業界MAP

化学

業界の仕組み

さまざまな製品を産む化学工業、世界一のシェア誇る分野も

ill_kagaku.gif プラスチックから合成ゴム、半導体素材、合成繊維から炭素繊維、医薬品、化粧品にいたるまで、幅広い製品が生み出されていく。化学工業は、石油や天然ガスを大もとの原料として、分解・合成などの化学反応を加えて次々に中間材を製造。その中間材をさらに加工するメーカーが分業体制を網の目のように張りめぐらせ、中間製品、最終製品を生み出す。言ってみれば、日本の基幹産業の自動車、エレクトロニクス、繊維、医薬品などを素材面から大きく支えている業界だ。

 それらの過程で世界シェア金メダルの製品も少なくない。たとえば、三菱ケミカルHDのアクリル樹脂原料、旭化成のリチウムイオン電池用セパレータ、信越化学工業の塩化ビニル樹脂、半導体シリコン、合成石英、三井化学のプラメガネレンズ材料、東レの炭素繊維などだ。銀、銅メダルも数多く、日本の技術力が結集した業界とも言える。その一方で、近年は中国、台湾、韓国など新興メーカーの追い上げは激しく、各社とも海外展開や高機能製品への経営資源集中を進めている。

エチレンをめぐり大きな変化の中に

 原料に近い川上部門の石油化学業界を見ると、三菱ケミカルHDが3兆3761億円(2017年3月期)の売り上げを誇りナンバー1。ついで住友化学、旭化成、三井化学、信越化学工業、昭和電工などが有力メーカー。石油化学企業の基本は、粗製ガソリンであるナフサから産業のコメといわれる化学品基礎原料のエチレンをつくることだ。しかし、米国で進むシェールガス革命(後述)により、この工程にも大きな変化が生まれつつあり、業界は大きな変化の中にある。石油化学メーカーは、新たに医薬や医療のヘルス事業や住宅事業など多分野への進出を図っている。

炭素繊維に強い日本メーカー

 川下の方に目を転じると、新興国からの追い上げを受けた繊維メーカーは、廉価な汎用繊維の生産拠点を海外に移し、国内では付加価値の高い高機能繊維に重点を置いている。東レはボーイング社のB787、B777X、エアバス社にも炭素繊維を供給。トヨタの燃料電池自動車にも炭素繊維と樹脂の複合材料が使われた。帝人はゼネラル・モーターズと共同で炭素繊維部材の自動車開発を進めている。炭素繊維は東レ・帝人・三菱レイヨンの日系企業3社で世界シェアの7割を占める。

最新トピックス

「三菱ケミカル」が誕生

 三菱ケミカルHDの中核素材系3社(化学・樹脂・レイヨン)が2017年4月に統合。日本最大級の総合化学メーカーとして「三菱ケミカル」が誕生した。

シェールガス革命で価格競争

 米国のシェールガス革命が石油化学業界を大きく揺さぶっている。これまで日本の石油化学会社は、原油価格の動向に大きく影響されるナフサからエチレンを精製してきたが、米国はこのシェールガスからエタンを経て安価にエチレンを精製できるようになった。さらに中東では以前からエタンよりエチレンを精製し、中国でも大規模なエチレン設備増強の動きが続いた。国際的な価格競争の荒波にもまれることになった日本の石油化学会社では、2016年初頭までに生産能力の絞り込みが進んだ。17年後半頃からは、米国でシェールガス由来の化学プラントが相次いで操業すると見られ、価格競争の脅威は続く。そこで日本メーカーは、安価な原料を調達できる拠点での石油化学事業を強化する戦略に出ている。例えば、住友化学はサウジアラビアで同国の国営石油会社と合弁でペトロ・ラービグを設立し、信越化学工業は米国でエチレンプラントを建設している。

強化分野でM&Aが活発化

 大手各社は高機能分野や医薬関連など収益性が高い事業を強化、国内外でM&Aを活発化させている。三菱ケミカルHDは再生医療ベンチャーのClio社(日本)を買収。電気自動車などに使われるリチウムイオン電池材料で世界シェア1位の旭化成は、その主要素材を製造する米ポリポア・インターナショナルを買収。住友化学はインド農薬会社エクセルクロップケアや核酸医薬品ベンチャーのボナック(日本)を買収している。

採用の傾向

主な採用職種

 「基礎研究」「開発・工業化研究」「生産技術研究」「商品開発」「購買・物流」「製造管理」「設備管理・保全」「営業」「技術営業(営業同行して素材や商品の機能を説明する技術営業職)」等。

理系は幅広い分野から採用

 研究開発職などでは理系の修士課程修了者を求める企業が多いようだ。また、化学企業は、特有の巨大製造プラントを設計、建築、維持しなければならない。このため、多彩な理系業種を必要としており、化学系だけではなく、機械や情報、電気・電子分野の理系学生なども幅広く採用している。

積極姿勢が必要な文系

 化学企業にとって、中間製品などを提供する顧客企業は幅広く、多様化している。このため、文系の営業職にとっても、多彩な製品の広がりや新しい技術の展開についていける理解力と積極的な姿勢が必要だ。コミュニケーション能力の高さに加えて、製品知識をていねいに学んでいく能力も備えていたい。積極的に海外展開しているグローバル化企業では語学力も重視しているようだ。

【主要各社の大卒採用計画】
(2018年4月入社、カッコ内は2017年度実績)
帝人グループ/ 124(133)、東レグループ(短大、高専、専門学校、高卒を含む)/420(369)、旭化成グループ/ 565(515)、住友化学/未定(161)、富士フイルムグループ/ 521(572)