10月1日からビール類の税額が統一されました。ビール類には、ビール、発泡酒、第3のビールの3つのジャンルがあり、これまではビールの税額は350ミリリットルで63.35円、発泡酒と第3のビールは46.99円でした。それが3つのジャンルとも54.25円に統一され、ビールは約9円の減税に、発泡酒と第3のビールは約7円の増税になります。発泡酒と第3のビールは酒税が安く安値で販売できたために売れていましたが、ビールが安くなると味がいいとされるビールがよく売れるようになるはずです。この大きな変化に対応するため、ビール各社はビールの新製品を出したり、発泡酒や第3のビールからビールに「格上げ」したりしています。ビール業界は、浮き沈みの少ない消費、豊富な資産、新規参入の少なさなどにより、安定した業績を維持している業界ですが、久しぶりに大きな変化の時期を迎えています。
(写真・酒税改正を伝えるアサヒビールの垂れ幕=2026年9月30日、東京都千代田区/写真、図版は朝日新聞社)
アサヒ、キリン、サントリー、サッポロが大手
ビールを製造している会社は全国に1千社以上あるといわれますが、ほとんどは小規模で地域性の強いクラフトビールを製造している会社です。大手といわれるのは、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、サントリーホールディングス、サッポロホールディングスの4社です。これに沖縄で製造されているオリオンビールを入れて大手5社という言い方もあります。アサヒ、キリン、サッポロの3社は明治時代に創設され、アサヒとサッポロは大日本麦酒というひとつの会社だった時期がありますが、戦後おもに西日本を中心とするアサヒとおもに東日本を中心とするサッポロに分割されました。サントリーも明治時代にウイスキーなどの洋酒を造る会社として創設され、戦後の1963年にビール事業に参入し、徐々に存在感を高めてきました。オリオンビールは戦後、米軍統治下の沖縄で復興を目指して創設された会社です。
比較的浮き沈みの少ない業界
大手4社で売上高がもっとも大きいのはサントリーホールディングスで3兆4325億円(2025年12月期)です。次いでアサヒグループホールディングスが2兆8947億円(2025年12月期)、3位はキリンビールホールディングスで2兆4334億円(2025年12月期)、4位はサッポロホールディングスで5068億円(2025年12月期)です。サントリーは非上場の会社で、洋酒や飲料などのビール以外の部門の売上高が大きいとみられています。ビールの販売シェアは、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロの順とみられます。かつてはキリンがトップでしたが、ドライビールで急伸したアサヒがとらえ、最近ではこの順位が定着しているようです。各社とも基本的に黒字基調が続いており、習慣性の高い商品を主力とするためか、比較的浮き沈みの少ない業界になっています。
ビールへの「格上げ」が進む
ビール類の税率はこれまで麦芽比率などの違いで3つに分類されていました。業界は低い税率を求めてビール風味の飲料の開発を進め、ビール類の商品は複雑になりました。そうした複雑になった商品や税額を簡素にしてわかりやすくするため、財務省は2020年から段階的に税額の一本化を進めてきたわけです。同じ税率になればビールを求める消費者が多くなると見込まれるので、各社はビールの新製品を発売したり、人気のある発泡酒や第3のビールのブランドをビールに格上げしたりしています。サントリーは第3のビールだった「金麦」を、キリンは第3のビールだった「本麒麟」をそれぞれビールにしました。また、新商品のビールとしてアサヒは「アサヒ ゴールド」を、キリンは「晴れ風」を発売するなど、ビール事業に力を入れています。
(写真・発泡酒などの酒税が10月から上がることを知らせるポップ=2026年9月25日、東京都大田区)
国内需要頭打ち対策は多角化と海外事業
ただ、日本は人口が減少しており、若者のビール離れも進んでいます。国内のビール需要は頭打ちにならざるを得ません。そうしたことから、各社はビール事業以外の分野の強化も進めています。サントリーは4月に健康関連事業の第一三共ヘルスケアを買収すると発表しました。健康関連事業を手がけるサントリーウエルネスの売上高は1400億円程度(2025年12月期)で、サプリメントや特定保健用食品の開発販売に力を入れていますが、この分野をさらに強化する方針です。健康関連事業や医薬品事業で先行しているのはキリンで、20世紀後半から医薬品開発などをはじめ、医薬品やヘルスサイエンス分野はグループの収益源となっています。また、各社とも海外での事業にも積極的です。サッポロは7月、世界的なビールメーカーのカールスバーグ(デンマーク)と合弁会社をつくり、東南アジアと香港の事業で協業すると発表しました。サッポロは2025年末、不動産事業を投資ファンドのKKR(アメリカ)などに4770億円で売却すると発表しており、売却で得た資金などを成長投資に使う方針を示しています。
(写真・サントリーホールディングスの看板=東京都港区)
おっとりした社風が多い?
全国展開しているビール会社は4社に過ぎません。4社の名称は誰もが知っているほど国民に浸透しています。それは、全国展開を目指すほどの大規模な投資資金を用意して新規参入する企業が長らくないためといえます。ビールは成熟しきった商品なのです。それでも、4社は多角化や海外進出により、安定した業績を上げ続けています。戦前から続く歴史により、優良な不動産を持ち、財務体質も強固です。それだけに、おっとりした社風の会社が多いとも言われます。
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