外食業界は売上高が増えています。原材料費の高騰を価格に転嫁したことにより客単価が上昇しているためです。しかし、客単価が上がったことにより客数の頭打ち感も少しずつ出ています。また、深刻な人手不足は解消の見通しが立ちません。飲食店店長などの店舗責任者の約3割が過労死ラインに届く週60時間以上働いているという実態が厚生労働省の調査で昨年明らかにされました。人手不足は日本全体の問題ですが、中でも外食業界は深刻と言われます。2月8日投開票の総選挙では自民党を含めて多くの政党が食料品の消費税率ゼロを訴えています。実際にゼロになれば、消費税10%がかかる外食との差は大きくなり、家庭で食べる内食やテイクアウトが増え、外食業界にはダメージとなりえま す。
一方で、外食業界は国内で新しい業態を開発したり、海外での展開を加速させたりしています。外食業界はわたしたちにとってなじみのある業界ですし、アイデア次第で大きなヒットを生むことができる業界でもあり、競争の激しい業界でもあります。就活生の中にも外食業界でアルバイトをしたことのある人は少なくないと思います。アルバイトからそのまま就職して社長になったという人もいます。食やマーケティングに興味のある人にとってはやりがいのある業界だと思います。
(写真はiStock)
客単価を上げたことで売上高が増加
外食産業の業界団体である日本フードサービス協会によると、2025年の外食産業全体の売上高は7.3%増でした。円安を背景にした原材料高が続き、メニュー価格の改定によって客単価が4.3%上がったことが大きな要因です。協会では外食の業態を「ファーストフード」「ファミリーレストラン」「パブ/居酒屋」「ディナーレストラン」「喫茶」「その他」の6つに分類していますが、すべての分野で売上高は増えました。増え方の大きいのは「喫茶」「ファーストフード」「ファミリーレストラン」で、比較的単価の安い業態が好調だったことがうかがえます。同協会では「消費者の節約志向もさらに強まっている」と分析しています。
ゼンショーが業界で唯一1兆円を超える
日本の外食業界で売上高がもっとも大きいのはゼンショーホールディングス(HD)です。業界で唯一売上高が1兆円を超え、2位以下を大きく引き離しています。牛丼の「すき家」、回転ずしの「はま寿司」、ファミリーレストランの「ココス」などを展開しています。2023年にはハンバーガーチェーンのロッテリアを買収し、これまで持っていなかったハンバーガーチェーンの業態を加えました。新たにゼッテリアのブランドを追加して展開し、今年の春までにロッテリア全店をゼッテリアに統一することが決まっています。そのほか外食大手としては回転ずしの「スシロー」などを展開するFOOD&LIFE COMPANIES、ハンバーガーチェーンの日本マクドナルドHD、ファミリーレストランの草分けで「ガスト」「バーミヤン」などを展開するすかいらーくHD,定食の「大戸屋」など幅広い業態を展開するコロワイド、「丸亀製麺」などを展開するトリドールHD、リーズナブルなイタリア料理の「サイゼリヤ」を展開するサイゼリヤ、回転ずしの「くら寿司」を展開するくら寿司、牛丼が中心の吉野家HDなどが挙げられます。ほかにも売上高に大きな差のない企業が続きますので、関心のある人は調べてみてください。
(写真・ゼンショーHDが展開する「すき家」の店舗=2025年11月7日、東京都台東区/朝日新聞社)
待遇改善で年収は最大2000万円に
外食業界の大きな課題は人手不足です。ハローワークで仕事を探す人1人に対して何件の求人があるかを示す有効求人倍率を見ると、飲食調理や接客・給仕という外食業界の倍率は2倍を超え、人手不足を表しています。注文をタブレットでおこなうようにしたり、配膳ロボットを導入したりといった対策が進んでいますが、調理場やレジの人員削減はむずかしく、人手不足は慢性化しています。その余波として問題視されているのが飲食店の店長の長時間労働です、人手不足解消のためトリドールHDでは店長制度を刷新し、500~520万円程度の年収を最大2千万円に引き上げる報酬制度を導入しました。ほかにも今春闘で大幅な賃上げをするところが多いとみられています。
(写真・丸亀製麺の看板=2019年/朝日新聞社)
食品の消費税率ゼロなら10%の差に
総選挙で自民党などが物価高対策として食品の消費税率をゼロにすると主張していることも、外食業界の課題として浮上しています。今は食品の消費税は軽減税率の8%が適用されていて、外食は10%です。もし食品の消費税率がゼロになったとすれば、外食とは10%の差になります。1000円だったら100円の違いになるわけで、大きいと感じる人が多いでしょう。外食でもテイクアウトだったら消費税はゼロになります。それだったら外食するより食料品を買って家で調理しよう、テイクアウトですまそうということになりそうです。まだ公約の段階なのでどうなるかわかりませんが、食品の消費税をゼロにするなら外食業界への対策が議論になると思われます。
スシローは上海で最大14時間待ちの人気
人口が減少している国内の市場は今後伸びる余地が小さく、一方で日本の食が海外で評価されていることから、海外展開も進んでいます。ゼンショーHDの海外の売上高はすでに全体の3割を超えており、それをさらに加速させようと2025年度からの3年間で海外に3000店を新規に出店する計画です。FOOD&LIFE COMPANIESもスシローの海外展開に力を入れています。2025年12月には中国・上海に初出店し、最大14時間待ちの大人気となりました。トリドールHDの丸亀製麺も海外進出を急ピッチで進めていて、2025年3月末段階で307店舗を展開しています。国ごとに変えたトッピングで日本のうどんをさまざまにアレンジしています。
(写真・日本食人気が高いシンガポールでは、回転ずしチェーン「スシロー」に多くの人が並ぶ=2023年11月24日/朝日新聞社)
さまざまな会社があり個別の会社研究も大事
外食業界は人手不足の中、男女を問わず優秀な人材を求めています。特に海外展開に力を入れている会社が多いため、英語ができるなど国際的な仕事ができる即戦力は貴重な人材になります。長時間労働とか負荷の大きい労働といったイメージから脱皮するための待遇改善にも力を入れています。また、少し前ならタピオカ、今なら麻辣湯などブームになるようなヒットもあり、感度の高い人やアイデアを考えることが好きな人はヒットメーカーを目指すこともできます。ただ、業界には大小さまざまな会社があり、ひとくくりの業界研究だけでなく個別の会社研究も大事になると思います。
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