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2026年06月04日

待遇改善に取り組むが、資材費高騰と人手不足が重くのしかかる建設業界【業界研究ニュース】

建設・不動産・住宅

 大都市では次々に高層ビルが建っています。建設業界はさぞや活況だろうと思いがちですが、実はそうでもありません。もともと現場作業員の人手不足という課題があったうえ、円安などの影響を受けた資材費の高騰があり、利益が圧迫されていました。そこに中東情勢の緊迫化による建築資材の高騰や不足が追い打ちをかけています。全国にある市街地の再開発計画は予算が膨らみ、計画を見直すところが増えています。

 一方で、大都市部ではマンションやオフィスの需要は衰えません。2027年に横浜で開かれる国際園芸博覧会の会場建設は佳境に入り、人工知能(AI)の発達に伴いデータセンターや半導体関連工場の建設も盛んです。建設業界は資材費高騰や人手不足というマイナス要因と衰えない建設需要とのせめぎあいの中で、どうやって利益を確保していくかというむずかしい時期を迎えています。建設業といえば、きつい、危険、汚いという「3K職場」のイメージを持つ人もいるかと思いますが、業界はこうしたイメージを払拭して人手を確保しようと待遇改善に力を入れています。
(写真・再開発が進む東京・渋谷駅周辺=2025年8月3日/写真は朝日新聞社)

売上高1兆円を超えるスーパーゼネコンは5社

 建設業を行うには国土交通大臣の許可が必要です。日本全国では48万3823(2025年度末)もの業者が存在し、その多くは中小規模の業者です。業者数は21世紀に入るころには約60万あり、そこからはかなり減ったのですが、ここ数年は横ばいです。また、建設業で働く人は全国に478万人(2025年)いて、これは働く人全体の約7%にあたります。こうした多くの建設会社の中で設計、施工、研究のすべてをおこなっている大規模会社をゼネラルコンストラクター略して「ゼネコン」と呼びます。大規模工事で元請けになることが多い会社で、その中でも飛びぬけて大きい会社を「スーパーゼネコン」と呼んでいます。鹿島大林組大成建設清水建設竹中工務店の5社を指すことが多く、いずれも売上高は1兆円を超えています。

全国で再開発計画の中止や延期

 大手建設業界が直面している課題は、ここ数年の建築費高騰に中東情勢が拍車をかけ、全国で再開発計画の延期や中止が相次いでいることです。東京・日比谷にある帝国ホテル東京本館は建て替えを予定していたタワー館について2026年3月、当初2024年度中としていた解体工事着工の予定を延期し、2030年度末を目指すと発表しました。さらに2031~36年度としていた本館の建て替えは時期が未定となりました。資材費や労務費が高騰し、計画を見直さざる得なくなったということです。ほかにも東京・中野にある中野サンプラザの建て替えは白紙に、新宿駅南街区の再開発は完了時期が未定になりました。大阪では御堂筋沿いにある大阪ガス本社ビル周辺の再開発が着工延期に、名古屋では名鉄名古屋駅の上に建つ5棟のビルを2つの巨大ビルに建て替える計画が白紙になりました。札幌駅前の再開発プロジェクトも延期、や博多駅の線路上に建てる予定だった複合ビルの建設も中止になるなど、計画の延期や中止は挙げればきりがないほどになっています。資材全体ではここ5年間で値段が約4割上がっているとされ、技能労働者の労務単価も5年間で約28%上がり、しかも時間外労働の上限が設けられました。建設計画の前提となるコストが短期間でこれだけ大幅に上昇しているわけで、計画の見直しは当然の成り行きというしかありません。
(写真・再開発計画が白紙になった中野サンプラザ=2026年6月2日)

AIの活用や木造高層ビルも

 業界では新しい取り組みもおこなわれています。ひとつは生成AIの活用です。大成建設はAIを使って、土木工事の「全体施行計画書」の作成を支援するシステムを開発しました。工事の着工前に発注者へ提出しなければいけない書類で、つくるのにかかる時間は約85%短くなるそうです。ほかにも技術者が目視でおこなっていた建物点検の一部を画像異常検知AIがおこなったり、360度カメラと画像認識AIを使って建築現場を自動で図面化したりもしています。もうひとつの取り組みは、木の活用です。東京・日本橋では、高さ84メートルの高層木造オフィスビルの建設が進んでいます。竹中工務店が施行しており、2027年1月に完成すれば日本でもっとも高い木造ビルになります。また、東京・丸の内では東京海上日動火災保険の高さ100メートルとなる新・本店ビルが建設中ですが、こちらにも柱や床に大量の木を使用する予定です。居住性がいいことに加え、環境にやさしいというアピールにもなります。

鹿島は土木に強く、竹中はビルが中心

 スーパーゼネコン5社にはそれぞれ特徴があります。鹿島は青函トンネルや瀬戸大橋建設にも関わり、土木工事に強いとされています。また、日本初の超高層ビルの霞が関ビルも建設しました。大林組は東京スカイツリーを建設した会社で、リニア新幹線工事もおこなっています。清水建設は世界遺産になった国立西洋美術館や特徴的なデザインの国立代々木競技場などを建設しました。大成建設はスーパーゼネコンのなかで唯一の非同族経営で、新国立競技場を建設した会社です。竹中工務店は江戸時代初めに創業した歴史のある会社で、スーパーゼネコンのなかで唯一の非上場会社です。土木工事の割合は他社に比べて小さく、関西地区のビル建築に強い会社です。最近まで日本で一番高いビルだったあべのハルカスを建設しました。
(写真・霞が関ビルディング=2018年4月16日)

男女を問わず選ばれる業界になれるか

  建設業界は人手不足を解消するために、社員の待遇改善や現場の労働環境改善に取り組んでいます。大手では転勤が多いこともあり、大成建設は2025年7月から転勤する社員に支給する手当を大幅に引き上げました。これまで転勤する場合、引っ越し費用や数万~数十万円の準備金を会社が負担してきましたが、新制度ではそれに加えて「転勤手当」を新設し、一時金として最大100万円を支給することにしました。家族帯同の転居を後押しする狙いがあります。また、女性が働きやすい職場づくりも課題です。日本建設業連合会(日建連)は女性活躍を後押しする2029年度までの5か年計画をつくり、女性の管理職の割合を2024年の3.5%から5%に、技術者に占める女性の割合を8%から12%に引き上げるとしています。そのために工事現場で女性が快適に使えるトイレや更衣室の整備などを進めたり、ハラスメント防止に力を入れたりすることにしています。また、業界では暑さへの対策も進んでおり、冷却プレートが装着できるファン付きベストを導入したりミスト噴射や換気機能が付いた快適トイレを導入したりする試みがおこなわれています。これまで一般に持たれていた建設業のマイナスイメージをできるだけ小さくして、男女を問わず選ばれる業界になろうと努力しています。
(写真・大林組が用意した、熱中症対策ハウスと名付けられた小屋。内部には、横になれるベンチや塩あめ、冷えた飲料などが準備されていた=2025年5月22日)

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