
(写真はiStock)


朝日新聞デジタル版9月7日の記事「黒字なのに募る希望退職」では、電機大手OKI(沖電気工業)や食品大手の明治の例をとりあげています。OKIは2025年度決算は増益でしたが、今年8月から55歳以上の正社員や60歳の定年退職後に再雇用した人を対象に、退職金を上乗せする早期退職を募り始めたそうです。会社側は「変革期において新たなキャリア形成を希望する社員を支援する」として、リストラではないと説明しています。また、明治は「ネクストキャリア特別支援施策」として50歳以上を対象に早期退職を募りました。親会社社長は「人の流動化の中で新しいエリアで新しいチャレンジをしたいならば、会社として応援する」と語っており、中高年の社員を減らす目的はないとしています。
記事では、退職を募る制度に「ネクストステージ」「セカンドキャリア」といった言葉を盛りこみ、中高年の再挑戦支援を掲げる企業が増えているとしています。建前では中高年を減らす意図はないといいますが、「セカンドキャリア」という言葉をつかったり制度自体が中高年対象であったりして、できれば中高年を減らしたいという意図が透けてみえます。
背景には、大企業を中心に戦後維持されてきた日本型雇用システムの変化があります。仕事内容を限定せずに大学卒業予定者らをまとめて雇う「新卒一括採用」、年齢や勤めた年数に応じて処遇が上がる「年功序列」、定年まで同じ会社に勤める「終身雇用」の3つが日本型雇用システムの特徴です。ひとつの会社のなかでキャリアを積みあげ、年齢とともに給料が上がっていくという仕組みが長年日本では定着していました。しかし、最近ではこれを見直し、年齢や勤続年数よりも仕事の内容や成果を重視して処遇が決める企業が増えています。「年功序列」のなかで給料が高くなった中高年層は、いまや人を減らす際にまず狙われる、という構図になっているともいえそうです。中高年を減らすことで、若手を抜擢しやすくなるという効果も見込めます。
また、生成AIが普及したことで資料作成や管理といった業務が効率化され、いわゆる中間管理職のようなポストの必要性が減ってきたという点も無視できません。経営者にとっては、社員の数を少なくして利益を増やせると期待しやすくなるわけです。
AIの影響もあり事業構造の変化は激しく、たとえ黒字であっても株式市場からの視線は厳しくなっているといいます。業績が本格的に悪くなる前に構造改革をしておこう、という動きがこういった黒字企業の人員削減につながっている、とみられます。
いまのところ、こういった企業の人減らしの動きは中高年が対象になることが多くなっています。就活生のみなさんにとってはむしろ待遇もよくなり、社内で抜擢されるスピードも速くなって、よいことづくめのように聞こえるかもしれません。
ただ、いまの動きが長期的にはさきほど述べた日本型雇用システムの解体につながる可能性があることは、知っておいてもよいと思います。このシステムは年功序列と終身雇用を組み合わせ、将来的に好待遇となることを引き換えに、若いうちは低い待遇で働かせるという仕組みになっていました。この仕組みが崩れるということは、若いうちから好待遇を手にできることと引き換えに、年功序列、終身雇用もなくなり、いまやっている仕事の内容で待遇が定められる「ジョブ型」に近づいていくことを意味します。自分の生活をよりよく切りひらいていくためには、就職してからも常にスキルアップを行い、ハイレベルな仕事に挑戦しつづけていくことが必要になってきます。この変化が急激に進むとまでは言えませんが、就活生のみなさんはいずれ直面することになると思われます。内定獲得をゴールとしない姿勢が求められるのです。



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