地方銀行の業績がよくなっています。少し前までは地銀は苦境といわれていて、金融庁が経営基盤強化のために経営統合などによる再編を促していたのですが、様子が変わってきました。業績好転の主な原因は金利の上昇です。日本銀行は2024年3月にマイナス金利を解除し、その後0.25%程度、0.5%程度、0.75%程度と政策金利を引き上げてきました。銀行の大きい収益源は貸出金利と預金金利の差、つまり利ざやですが、金利がほとんどない世界では利ザヤが小さくなっていました。地方では特に資金需要が落ちていたため、ゼロ金利政策は地方銀行の経営を圧迫していました。しかし、一昨年以来の金利上昇で利ざやが大きくなっています。6月16日には日銀が政策金利を1.0%程度に引き上げ、追い風はさらに強まると思われます。
一方で、国債などの債券を多く持っている地銀は、金利が上がると債券価格が下がる関係にあるため、含み損を抱えることになります。追い風一辺倒ではありませんが、全体としては持ち直しているということができます。それでも規模が小さいため単独で生き残るには苦しい地銀もあり、経営統合の流れは続いています。地方経済にとって地銀の役割は大きく、地方出身だったり地方に住むことに抵抗がなかったりする就活生は地銀を視野に入れてはどうかと思います。
(写真・全国地方銀行協会の会見で話す片岡達也会長(横浜銀行頭取)=2026年5月20日、東京都中央区/写真、図版はすべて朝日新聞社)
統合が進み132行から95行へ
地方銀行は、2026年6月現在全国に95行あります。業界団体は2つに分かれていて、全国地方銀行協会(地銀協)に加盟している銀行は61行、第二地方銀行協会(第二地銀協)に加盟している銀行は34行です。かつて地方の銀行には、地方銀行とは別の法律に基づいて主に中小企業を対象に融資する相互銀行という銀行の業態がありました。ただ、時代の変化に伴い地方銀行と相互銀行の領域を分ける必然性が薄くなり、1989年に相互銀行も普通銀行に転換しました。その後も業界団体だけは一緒にならず、第二地銀協はかつて相互銀行が集まっていた団体がそのまま名称を変えて残っています。相互銀行を含む地方銀行は1990年末には132行ありましたが、95行にまで減りました。1990年代後半の金融危機のころに破綻したり統合したりしたケースが多かったことや、ここ十数年の超低金利によって経営体制の強化が迫られ、統合が進んだことによるものです。
利ザヤ拡大で業績好調、一方で債券価格下落の損失も
金融庁が集計した地方銀行合計の2026年3月期決算は、純利益が前年比4956億円(37.9%)増の1兆8043億円でした。好業績の要因は、日銀が2025年末までに政策金利を0.75%まで引き上げたことです。地銀は貸出金利を引き上げることができ、預金者に支払う利息との差である利ざやが拡大しました。地銀最大手の横浜銀行を持つ横浜フィナンシャルグループ、千葉銀行、地銀4行を持つ九州最大手のふくおかフィナンシャルグループ、静岡銀行が中核のしずおかフィナンシャルグループなどは2027年3月期には純利益が1千億円の大台に乗ると見込んでいます。
こうした中、利上げの影響で決算の数字が悪化する地方銀行もあります。群馬や埼玉が地盤の東和銀行は244億円の純損失を出しました。貸し出しは好調だったのですが、国債や地方債の売却損が響きました。国債の金利は2024年からの金利上昇局面で上がりましたが、保有している国債の価格は反対に下がりました。東和銀行は含み損を大きくさせないために安くなった国債を売って損失を計上したのです。国債などの債券をたくさん持っている銀行にとっては、金利上昇は保有している国債の価格を下げることにつながり、利ざやが増えると喜んでばかりもいられない状況にあります。
自動車産業支援のための8行の連携も
地方銀行の統合の流れは今も続いています。規模の小さい銀行がまだ多いと考えられているためです。2026年3月にはしずおかフィナンシャルグループと愛知県を地盤とする名古屋銀行が2028年4月をめどに経営統合すると発表しました。また、2026年5月にはあいち銀行を傘下に持つあいちフィナンシャルグループと三重県を地盤とする三十三銀行の親会社である三十三フィナンシャルグループが2027年4月1日をめどに経営統合することで基本合意したと発表しました。経営統合ではありませんが、滋賀銀行(大津市)と池田泉州銀行を傘下に持つ池田泉州ホールディングス(大阪市)は2026年4月に資本業務提携を発表しています。2026年2月には、全国8つの地方銀行が自動車産業の支援のために連携して取り組むという協定を結びました。自動車関連を基幹産業とする地域の銀行で、広島、中国、名古屋、静岡、横浜、群馬、足利、山形の8行です。ひとつの産業を地銀が連携して支援するという取り組みはめずらしく、成果が注目されます。
(写真・自動車産業支援についての広域連携協定の締結式=2026年2月27日、広島市中区)
地方経済活性化のための地銀の役割は大きい
銀行業界は、三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3つのメガバンクがあり、日本の金融の中核を担っています。地方銀行の役割はメガバンクが取引の対象にしていない地方の企業を金融面から支援していくことです。東京一極集中がいわれる中、地方の企業は資金不足や人手不足という悩みを抱えています。東京だけ栄えて、日本全体が枯れてはいけません。地方経済の活性化に占める地銀の役割には大きいものがあります。働く人にとって、身近な地方の企業を支えることのほうが仕事の手ごたえは大きいのではないでしょうか。金融の仕事に魅力を感じている人の中で出身地やその近くに住んでもいいと思う人にとって、地銀は就職先として有力な選択肢になると思います。
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