2026年08月19日

消費税、食料品1%へ引き下げも異論噴出のなぜ? どういう影響ありそう? 考えてみよう【イチ押しニュース】

テーマ:政治

 8月5日の臨時閣議で、政府は食料品の消費税率を来年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を決めました。この秋の臨時国会に関連法案を提出し、成立すれば消費税導入以来はじめて税率が引き下げられることになります。

 税金が下がるというのは払う側にとってはありがたい話に聞こえますが、本当に手放しで喜んでいい話なのかどうか、実は多面的に考える必要がある政策でもあります。そもそもなぜ消費税は必要とされているのか、なぜいまの政府は減税方針を貫いているのか、なぜ反対意見が各方面から出ているのか。これから社会に出るにあたって、しっかり考える必要があるテーマです。基本的なところから理解できるようにしましょう。(編集部・福井洋平)
(写真・食料品の消費税率を1%に引き下げる意向を表明したことに関して取材に応じる高市早苗首相=2026年7月30日/写真はすべて朝日新聞社)

【議論の発端】高市首相が1月に「悲願」として掲げる

 食料品の消費税を下げるという議論は今年1月、高市早苗首相が衆院を解散し総選挙する際の記者会見で「悲願」として取り上げたことで始まりました。高市首相は会見で、物価高に苦しむ中低所得者の負担を減らすため、軽減税率(現在は8%)が適用されている飲食料品を2年に限り消費税の対象としないと訴えました。自民党は公約に、「『国民会議』において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します」と盛り込みました。

 税率がゼロではなく1%になる理由は、そのほうが早く実施できるためです。スーパーなどのレジは税率をゼロにすることを想定しておらず、改修には9カ月から1年程度かかる見込みとされています。一方1%にすると、3~6カ月で対応できることがわかりました。これを踏まえ自民党は、選挙後に与野党で構成された国民会議で税率1%への引き下げと、1%相当分の給付を組み合わせた「実質ゼロ」案を提示することになりました。
(写真・社会保障国民会議で発言する実務者会議長の小野寺五典・自民党税調会長=2026年7月29日)

【異論の原因】財源穴埋め策見えず、給付案も検討不十分

 一方で、野党からは反対意見が噴出しました。大きな理由は、財源の見通しが示されていないことです。

 税率引き下げによる税収減と、給付を行うことによる歳出増の穴埋めには約5兆円が必要とされています。高市首相はこれを国民からの借金である赤字国債には頼らず、歳出や歳入の見直しでひねり出すと語っていますが、具体的にどこをどうやってひねり出すかという議論は国民会議では行われませんでした。給付措置のほうがより即効性があり、また給付対象を本当に困っている人に絞ることで必要な財源も減らすことができるという意見が野党側から出ましたが、これも国民会議では十分議論されませんでした。

 このように財源確保の見通しが十分でないまま消費減税を行うと、これから財政が悪化するかもしれないという不安が高まり、さらなる円安を招く恐れもあります。そうするといま以上に物価が上がる可能性も否定できません。もともと物価高対策として消費減税を行うのに、これでは本末転倒です。そもそも消費税は社会保障を支えるための税で、私たちの生活や将来を安定させるためには必要不可欠な税といえます。議論が不十分という指摘を踏み越えて政府が消費減税を進めようとしていることは、しっかり認識しておく必要があります。

【消費減税のリスク】減税分は価格が下がらない?

 消費税を減税しても、企業や小売店が利益を多く確保し、物価が十分に下がらないという可能性も指摘されています。2009年にフランスのレストランでVAT(付加価値税)を19.6%から5.5%に引き下げたときは、事業者がその半分以上を吸収し、下がった店頭価格は2%分ほどだったそうです。また2020年にドイツがコロナ禍で実施したVAT一律減税でも、価格への反映率は約7割にとどまりました。これを防ぐためには、ちゃんと価格が消費減税分下がっているかをチェックする仕組みをつくって監視するべきだという指摘があります。

 一方でそもそも今は中東危機などで生産コストは上昇しており、事業者は値上げをせざるを得ない状況でもあります。消費減税で物価を下げろという圧力がかかることで、今度は逆にこういう本当に必要な値上げができなくなるという心配も出てきます。いずれにしても、世界情勢の影響で物価が上がっている局面での消費減税は、思ったような効果が得られない可能性もあるということは頭にいれておくべきでしょう。

 くわえて、消費減税は2年間限定であり、2年後にはふたたび税率を元に戻します。これが「増税」ととらえられ、消費がぐっと冷え込むリスクも指摘されています。
(写真・スウェーデンのスーパーの食品売り場。飲食料品(酒類を除く)は今年の4月から減税となっている=2026年7月8日)

【ダメージうける業界】外食産業、農業、地方自治体にも影響が

 消費減税により、直接的なダメージをうける業界もあります。

 たとえば、外食産業です。スーパーなどの弁当や総菜の消費税率が8%から1%に下がる一方、外食の税率は10%のまま据え置かれるため、割高感が出るためです。牛丼の「すき家」や「はま寿司」などを展開する大手外食会社、ゼンショーホールディングスの小川洋平社長は「リスクの高い判断が強行された」とコメントを出しています。

 また、農業団体などは、食料品の消費減税により農家の経営が圧迫されるとして、農家の負担を補う支援策を求めています。実は農家の多くは売上高が年間1千万円以下の「免税事業者」で、農産品の売り上げに含まれる消費税の納付が免除されています。消費減税が行われると農産品の売り上げは減る一方、肥料や農機具の仕入れで支払っている消費税は変わりません。免税事業者には還付などの仕組みがないため、経営が圧迫されるのです。

 また、消費税の約4割は地方税財源として、医療、介護、子ども・子育て支援などを支える重要な財源となっています。そのため、地方自治体からも財源を安定的に確保したいという声があがっています。自分の志望する業界にはどういった影響があり得るのか、この機会に考えてみるとよいかもしれません。

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