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2026年07月31日

中東情勢の影響を受けるが、長期的には好業績が期待される海運業界【業界研究ニュース】

運輸

 アメリカとイランの戦闘が続いていることにより、ペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡の船の通航がむずかしい状態が続いています。さらにペルシャ湾とアラビア半島を挟んで反対側にある紅海の出入り口である、バブ・エル・マンデム海峡の通航もむずかしくなってきました。どちらも中東産の原油をタンカーで日本などに運ぶために通航する必要がある海峡で、このため日本の海運業界は中東産原油を運ぶことがむずかしくなっています。代替措置としてアメリカ産原油などを運んでいますが、コストがかかることなどから利益を圧迫しているのが現状です。

 ただ、長期的にみると、日本の外航海運業界には明るさがあります。島国である日本は貿易のほとんどを船に頼っており、貿易自体は今後も活発であることが見込まれます。かつて会社数が多いため赤字に苦しんだ海運業界は20世紀終盤から21世紀初めにかけて集約化を進め、利益が出る体質になりました。そのため世界の貿易が活発になり、船の運賃が上昇すれば業績は上がることになります。環境問題に対応した新燃料への切り替えやデジタル技術を使った自動運転技術の確立といった課題はありますが、そう遠くないうちに克服されそうです。外航海運は国際性に富んだ業界であり、海外に興味があったり語学が得だったりする人には向く業界だと思います。
(写真・横浜市の山下公園にある氷川丸。日本郵船が1930年に建造し、戦前の日本で建造され現存する唯一の貨客船=2025年8月2日/写真はすべて朝日新聞社)

大手3社の売上高はいずれも1兆円以上

 日本の海運業界は大きくわけて、外航海運と内航海運に分類されます。外航海運は海外と行き来する船を運航する会社でほぼ大手企業、内航海運は国内の物資や人員を国内に運ぶ海運会社でほとんどが中小企業です。日本の外航海運会社はかつては数多くありましたが、1970年代のオイルショック後、過当競争から業績が悪化する会社が増え、合併や倒産により集約されていきました。現在は日本郵船商船三井川崎汽船の大手3社が中心です。2026年3月期の売上高は日本郵船が2兆4236億円、商船三井が1兆8250億円、川崎汽船が1兆183億円と、いずれも1兆円を超えています。このほか NSユナイテッド海運飯野海運を加え、大手5社とする場合もあります。NSユナイテッド海運の2026年3月期の売上高は2297億円、飯野海運の売上高は1273億円なので、大手3社とは差があります。
(写真・日本郵船のロゴ)

コロナ禍では荷動きがとどこおり好業績に

 外航海運業界の業績は、船の運賃の上がり下がりに左右されます。2020年から2022年にかけてコロナ禍があり、港の荷積みや荷下ろしの人員が激減して船の運航がとどこおったため、運賃は急上昇しました。おかしなことと感じますが、荷動きはとどこおり気味だったのに、業界は空前の好業績に沸いたのです。大手3社は2018年に不調だったコンテナ船部門を統合し、ONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)という新会社をつくりましたが、コロナ禍でONEは空前の高利益をはじき出すことになりました。現在もホルムズ海峡の封鎖などで荷動きが減ったことで運賃が上昇していますが、運送距離が伸びたり、燃料の重油の値段が高騰したりしたことによるコスト上昇の悪影響の方が大きく、減益傾向で推移しています。

日本郵船は三菱グループの中核

 日本は島国であるため、昔から貿易には船を使っており、海運会社の多くは歴史の古い会社です。日本郵船は、三菱グループの礎を築いた岩崎弥太郎が1870年に東京・大阪・高知間の海上輸送をするためにつくった九十九商会が起源です。1885年に日本郵船となり、長崎と中国・天津の航路を開き、その後インド、アメリカ、ヨーロッパと航路を広げていきました。こうした歴史の古さから、今も三菱グループの中核会社の位置を占めています。商船三井の創業は1878年、福岡・三池炭鉱の石炭を中国・上海に運んだところから始まります。その後大阪商船となり、アメリカ航路などを開きました。戦後に、大阪商船と三井グループの三井船舶が合併し大阪商船三井となり、さらにナビックスラインを吸収合併して1999年に商船三井となりました。川崎汽船は1919年、川崎造船所という造船会社を持っていた川崎財閥が、大規模な海運会社をつくって造った船を運航させようと考えて設立しました。
(写真・商船三井のロゴ)

新燃料と自動運転に取り組む

 船はいまも、飛躍的な技術革新は生まれていません。ただ、社会情勢の変化に応じて技術革新が求められるようになっています。ひとつは、地球温暖化への対応です。船の燃料は原油を精製した際に最も重い成分としてつくられる重油です。値段は安いのですが、温室効果ガスである二酸化炭素をたくさん排出します。そのため、燃料を水素にして二酸化炭素を出さないようにしようという取り組みが進んでいます。水素と酸素を反応させてつくった電気を動力とする燃料電池船はすでに実用化されていますが、内燃機関で水素を直接燃やす水素エンジン船のほうが高い出力を得られるため、海運会社は水素エンジン船の実用化にエンジンメーカーなどとともに取り組んでいます。もうひとつは、船員の人手不足に対応するための自動運転です。日本郵船などが中心になって進めているシステムは人工知能(AI)や、センサーや衛星からの情報などのデジタル技術を使って陸上から船をコントロールしようとするもので、実用化に近づいています。

国際性豊かな仕事のため語学の勉強を

 外航海運会社の仕事は大きく分けて3つあります。陸上系事務職、陸上系技術職、海上職です。陸上系技術職は造船の管理、計画づくり、新技術の研究などが、海上職は実際に船に乗って船舶を運航することなどが主な仕事になります。人数が多いのは陸上系事務職で、陸上から会社のビジネスを引っ張っていく仕事です。営業や管理の仕事が含まれ、外国の荷主との交渉などがあるため、国際性の強い仕事が多くなります。日本郵船の場合、世界50カ国以上に駐在員事務所を構えていて、全社員の5人に1人が海外に駐在していることになります。入社すると海外駐在が当たり前という感覚でいたほうがよさそうです。当然、英語などの外国語を話すことが必要になります。志望する人は、語学の勉強をしておくようにしましょう。
(写真・川崎汽船のロゴ)

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