
■営業手法
──「そもそもトイレを使っていない」という文化の中に入っていって、どうやって啓発していくのですか。
下條 そこが、私たちがNGOや国際機関の皆さまと組む理由です。いきなり見ず知らずの者がトイレの啓発をしても、なかなか話を聞いてくれません。他方で、NGOや国際機関の方々は、毎週このコミュニティーに顔を出して人間関係ができています。私たちはそうしたNGOや国際機関の方々に対して「皆さまが支援されている住民の人々の衛生環境を改善するために、一緒に取り組みを進めていきましょう」と提案していくというのが、1つ目のステップです。そしてNGOや国際機関の方々と同意した上で、次のステップとして村に入っていきます。
──NGOや国際機関の方々とはどうやってつながるのですか?
下條 オンラインで調べたり、メールを打ってアプローチをしたり、既に連携している団体から紹介されることもあれば、日系NGOの日本オフィスにうかがったうえで現地事務所を紹介してもらうような流れもあります。近年の世界情勢もあってか連携を実現させるまでが大変で、フィリピンは3年活動していますが、連携が動き出しているのはまだ1社だけです。
──現地の反応はどうですか。
下條 「何でそれが大事なの?」と言われます。例えば、フィリピンで売っているSATOトイレは日本円で数千円ぐらいなのですが、ある方は自宅にトイレはないけど、1万5000円の携帯電話を持っていたりします。その地域では「トイレで用を足す」という習慣がまだまだ定着していないためか、身近でないトイレに対して購買意欲を持っていただくことが難しい現状です。
──どういうところにポイントを置いて営業されていますか。
下條 キーパーソンになる人との信頼関係をしっかり築いて、その方に「衛生的な環境が大切である」というころに納得・同意いただくことが一番大切だと思います。
──これまでの3年間で、一番心に残ったのはどういう営業でしたか?
下條 win-winの関係性を築くことが必要なので、販売高に応じてインセンティブを設けました。ただ「地域の衛生環境が良くなる」とだけを説くのではなく、実際に販売してくださる各地の皆さまにとって、「ビジネス」として収益を得られるレベルまで成長させることが重要です。各地域ごとの事情や希望、ニーズを踏まえながら「営業支援策」をゼロから考え出した経験が、今でも役に立っていると感じています。
──トイレを使ったら、その良さは分かってもらえるものですか?
下條 はい。フィードバックは非常に良いです。従来のトイレは5リットルぐらいの水を1回に使用しますが、SATOトイレを使うと1リットル未満で流せるというのは、生活に非常に大きなインパクトを与えています。また、臭わなくなった、ハエがいなくなったという声も聞きます。
インドネシアではトイレの下からヘビが出ることもあるようです。弁があることで、下からヘビが来ない、虫も出ないというのは大きな生活の変化だったそうです。
山田 お年寄りやハンディキャップを持った方々もいるわけで、安全で、臭いもなく、安心して用を足せるトイレというのは、本当に人間の基本的な尊厳に関わる大事な商品だなと感じています。