たくさんの品ぞろえの電気製品を広い売り場で安く売っている家電量販店。みなさまにとってもなじみ深い業界だと思いますが、いま実は変化を迫られている業界でもあります。人口が減少する国内ではこれまでのやり方だけでは成長がむずかしく、事業領域の拡大を本格化させているためです。
量販店大手のノジマは、日立製作所と共同で家電事業を手がける新会社を設立すると発表しました。日立製作所の家電事業を新会社に移し、株式の8割をノジマが保有するため、日立の家電事業はノジマの傘下に入ることになります。これでノジマは家電を販売するだけではなく、開発や生産にも直接かかわることになります。ほかの家電量販店でも住宅事業や金融事業に参入したり、電気自動車を販売したりするなど事業を広げる動きが目立っています。また、売り方も店舗での対面販売からオンライン販売への移行に力を入れたり、古い家電をリユース家電に再生して販売したりすることに力を入れたりしています。家電量販店というジャンルに収まりきらない業態の会社がこれからは増えてきそうです。競争の激しい業界ですが、変化にいち早く対応して動けるかどうかが大事な時代に入っています。
(写真・家電量販店の炊飯器売り場。メーカー各社が高機能を競う=2025年12月5日、東京都千代田区のビックカメラ有楽町店/写真はすべて朝日新聞社)
家電大型専門店の販売金額は微増
経済産業省が発表している商業動態統計調査によると、家電大型専門店の2025年の年間販売金額は4兆9214億円でした。これは前年より4.1%増えています。2024年は2.1%増、2023年は1.1%減となっており、ならしてみると微増傾向です。ただ、最近のインフレ傾向を加味して考えると、家電量販店の成長は頭打ちとみることができそうです。これは人口減少に伴う消費の減退に加え、価格が比較的安い中国製や韓国製の家電が増えていることやアマゾンや楽天などの通販サイトでの家電の購入が増えていることなどが影響しているとみられます。
売上高1兆円超えの最大手はヤマダHD
家電量販店各社の売上高を見ると、もっとも大きいのはヤマダホールディングス(HD)で1兆6290億円(2025年3月期)です。次いでビックカメラが9744億円(2025年8月期)、ノジマが8534億円(2025年3月期)、ヨドバシカメラが8162億円(2025年3月期)、エディオンが7681億円(2025年3月期)、ケーズホールディングス(HD)が7380億円(2025年3月期)、 Joshin が4032億円(2025年3月期)、コジマが2827億円(2025年8月期)と続きます。
(写真・ヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)の茨城県内にある店舗)
ノジマはメーカーからの派遣店員を置かず
各社ともさまざまな特徴があります。最大手のヤマダHDは、家電販売以外の事業に積極的に進出しています。住宅建設事業、損害保険や住宅ローンなどの金融事業、家電製品などを再利用するリユース事業、中古車や電気自動車の販売事業などです。
ビックカメラは駅前などの一等地に店舗を構える戦略で、パソコンなどの電子機器のほか寝具、衣料、酒類などの非家電分野にも力を入れています。日立の家電部門を傘下に納めることになったノジマは、少し前には携帯電話事業のコネクシオ、インターネットのニフティ、パソコンメーカーのVAIOを買収しています。また、メーカーからの派遣店員を撤廃し、偏らない接客体制をとっているのが特徴です。ヨドバシカメラはオンラインでの販売比率が高く、エディオンは西日本を中心とした地域密着戦略や住宅リフォーム事業に特徴があります。ケーズHDはその場で現金値引きをすることで安さを前面に打ち出しているという特徴があります。Joshinはプラモデルやゲームなどのエンタメ製品が充実しています。コジマはビックカメラの傘下にあり、ビックカメラと連携した店舗を展開しています。
(写真・新会社の設立を発表したノジマの野島広司社長(右)と日立製作所の網谷憲晴執行役専務=2026年4月21日)
発祥の地から広げる展開
家電量販店はそれぞれ発祥の地があり、地域的に偏りがあることが多くなっています。ヤマダHDは群馬県高崎市に本社があり、関東に比較的手厚く展開しています。ビックカメラは東京・池袋が発祥の地で店舗は関東に多くなっています。ノジマは神奈川県相模原市が発祥で神奈川を中心に展開しています。ヨドバシカメラは東京・新宿が発祥の地ですが、駅前や駅直結の一等地に出店する戦略をとっており、大阪の店舗は大阪駅と直結しています。エディオンは広島県で生まれ、今も西日本に強い会社です。ケーズHDは茨城県で発祥した会社で、東北・北海道など東日本に強みを持っています。Joshinは大阪で発祥した会社で、阪神タイガースの公式スポンサーをつとめるなど近畿圏では強さをみせています。コジマは栃木県が発祥の地で関東を軸に全国展開をしています。
(写真・阪神タイガース日本一を記念したセールを開催するジョーシン日本橋店=2023年11月7日)
時代の変化をとらえられる人材
家電量販店は20世紀終盤に急速に成長し、いわゆる「街の電気屋さん」を淘汰していきました。ただ、今では家電の量販だけでは成長できなくなっています。そのため、家電の製造に入っていったり、住宅事業など他の分野に広げていったり、売り方もリアルな店舗販売からオンライン販売に切り替えていったりしているのです。この流れは今後も進みそうで、将来は家電量販以外の事業が柱になる会社も出るかもしれません。働く人はいろいろな事業に挑戦できる環境にあり、時代の変化をうまくとらえることができ、それを事業化できる人材が求められている時代と言えます。
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