業界MAP

化学

業界の仕組み

網の目のような分業体制

 あらゆる工業用品や家庭用品に不可欠な化学製品。樹脂、ゴム、合成繊維など多岐にわたるが、いずれも石油や天然ガスなどを原料としている。一般的には、まず石油精製時に取り出される「ナフサ」と呼ばれる粗製ガソリンから、エチレンなどの「石化基礎品」がつくられる。さらにポリエチレンなどの「誘導品」に姿を変え、最終的にフィルム、合成ゴム、合成樹脂、合成洗剤などになる。こうした製造過程に関わるメーカー群は、一般消費者にはなじみが薄いものの、川上から川下まで網の目のような分業体制を取っており、日本の基幹産業を支えている。

 このうち原料に近い「石化基礎品」や「誘導品」をつくる川上に近い企業が「総合化学メーカー」と呼ばれる。業界首位は、2017年に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合して発足した三菱ケミカルを傘下に持つ三菱ケミカルホールディングスで、18年3月期の売上高は3兆7244億円。2位は住友化学で、2兆1905億円だった。以下、三井化学、信越化学工業、旭化成などが続く。

 国内には、石化基礎品のエチレンを生産する化学コンビナートが全国に点在する。千葉の京葉エチレン、三井化学、山口の出光興産、大分の昭和電工などがその代表格だ。

プラント停止で収益性改善

 総合化学メーカー各社は近年、エチレンプラントの能力削減を進めてきた。製造業の海外移転などにより、設備が過剰となったためだ。旧三菱化学が2014年、茨城のエチレンプラント1基を停止。翌15年には住友化学が千葉のプラントを停止した。化学品の市況回復もあって、各社の収益性は大幅に改善している。

 とはいえ、米国の「シェールガス革命」(最新トピックス参照)により、業界は大きな曲がり角に来ている。新たに医薬や住宅など他分野への進出を急ぐ会社も出てきている。

繊維は高付加価値で勝負

 繊維産業の需要は、衣料用が伸び悩む一方で、自動車向けなどの産業用は好調だ。日本化学繊維協会の調査によると、2017年の化学繊維の世界生産量は前年比3.7%増の6799万トンと、過去最高を記録した。ただ、その7割は中国で生産され、以下、インド、ASEANと続き、日本は1%にすぎない。日本勢は航空機などにも使われる炭素繊維をはじめ、高機能繊維に重点を置く。東レは18年、メキシコでエアバッグ生地の工場を稼働させた。帝人もエアバッグ生地の生産を中国で4割引き上げる。衛生材料に使われる不織布でも各社が攻勢をかける。東レのほか旭化成やユニチカ、ダイワボウホールディングスなどが設備増強や販路拡大に積極的だ。

最新トピックス

シェールガス由来のエチレン生産が本格化

 米国では2018年、シェールガス由来のエチレン生産が本格化した。大半はアジアへ輸出されるとみられる。これまで日本の化学会社各社は、原油価格の動向に大きく影響されるナフサからエチレンを精製してきたが、米国ではシェールガスからエタンを経て安価にエチレンを精製できるようになった。中東や中国でも大規模なエチレン設備増強の動きが続いている。価格競争の激化が避けられない情勢のため、日本の各社は、安価な原料を調達できる拠点で石油化学事業を強化する戦略だ。住友化学はサウジアラビアで国営石油会社と合弁でペトロ・ラービグを設立し、17年に第2期計画が完工した。信越化学工業は18年に米国でエチレン生産を始める。

中国が米国製原料の不当廉売で調査

 中国商務省は2018年3月、防腐剤などに使われる化学工業原料「フェノール」が米国などから不当に安く輸入されている疑いがあるとして、ダンピング(不当廉売)の調査を始めた。米国が知的財産権の侵害を理由に、中国からの輸入品に対して新たな関税を課す方針を決めた直後だけに、中国による報復の側面もありそうだが、調査対象には欧州連合、日本などからの輸入品も含まれている。

採用の傾向

主な採用職種

 「基礎研究」「開発・工業化研究」「生産技術研究」「商品開発」「購買・物流」「製造管理」「設備管理・保全」「営業」「技術営業(営業に同行して素材や商品の機能を説明する技術営業職)」など。

理系は幅広い分野から採用

 研究開発職などでは理系の修士課程修了者を求める企業が多い。業界特有の巨大プラントを設計・建築・維持しなければならないため、多様な専門業種がある。化学系だけではなく、機械や情報、電気・電子分野の理系学生なども幅広く採用している。

積極姿勢が必要な文系

 文系採用は営業職が中心。顧客となる企業は多様化しているため、さまざまな製品の知識や新技術に対する理解力や積極的な姿勢が求められる。コミュニケーション能力に加え、製品知識をアップデートしていく知識欲も備えておきたい。積極的に海外展開していくグローバル企業は、語学力も重視している。