillがあっても、お客様がそのジョブをやってほしいと求めてもらう=Mustの要素がなければ、そのジョブは存在しません。一方で、自分ができること=Canの要素を増やしていけば、いつかお客様から求められる=Mustの領域と重なるところが増え、やがてWill・Can・Mustの3つが重なるハッピーな仕事に行き着くのではないか、と私は思います。すぐにWillを実現できるような会社を探すのではなく、自分のCanを増やせるのはどこか、という観点で会社を選ぶのもよいのではないでしょうか。クボタは、来ていただければ自分のCanを伸ばす分野を何かしら見つけられる懐の深い会社だと思いますね。
利己的な人が少ない会社
■意識してほしいこと――企業に選ばれる人材になるために、学生は何を意識すればよいですか。
「しなやかさ」だと思います。変化し続けるMustに対応していく人材として長期に育成していきたいので、入社後も変化し続けてほしいですね。「本当の自分」を早期に固めるより、環境に順応しながらしなやかに変化し成長できることのほうが大切です。
これは「問いを持ち続けられる力」とも重なります。社会に出ると答えはなく、あるのは問いだけです。研修の場では「すっきり」して帰るだけでは不十分で、「モヤモヤ」も持ち帰ることが出来た方が成功だと考えています。「すっきり」した答えは、帰りの電車に乗っている内に忘れてしまいますが、問いには持続性があり、一旦の答えを見出したと同時に、新たな問いを導けることが、更なる成長に繋がります。
また、ニュースを定点で取り込む習慣も重要です。AIは打ち込んだ瞬間に答えを出してくれますが、その答えが本当に正しいか見極めるには、人間が定期的にリアルタイムの情報を自分で取り込んでいる必要があります。できれば自分の関心時以外の情報も取り込めるよう、紙の新聞を広げて読む習慣が大事だと思いますね。論理的で誰が読んでも解釈のブレない文章を書く力も培われます。
■クボタのアピールポイント
――就活生に向けて、クボタのアピールポイントをお願いします。
あまり利己的な人がいない会社だと思います。「食料・水・環境」という社会課題の解決に事業の軸を置いているので、世のため人のためという意識で入ってくる社員が多い会社です。自分だけが派手にパフォーマンスを上げるよりも、チームの中で力を発揮したいという人のほうがフィットする会社だと思います。先日新入社員の1人が研修の報告書で、研修でチームを組んだ新入社員全員が他人のために何かすることに喜びを感じるということがわかり、とてもうれしかったと書いていたんですね。やっぱり、そういう人が集まる会社なんだなと思いました。
クボタ
【機械メーカー】








