東京など大都市では、少し足を運ばないうちに街が様変わりしていると感じることがよくあります。古くなったビルなどを取り壊し、高層ビルや緑あふれる空間などがある新しい街が出現しているのです。「街づくり」や「再開発」と呼ばれる計画が実現しているわけですが、その計画づくりや建設のまとめ役となるのが不動産ディベロッパーです。大規模な再開発計画はまだまだあります。戦後から高度経済成長期に建設されたビルや施設は古くなり、耐震性の問題もあるため立て替えは避けられません。そうしたビルや施設を建て替える際に周辺もあわせて新しくすることで、街の価値を高めるのです。ただ、ここにきて資材費の高騰や人手不足が進み、計画が順調に進むかどうかが見えづらくなってきています。
街づくりは長い時間がかかります。計画から完成まで数十年かかることもあり、その間に生じるさまざまな問題を乗り越えなければゴールにたどりつかないプロジェクトです。そうして完成を迎えた時の喜びは、きっと大きいはずでしょう。「大変なこともありそうだけど面白そうだ」と思う人が多い業界です。
(写真・再開発が進む東京駅八重洲口周辺。中央右は三菱地所などが手がける建設中のトーチタワー=2026年7月8日/写真はすべて朝日新聞社)
三井、三菱、住友の財閥系が強い
国土交通省によると、不動産を取り扱う宅地建物取引業者は全国で13万以上あります。そのほとんどは不動産売買や貸借の仲介をする会社、いわゆる「街の不動産屋さん」で、街づくりを担うディベロッパーといわれる大手の不動産会社はわずかです。2026年3月期の売上高で見ると、もっとも大きいのは三井不動産で2兆7097億円、次いで三菱地所で1兆7461億円、3番目が住友不動産で1兆577億円となります。上位3社はいずれもいわゆる「財閥」系で、戦前に財閥が持っていた多くの不動産を戦後に引き継いだことにより今もしっかりした経営基盤を持っています。3社に続くのが東急電鉄沿線の開発を主導する東急不動産ホールディングス、野村証券から分かれた野村不動産ホールディングス、東京・八重洲地区の再開発を手がける東京建物などです。また、東京都港区周辺で集中的に再開発事業をしているのが森ビルです。非上場の企業ですが、「○○ヒルズ」の名称で街づくりをしていて高い知名度を持っています。
(写真・東京駅八重洲口近くに完成した「TOFROM YAESU」、東京建物が手がける=2026年7月15日)
三井の日本橋、三菱の丸ノ内
それぞれのディベロッパーには街づくりの実績があります。三井不動産の街づくりで有名なのは、東京・日本橋です。三井グループの発祥は江戸時代に日本橋に開いた呉服店「越後屋」です。そうした縁があり、21世紀に入って日本橋の新しい街づくりを主導してきました。次々と新しいビルを建て、日本橋の活性化に成功しています。今後、首都高の地下化がおこなわれることになっており、日本橋の街づくりはまだ続きます。三菱地所は東京駅に隣接する丸ノ内、大手町、有楽町の街づくりを手掛けてきました。今は丸の内、大手町から東京駅を挟んで反対側になる八重洲地区の街づくりにも関わっています。住友不動産は東京・六本木や西新宿の再開発を手掛けてきました。東急不動産は東京・渋谷の再開発を主導し、新しい渋谷が徐々に完成してきています。野村不動産は東京・芝浦や中野での再開発にかかわっています。森ビルは1955年に東京・虎ノ門で創業した不動産会社で、ビルを建設して賃貸する事業から始め、街づくりに乗り出しました。1986年に初めての大規模開発であるアークヒルズを東京の六本木と赤坂にまたがる地域に誕生させ、以後、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズなど次々に新しい街づくりをおこなってきました。
(写真・パワースポットとして人気の「福徳神社」。三井不動産が手がけた日本橋・再開発エリアの一角にある=2026年7月16日)
横浜や大阪でも大規模再開発が進む
今も進行中の大規模再開発計画はたくさんあります。東京では、築地市場跡、神宮外苑、帝国ホテル周辺などが注目されています。これらは東京の中心部にあり、エリアも広いため、東京全体のイメージにも関わる大きな事業となります。いずれも三井不動産が中心になって関わっています。このほか、横浜・関内地区では旧横浜市庁舎周辺の再開発が進んでいます。大阪では新しくできる森ノ宮駅周辺の再開発や、大阪・関西万博跡地とその周辺でカジノを含むIR施設などの建設が進みます。こうした大規模再開発のほか、人工知能の活用に必要なデータセンターの建設計画がたくさんあり、不動産ディベロッパーの業績の追い風になっています。
資材価格や人件費の高騰で遅延や中止
ただ、再開発計画の遅延や中止が相次いでいる点は心配されます。帝国ホテルは2026年3月、建て替えを予定していた帝国ホテル東京のタワー館について、当初2024年度中としていた解体工事着工の予定を延期し、2030年度末を目指すと発表しました。2031~36年度としていた本館の建て替えも、時期が未定となりました。大阪市中央区の御堂筋沿いにある大阪ガス本社ビル周辺の再開発も2024年の着工が延期され、今も工事は始まっていません。名古屋市では、名鉄名古屋駅の上に建つ5棟のビルを2つの巨大ビルに建て替える計画が発表されていましたが、スケジュールが白紙になっています。建築資材の価格や人件費が当初の予想を大きく上回っているためです。
(写真・建て替えが延期された帝国ホテルの本館やタワー館)
ニューヨークでも再開発事業
長期的にみると、人口減少の日本での再開発事業はいずれ頭打ちになるという見通しがあり、海外での再開発事業に力を入れる動きもあります。中国、インドネシア、インドなどのアジア地域は経済成長の鈍化がみられ、ここにきてアメリカでの事業が注目されています。森ビルはニューヨークの紳士服大手ブルックスブラザーズの本店跡地を現地不動産会社と共同で再開発事業に乗り出しています。
コミュニケーション力も必要に
街づくりは夢のある大きな仕事です。長く残る仕事でもあり、やりがいがあると思います。ただ、長い期間かけてたくさんの関係者の利害を調整し、合意を得なければなりません。地権者の中には再開発に積極的でない人もいるでしょう。その説得や条件交渉に神経を使うだろうとことは想像に難くありません。企画力、営業力、技術力だけでなく、コミュニケーション力も必要になります。志望する人はそうした点も心得ておく必要があります。
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