2026年09月09日

学歴ネタにしたユーチューバーに批判殺到 学歴は就活にどの程度影響するのか?【就活イチ押しニュース】

テーマ:就活

 学歴や偏差値をいじって笑いを取るスタイルで知られているユーチューバーが、福島大学(福島市)をネタにした動画を投稿して批判が殺到、動画が削除され、出演者が謝罪する事態になりました。

 騒動を機に学歴に関するさまざまな感想がSNS上にアップされましたが、そのなかに学歴は就活で重視されるから重要なんだ、という投稿が複数ありました。実際、このユーチューバーも著書で「就職には『学歴フィルター』というものが多少なりとも存在します」と記し、学歴は武器になると強調しています。就活に挑む際に、学歴についてどう考えるべきなのでしょうか。(編集部・福井洋平)
(写真はiStock)

「超重要な問題、触らせたくない」発言で炎上

 まずは、今回の騒動について簡単にまとめます。

 このユーチューバーは男性2人組で、2017年に開設されたチャンネルでは全国の大学を訪問し、学生にインタビューする動画を多数投稿してきました。チャンネル自ら「大学の難易度と就職状況」がテーマだとしており、これまでも度を過ぎた表現で物議をかもしてきました。

 今回問題となったのは、8月末に公開されたとみられる福島大学に関する動画です。出演者は福島大学を入試時の偏差値ランキングをもとに「国公立の最下位」などと表現。大学の特徴を問われた学生が、2011年の東京電力福島第一原発事故をふまえた放射性物質の研究などが盛んに行われていることを語った直後、出演者の1人が「放射能とか原子力って超重要な問題なわけですよ」「福島大には触らせたくない」と発言。もう1人の出演者が「ヤメロオマエ」といさめるというシーンがありました。学生を嘲笑するかのような内容にSNSなどで批判が起き、福島大は9月1日に「(原子力災害や環境放射能などの)教育・研究活動に真摯に取り組んでいる学生・教職員が、尊厳を傷つけられることがあってはならないと考えております」と発信。結果的にこの動画は削除され、9月7日現在は発言した出演者が「不適切な発言大変申し訳ございませんでした」と謝罪する動画が公開されています。
(写真・福島大学の佐野孝治学長が1日に発表した声明=同大ウェブサイトより)

大学に「Fラン」発言 「第一志望0説」企画も

 福島大の佐野孝治学長は朝日新聞の取材に「この間、皆さんと作り上げてきた復興知を馬鹿にされたり、汚されたりしたという思いがあり、声明を出した」と語っています。そもそも福島大学がとりわけ原子力災害や環境放射能などの研究を積み重ねてきたことは、2011年の事故を踏まえてきわめて重要な意味をもっており、「触らせたくない」という発言はどういう意図であったとしても不当でしょう。動画の削除、謝罪は当然と考えます。

 あわせて佐野学長は偏差値をネタにした同チャンネルの表現について、「大学に入った後も学力はどんどん伸びるので、偏差値で学力や人間性まで測る考え方は教育者としては全く同意できない」と指摘しています。これも言うまでもないことで、大学はそれぞれに特色をもち、多様な研究テーマをかかえています。4年間で何を学び、どう過ごすかによって、その人の能力や人間性は大きく変わります。入学時の学力だけを万能の尺度のように振りかざす姿勢はこれも全く不当としか言いようがありません。

 このチャンネルでは以前から大学を「Fラン」(Fランク、入学がきわめて容易な大学を指すスラング)と揶揄したり、ある大学に対して「第一志望0人説」という企画で撮影したりと失礼な表現が多く、たびたび「炎上」しています。出演者の2人がかけあい、失礼な発言に対して「ヤメロオマエ」といさめる発言を挟むなどして「エンタメ」であるという体裁をとっているようですが、今回の騒動を見ても、エンタメとして受け取れる限度を超えていると感じる人は多いのではないかと思います。

「学歴フィルター」あるという主張受け入れられる

 一方、このチャンネルは長年多くの視聴者を抱え、現在でも80万人近い登録者がいます。「学歴は大事」という出演者の主張に、一定の支持があるからと考えられます。そして彼らが、学歴が大事という根拠のひとつとしてあげるのが、就活における「学歴フィルター」の存在です。出演者の1人が2025年に出版した著書には、「就職には『学歴フィルター』というものが多少なりとも存在します」「その理由は非常にシンプルで、大人には『皆さんの個性を一人ひとり見ていく時間と余裕がないから』です」と記されています。著書ではこういった学歴の有用性をもとに「学歴とは武器である」として、大学受験勉強のモチベーションをあげることをすすめています。

 少し古いデータですが、2023年に労働組合の中央組織・連合が3年以内に就職試験を受けた全国の15~29歳の男女を対象に行った調査で、企業が出身学校名を見て採用選考の対象とするかどうかを決める学歴フィルターを感じたことがある人は大卒・大学院卒で43.9%に達しました。採用にかけるコストを考え、企業側がいわゆる上位校を中心にオファーをかけるという構図はなくなったわけではなく、特定の大学を対象にした就活サービスも存在しています。大学の同級生や先輩のネットワークが就職にとって有利に働く、というケースもあります。就活と学歴はまったく関係ない、とは言えないのは事実だと思います。

 なお言うまでもありませんが、仮に学歴フィルターがあるからといって今回の動画のようにある大学を揶揄する、下に見るという姿勢をとっていいわけはなく、今回の騒動は何も免責されないということも強調しておきます。
(イラストはiStock)

学歴で就活の成否決まるというのは現実的ではない

 そして、学歴だけで就職活動の成否が決まるというのも、現実的な分析ではありません。冒頭に書いたように、学歴はあくまでその人の一側面しか表してくれません。2006年に経済産業省が提唱した「社会人基礎力」は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力で構成されています。大学入試の結果だけだと、この3つの能力の一部分しか類推できないことがわかるでしょう。さらに大学4年間での成長ぶりは、大学入試の結果だけでは判断がつきません。だからこそ、企業はペーパーテストだけではなく、インターンシップや面接を複数回重ねて選考をしているのです。

 人手不足が深刻化しているなか、生き残りをかけて優秀かつ自社にマッチする人材を必死で探している企業にとって、大学名は選考の要素になり得ても決定項にはなり得ないと考えるのが自然です。「学歴フィルター」を過大視せず、就活に関する情報を積極的に集めて動くことで、必ず納得のいく就職活動につなげることができると私は考えます。就活について悩んだときは、ぜひ大学のキャリアセンターなどに相談して、やるべきことをしっかり見据えて行動してほしいと思います。

◆朝日新聞デジタルのベーシック会員(月額980円)になれば毎月50本の記事を読むことができ、スマホでも検索できます。スタンダード会員(月1980円)なら記事数無制限、「MYキーワード」登録で関連記事を見逃しません。大事な記事をとっておくスクラップ機能もあります。お申し込みはこちらから。

アーカイブ

テーマ別

月別