SDGsに貢献する仕事

伊藤園

  • 飢餓をゼロに
  • すべての人に健康と福祉を
  • つくる責任 つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を

伊藤園〈前編〉データを「ストーリー」として伝えていく【SDGsに貢献する仕事】

2026年04月30日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」。第33回は「お~いお茶」ブランドで知られるお茶飲料業界のパイオニア、伊藤園が登場します。サステナブルという言葉ができるはるか前から、安定的に茶葉を生産できる仕組み作りに取り組むなど持続的な事業運営を心がけてきたという伊藤園。ペットボトルの水平リサイクルや、GHG(温室効果ガス)削減施策の検討と実行に取り組む担当者2人にその思いや日々の仕事について詳しくうかがってきました。(編集長・福井洋平)

【お話をうかがった方のプロフィル】
サステナビリティ推進部 GX推進課 グループリーダー 庄司翼(しょうじ・つばさ)さん(写真左)
2012年法政大学社会学部卒業、同年伊藤園入社。営業、官庁出向を経て、2025年より現職。

サステナビリティ推進部 GX推進課 榊有裟(さかき・ありさ)さん(写真右)
2023年関西大学政策創造学部卒業、同年伊藤園入社。入社当初より現職。

2050年度までにネットゼロ(※)目指す

■伊藤園でのSDGsへの取り組み
 ──御社は飲料メーカーですが、サステナビリティに対する取り組みの主軸は何ですか。
 庄司翼さん 弊社は、「健康創造企業」というグループミッションを掲げています。SDGsでは3番の「すべての人に健康と福祉を」、事業的には2番の「飢餓をゼロに」、12番の「つくる責任 つかう責任」と密接に関連する取り組みを推進しています。さらに気候変動に関連する13番「気候変動に具体的な対策を」、14番「海の豊かさを守ろう」、15番「陸の豊かさも守ろう」にも深く関わっています。

(※)温室効果ガスの排出量の90%以上を削減し、残りを吸収・除去量を差し引きして正味ゼロにする状態

 ──お二人の所属されているサステナビリティ推進部の仕事について教えてください。
 庄司 弊社は、2012年に当時の環境部を統合する形で、CSR推進部を新設しました。当時は社会環境活動を中心に取り組んでいましたが、現在はサステナビリティ推進部として、サステナビリティ経営の推進や環境対応、資源循環の促進など、持続可能な社会の実現に向けた活動を行っています。

 私と榊の所属しているGX(グリーントランスフォーメーション)推進課の業務はGHG(温室効果ガス)をはじめとする気候変動への対応、資源循環の推進、水源涵養の活動など多岐にわたります。2024年まではプラスチックの資源循環を推進するプラスチック資源循環推進課と環境推進課がありましたが、2025年度に両課が統合されてGX推進課になりました。加えてサステナビリティ推進課があり、統合レポートの企画・制作、ESG外部評価への対応やステークホルダーとの対話などを中心に行っています。
 榊有裟さん 私は、グループ会社全体のGHG(温室効果ガス)排出量の算定から、環境目標の達成に向けた戦略策定と施策の実行までを主に担当しています。飲料メーカーは製造、原料調達、物流の各プロセスでのGHG排出量が大きく、環境負荷も少なくない業種であると認識しています。だからこそ、脱炭素に取り組む意義が大きいと考えています。

 ──今は、どういった脱炭素への取り組みをされているんですか?
 榊 グループ全体として2025年にSBT(Science Based Targets)認定を取得しました。これは、パリ協定に整合した科学的根拠に基づくGHG 排出量削減目標を設定している企業として、国際的に認められたことを意味します。具体的にはスコープ1(自社燃料の使用による直接排出)、スコープ2(自社が購入した電気等の使用に伴う間接排出)で2030年度までに50%削減、2050年度までにネットゼロを目指しています。

 実現に向けて、工場の燃料を重油から天然ガス、さらに水素へと段階的に転換しています。また、ルートセールスで使用する車両もハイブリッド車やEV(電気自動車)への切り替えを加速させています。さらに、グループ全体での省エネの推進、再生可能エネルギーへの転換を実施しています。すでに伊藤園所有ビルでの電力使用は100%再生可能エネルギーとなり、国内外の製造工場での太陽光発電パネル設置や営業拠点での再生可能エネルギーへの転換も推進しています。

ペットボトルの水平リサイクルに取り組む

■ペットボトルのリサイクル
 ──庄司さんがいま、メインで取り組んでいる仕事を教えてください。
 庄司 私は、資源循環をメインで担当しています。ペットボトルのリサイクル材の使用率をどうやって増やしていくかを考え、自治体と協定を結んで廃ペットボトル、いわゆるリサイクル材を我々に供給いただくスキーム構築に取り組んでいます。

 ──メインの対象はペットボトルですか?
 庄司 そうですね。我々の容器包装で一番使用量が多いのがペットボトルになります。その次に、缶、紙という形で取り組みを検討しています。

 ペットボトル自体はもともと、国内でリサイクル率が約85%という優等生でした。いまはペットボトルをペットボトルに戻す水平リサイクル、「ボトル to ボトル」の取り組みを推進するため、理念に共感いただいたお客様と協定を結び、資源循環の取り組みを推進しています。

 ──どのように容器を回収して、水平リサイクルをしようとしているのですか。
 庄司 大きく2つのルートがあります。一つは消費者のみなさまのご家庭を通じて、自治体から出るペットボトルです。ペットボトルを回収する自治体と協定を結んで、再生樹脂を製造するリサイクラーへのルートを構築することに取り組んでいます。
 もう一つは、自動販売機横のリサイクルボックスからの回収です。我々は設置している自動販売機を巡回するルートセールスを行っています。空き容器も、自動販売機に併設しているリサイクルボックスから我々が直接回収しています。それを弊社が契約する廃棄物処理業者を通じ、最終的にリサイクルペットボトルの原料となる再生樹脂に戻る処理フローの構築をお願いしていきます。

 ──回収のルートを整備する上で、何がネックになりますか。
 庄司 廃ペットボトルは、様々な用途に合わせて繊維、トレイ、成型品などにつくりかわっていきます。そこで廃棄物処理業者の方々に我々の取り組みを説明し、理念に共感いただいたところに「ペットボトルの水平リサイクルが可能な業者への引き渡しにご協力いただけないか」とお願いして、ボトルtoボトルの輪を広げています。

 水平リサイクルにより、半永久的にペットボトルにリサイクルができると分かっていますので、海外の新たな石油由来資源に頼らず国内資源循環推進に貢献できるという点をお伝えしています。さらに、当社が掲げる「2030年までにペットボトルのリサイクル素材使用率を100%にする」という目標に向けた情熱も伝えています。

 ──水平リサイクルに取り組まれたのは、いつからですか。
 庄司 水平リサイクルによるリサイクル材を使いはじめたのは2014年ごろです。

グループ内に幅広い業種、統一基準作りに苦労

■GHG排出量の算定
 ──榊さんは入社当初からサステナビリティ推進部に勤務していますが、これまでどういった仕事をされてきましたか。
 榊 2023年4月に入社し、入社1年目より現在担当しているGHG排出量の算定に携わってきました。私が入社した当時、GHG排出量の算定・開示が本格的に始まり、取り組みをグループ会社全体に拡大していこうとしていました。そのため、入社1年目はまず「現状を正確に把握する」ことから始まりました。20社以上のグループ会社それぞれから、電力使用量、燃料使用量、廃棄物量、水使用量など、膨大なデータを収集する仕組みを構築しました。また、並行してISO 14001(環境マネジメントシステム)の事務局としての運用も担当していました。

 2年目はGHG排出量算定対象を国内外全グループ会社に拡大するとともに、「削減」にも本格的に取り組み始めました。私は主に工場や車両の使用で排出されるGHG排出量の削減施策の立案に携わり、営業車両の電動化ロードマップの作成等を実施しました。また、伊藤園グループ全体の排出量の80%以上を占めるスコープ3(サプライチェーン全体での排出量)の削減においては、サプライヤーとの協働が不可欠です。そこで、新たな試みとして、各飲料製造委託先の設備や環境の実務担当者を対象に、環境品質会議を開催する等、サプライチェーン全体で削減に取り組むサプライヤーエンゲージメントの推進にも携わりました。

 3年目は海外グループ会社のサプライチェーンすべてをGHG排出量の算定対象として拡大し、SBT認定を取得するところまで達成しました。GHGプロトコルに準拠した正確性の高い算定かつ科学的根拠に基づいた削減目標を設定して取り組む企業として認定されたことは非常に意義があると思います。入社からわずか2年半でこのような成果に貢献できたことは、私自身の大きな自信にもなりました。削減施策の推進においても、立案した施策の実行フェーズに入り、各部門と連携しながら具体的なプロジェクトを推進しています。

 ──榊さんは学生時代にそういったことを専門でやっていたのですか。
 榊 いえ、専門は全く異なり、大学ではマーケティングと企業戦略を専攻していました。ただ、大学時代に培った「課題を発見して、データに基づいて分析し、実行可能な解決策を導き出す」というアプローチは、GHG排出量削減施策の立案やデータの分析の場面で直接いきています。専門知識はゼロからのスタートでしたが、問題解決の思考プロセスは共通していると実感しています。
■大変だったこと
──どういった会社を担当されているのですか?
榊 私は国内6社、海外5社の計11社を担当しています。業種も規模も多様で、国内の製造会社だと荒茶(一次加工された茶葉)の加工を行う伊藤園ティーファクトリーや北海道に根差した事業展開を進める北海道伊藤園、ヨーグルトを製造しているチチヤスを担当しています。それぞれ製造プロセスが異なるため、排出特性を理解した上で算定・分析を行う必要があります。

──チチヤスがグループ会社というのは、初めて知りました。
榊 チチヤスは1886年に創業し、1917年に日本ではじめてヨーグルトを発売した会社です。2011年に伊藤園グループとなりました。長いあいだ稼働してきた製造設備があるので、最新の省エネ技術や再生可能エネルギーの導入によって、大きな削減効果が期待できます。グループ全体の脱炭素化において、戦略的に取り組むべき重要拠点の一つです。

──GHGの算定事業で一番大変だった仕事は何ですか?
 榊 この3年間で最も苦戦したことは、「データの正確性と収集効率をどう両立させるか」でした。グループ会社が20社以上あるため、各社の業種や規模も異なるという状態で、統一的なフォーマットで環境データを正確かつ効率的に収集する仕組みを構築することが困難でした。財務情報はどの企業も開示していますが、環境データは収集の歴史が浅く、各社で管理体制も様々です。例えば、伊藤園の営業拠点は約150拠点、スペシャリティーコーヒーショップ「タリーズコーヒー」は約800店舗あるためデータ量が膨大ですが、一つひとつのデータについて根拠を示す、トレーサビリティを確保する必要があります。一方で、現場の方には労力をかけない効率的な収集をするという風に「データの正確性」と「現場負担の軽減」を両立させることが、最大の課題でした。

データを「ストーリー」として伝えていく

■社内との交渉
 ──特に現場の方々からすると、「仕事が1つ増えた」と思われることもあると思うのですが、どう交渉しましたか。
 榊 各グループ会社と定期的にミーティングを設定し、密にコミュニケーションを取りました。この取組みが「単なる事務作業」ではなく、「今後より良い会社や社会にしていくための重要な取り組み」であることを理解してもらうことが、協力を得る一歩だったと感じています。

 同時に、サステナビリティ推進委員会を通じて経営層や社長を巻き込み、「グループ全体で取り組むべき共通のテーマ」として落とし込んでもらいました。現場の理解と経営層へのコミットメント、両輪での推進が重要だったと感じます。

 ──まだ3年目の若手ということで、上層部の社員の方々と話をする際の苦労はありましたか。
 榊 特に大きな苦労はありませんでした。グループ会社のミーティングには、基本的に部長クラス以上の方々が参加されます。もちろん当初は、若手が説明することに不安もありましたが、みなさん環境課題に真剣に向き合おうという姿勢で、むしろ「教えてほしい」という前向きなスタンスで聞いてくださいました。年齢や立場の壁は感じず、フラットに議論できる環境でした。

■ハードルの乗り越え方
 ──いろいろなハードルを乗り越えていくために、気をつけていることはありますか。
 榊 私が最も意識しているのは、データを単なる数字として扱わず、ストーリーとして伝えることです。「この数字がどれだけ環境にインパクトを与えるのか」「それを解決した先に何が実現できるのか」を明確に示す。そうすることで、現場の方々も自分事として捉えていただけます。自分自身も現場への理解を深めながら、「ともにより良い未来、より良い会社を築いていく」という共通のゴールを共有することが、協力を引き出す鍵だと考えています。
 庄司 グループ会社の皆さんが「榊さんが言うなら協力しよう」となるように関係構築し、この3年間動いてきたことだと思いますね。

 榊 正直、入社当初は「スコープとは?」「GHGプロトコルとは?」というレベルからのスタートでしたが、先輩方の手厚いサポートや実務、自主的な学習を通じて専門知識を学ぶことができました。

 ──今後の課題はどういうところにあると思いますか。
 榊 環境対策はコストを伴います。だからこそ、費用対効果を明確に示すことが重要です。「長期的には企業価値向上につながる」というストーリーをデータに基づいて説得力を持って説明する。データでも表せない目に見えにくい効果も含めて、長期的な視点で経営判断につながる提案を心掛けています。

 ──榊さんが実際に現地を見に行くこともありますか?
 榊 国内グループ会社5拠点の工場を訪問しました。データだけでは見えない現場の実態を、自分の目で確認することを重視しています。たとえば製造工程での水使用量の多さや蒸気として逃げている排熱など、現場でしか気づけない削減ポイントがあります。具体的な施策も現場を見て初めて提案できると感じています。

 ──SBT取得後の次の目標は?
 榊 SBT認定取得はゴールではなく、スタートです。この目標を確実に達成するため、削減施策を着実に実行していくことが最優先です。同時にGHGの排出量算定ではSSBJ対応に向けた準備も進めています。有価証券報告書での非財務情報の開示が義務化されるため、これまで以上に厳格な正確性とスピードが求められます。算定の効率化・早期化を推進し、より質の高い開示を実現していく計画です。

茶葉の全量買い取りで茶産地を育成

(写真は伊藤園提供)
■茶産地育成事業
 ──業界にはさまざまな飲料メーカーがあると思いますが、リサイクルという点で、伊藤園の立ち位置はどのようなものですか。
 庄司 我々は「お客様第一主義」を経営理念に掲げています。自分たちが儲かることだけを考えず、長期的にお客様とともに発展していきたい。そのために社会や環境の課題も解決していく、いわゆる「三方よし」の考えのもとで事業をすすめています。SDGsのために特別な何かをしているのではなく、結果としてすべての取り組みがSDGsにも貢献しうるのだと思っています。

 1976年から「茶産地育成事業」という、「お~いお茶」をはじめとする製品の原料となる高品質な茶葉の安定調達と生産性の向上を目的として、環境と共存する大規模茶園経営を行っています。なかでも各地の茶農家の皆様に当社向けの茶葉を生産していただく「契約栽培」と、荒廃農地などを活用して大規模な茶園を造園し、当社向けの茶葉を生産していただく「新産地事業」の二つの取り組みを行っています。

 茶産地育成事業を通じて調達する原料は伊藤園が全量を買い取ります。そうすることによって、農家の方も投資予定などの事業計画がたてやすくなり、伊藤園も品質の高い原料を安定して調達することができます。茶市場からの調達を含めると、日本の荒茶(緑茶)生産量の約4分の1を当社が取り扱っています。

 ──お茶の生産には、どういった苦労があるのでしょうか。
 庄司 高齢化や後継者不足、天候影響も大きいと聞いています。また、近年の世界的な日本茶・抹茶ブームを背景とした需給バランスの乱れや茶価高騰などの課題を抱えながら、品質と安定的な供給を持続的に行っていく必要があります。そのためには、どこで生産して、どのような商品をつくっていくかという整合性を取ることが重要になります。

(後編はこちらから

(インタビュー写真・山本倫子)

SDGsでメッセージ!

 これから就職活動をはじめられるにあたって、いろいろと大変で、気になることもあるかと思います。ただ、これからの人生を自分で唯一決めていけるのが新卒だと思っています。その中で、伊藤園で一緒に働けるような、お付き合いができたら、私としてはとても嬉しいと思っています。これから最終的に様々な選択肢からそれぞれの道を選ばれると思いますが、我々伊藤園としては製品でお会いする機会もあろうかと思いますので、いろんなところで我々との接点を持たせていただければと思っています。(庄司さん)

 就職活動は終わりが見えなくて、周囲と比べて焦ってしまうこともあるかと思います。ですが、焦ると自分が本当にやりたいことを見失ってしまいます。今回のテーマにもある SDGs は、「すべての人にとってのより良い未来」を目指すものです。だからこそ、まずは「自分にとってより良い未来とは何か」を追求してみてください。誰かにとってのより良い未来を、世界のティーカンパニーを目指す伊藤園で共につくることができると嬉しいです。お待ちしています。(榊さん)

伊藤園

【飲料】

 当社グループは「お客様第一主義」の経営理念のもと「お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現すること」を社会における使命として、日本のお茶が持つおいしさや価値を幅広い世代のお客様に提供しております。今後も、長期ビジョンの「世界のティーカンパニー」の実現に向け、「お~いお茶」ブランドを世界に広め、世界各地域の茶文化と繋がり、日本をはじめとする世界中のお客様の健康で豊かな生活に貢献してまいります。