2025年末にガソリンの暫定税率が廃止され、ガソリンの販売価格が下がりました。ドライバーには朗報で、日本全体の消費者物価を押し下げる力にもなっています。価格下落によってガソリンの消費量はいくぶん増えることが予想され、原油を輸入し精製してガソリンを販売する石油元売り会社の業績にもプラスになるものとみられます。
ただ、気候変動対策として二酸化炭素(CO2)の排出を減らす「脱炭素」が求められている流れは変わらず、石油元売り業界はガソリンなどの石油製品の販売から再生可能エネルギーなどの新しいエネルギーにシフトする動きを続けています。使い終わった食用油からつくる持続可能な航空燃料(SAF)や水素の製造販売などがその動きで、まだ緒に就いたばかりですがこれから大きな事業に育つ可能性があります。石油元売り業界は20世紀後半から再編が進み、今は大手3社の体制になっています。過当競争といわれた以前よりは安定した業界になっていますが、脱炭素が実現できるか、挑戦が続きます。
(写真・東京都内のガソリンスタンド=2025年11月/写真はすべて朝日新聞社)
経営統合が進み、今は大手3社体制に
日本の石油元売り会社は中東などから原油を輸入し、国内の製油所でガソリン、灯油、軽油、重油などに精製して販売しています。メジャーとよばれるアメリカやヨーロッパの大手石油会社とちがい、海外の油田の利権はあまり持っていません。20世紀の高度経済成長期には石油の消費量が飛躍的に増え、石油元売り会社は15社ありました。しかし、過剰設備になったり石油製品の輸入が自由化されたりして、20世紀終盤から再編が進み、2019年に出光興産と昭和シェル石油が経営統合して出光興産となったのを最後に、ENEOSホールディングス(HD)、出光興産、コスモエネルギーホールディングス(HD)、キグナス石油、太陽石油の5社にまで減りました。このうちキグナス石油と太陽石油は規模が小さく、ENEOSHD、出光興産、コスモエネルギーHDの大手3社体制といえます。
ENEOSがながらく日本の中核に
大手3社を売上高で見ると、ENEOSHDが最大で、12兆3224億円(2025年3月期)です。次いで出光興産が9兆1902億円(2025年3月期)、コスモエネルギーHDが2兆7999億円(25年3月期)と続きます。ENEOSHDは1888年に新潟県で国産原油を掘る会社として誕生した日本石油が源流で、それ以来ずっと日本の石油会社の中核となっています。出光興産は1911年に出光佐三氏が門司(今の北九州市)で創業し、漁船の燃料油の販売から戦後に石油精製事業に乗り出し、海外から石油を輸入して精製する元売り会社として大きく成長してきました。コスモ石油は1986年に丸善石油と大協石油などが合併して誕生しました。
(写真・ENEOSのロゴ)
ガソリンスタンドはピークの半分以下に
石油元売り会社の中心はガソリン販売ですが、日本の自動車保有台数は横ばいになっています。1台当たりの燃費は向上しているため、ガソリンの販売量は減少傾向にあります。ガソリンスタンドの数はピークだった1994年には6万を超えていましたが、2024年度末は約2万7千と半分以下に減っています。今後もハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)などが増えてガソリン消費量の減少傾向は続くとみられ、ほかの石油製品も脱炭素の流れから減少傾向になるとみられています。
コスモは日本初のSAFの量産始める
こうしたことから石油元売り会社が力を入れているのが新エネルギーです。コスモエネルギーHDは2025年末に国内初のSAFの量産を大阪府の堺製油所で始めました。SAFは天ぷらなどの揚げ油を回収し、それを航空機の燃料にするもので、原油からつくる航空燃料に比べて製造から消費までに排出されるCO2が8割ほど少ないとされます。
ENEOSHDが力を入れているのは水素の製造販売です。水素は燃やしてもCO2を出さないので、再生可能エネルギーを使って水素を製造すれば、CO2をまったく排出しないエネルギーになります。発電や製鉄、燃料電池車などに水素をつかうことを想定し、水素を供給する水素ステーションをすでに全国に展開しています。ただ、燃料電池車の普及のスピードが予想よりも遅いのがネックです。
出光興産は燃やしてもCO2を出さないアンモニアの供給に力を入れています。また、次世代のリチウムイオン電池として注目されている全固体電池の研究開発にも力を入れています。
(写真・国内初の大規模な「持続可能な航空燃料(SAF)」の製造プラント=2025年3月6日)
世界情勢が業績や仕事に大きな影響
石油元売り会社は世界情勢の影響を受ける会社です。原油価格は戦争や大規模テロが起きたり感染症が流行したりすると上がります。20世紀には中東での戦争や革命の影響を受けて2度の石油危機(オイルショック)がありました。世界経済も日本経済も大きなダメージを受け、日本の石油元売り会社は石油の確保に右往左往しました。逆に世界経済が低迷した時には価格が下がり、石油元売り会社の売上高は低迷することになります。上がっても下がっても急激な変動は業績や仕事に大きな影響を与えます。志望する人は世界情勢に関心を持って、原油価格の先行きを考えるようにするといいでしょう。
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