
■市場との関係
──最初に「高松市中央卸売市場を活性化しましょう」というアイデアを地元関係者に持っていった時の反応は、どんな感じだったんですか?
山田 好意的でしたが、どこまで本気度があるのかは半信半疑だったと思います。関係性を深めようと、地域のお祭りがあったらなるべく顔を出していきました。
信頼は社名で得るものではなく、お金を出して得るものでもなく、「本当に一緒にここを盛り上げたいんだな」というところだと思います。特に地元で商売をされている方はそういう思いが強いと思うので、究極的な人間関係をつくることを意識していますね。
──コロナ禍の時は大変でしたか。
山田 大変でしたが、実はコロナ禍で市場との関係ができました。当時は旅行商品として売るものがほぼなく、「どうしようかな」と考えたときに、香川の伝統漁法であるタコ壺漁が思い浮かびました。タコ壺を200基ぐらい海に沈めて、3日ぐらいたったら引き上げる漁なのですが、そのタコ壺のオーナーをオンラインで募集し、タコが入ったらクール便で送る、入らなかったら残念でしたというゲーム性のあるオーナー制度です。
高松市中央卸売市場長にアポを取ってアイデアを説明したら「君、面白いな」と言ってもらい、いろいろな話をするようになり、再開発の話をお聞きすることにつながりました。結局、タコ壺オーナー制度は実現しませんでしたが、それがなければ市場との出会いもなかったと思っています。いまでもタコ壺オーナー制度はウケると思っていますが。
■「クセモノズ」のコンセプト
──「クセモノズ」という、流通しづらい魚を提供しようというアイデアはどのように生まれてきたのですか。
山田 高松の漁獲高が減っている理由は、未利用魚が増えていることも要因です。高松の漁は底引き網で、網をローラーで巻き上げて、そこにマダイが入っていたら合格。でも、そこにエイが入ることもあります。水族館なら人気者ですが、食べるとなると下処理も大変だし、流通しないから海に返さないといけない。しかも機械を壊すくらい強い魚なんです。漁師さんは「何しよるか分からん」と言っています。
そこで、私たちがこの取り扱いづらい地域の曲者たちを宝物にして、観光の新たな魅力として発信していこうと考えました。「アカエイも料理しましょう」「誰もやらないなら、私が一生懸命やります」という順番でした。
──一番の問題魚はエイですか?
山田 エイとハモ、チヌ(クロダイ)は厄介者とされているようです。ハモは高級魚として京都や小豆島では「小豆島鱧」として扱われるのですが、食材として加工するには手間ひまがかかります。需要と供給が合ってないと、結局未利用魚になるのです。また、ハモは「食肉魚」と言われて歯もガチガチと堅く、ほかの魚を食べてしまうんです。チヌ(クロダイ)に関しては、広島や香川でカキが取れないのは、チヌが養殖のカキを食べてしまうのも要因の一つなのではないかと思われます 。地球温暖化が進めば進むほど、こうした強い魚が増えると考えられています。
一方で、こうした魚もちゃんと調理をして、食べればおいしいわけですよね。地球温暖化を防ぐためにさまざまな取り組みを企業レベルですることも大事ですが、こうした新しい環境の変化に人間が順応していくことも必要だと思います。地球環境が変わるのであれば、人間も順応していく。その中での香川の新しい観光の魅力を発信できればいいと考えました。