2026年06月11日

就職活動はAI使うと「チョロい」のか? 就活とAIの正しい関係を考える【就活イチ押しニュース】

テーマ:就活

 生成AIの進化はめざましく、いまや就職活動でもAIを使うことは当たり前といっていい時代になりました。では、AIを使えば就活は簡単に乗り切れるのでしょうか? おそらくその答えは「使い方次第」です。AIとどう向き合って就活に挑めばいいか、まとめてみました。(編集部・福井洋平)
(写真はすべてiStock)

「就活なんてチョロい」見出しの記事話題に

 就職情報会社マイナビの調査(2026年4月)によれば、就活における2027年卒学生のAI利用率は84.9%となりました。利用方法はESの推敲が71.8%と最も多く、次いで面接対策(56.2%)、ES作成(55.0%)、自己分析(54.2%)、業界研究(52.2%)となっています。2024年卒学生のときは18.4%でしたので、生成AIの活用が急速に一般化していることがデータから読み取れます。

 そんな中、ニュースサイトの「日刊SPA!」が6月7日に公開した記事「『就活なんてチョロい』中堅大から大手マスコミ5社内定。AIに自己分析から面接の台本まで丸投げした22歳の告白」が話題を呼んでいます。

 昨今は就活生有利の売り手市場と言われていますが、そのなかでもいまだに狭き門である大手マスコミにAIまかせで5社内定をとれたとすれば、かなり衝撃的な話です。AIはいまや、そこまで便利なツールになっているのでしょうか。

「想定質問50問考えてもらい模擬面接繰り返す」

 ただ、記事を読むと、「チョロい」という言葉の裏には、AIをしっかり使いこなす努力も見えてきます。

 記事によれば、この方はまずエントリーシート(ES)は1000字程度の設定であれば冒頭300字程度を書いてAI(チャットGPT)に水増ししてもらいました。そのあと自己分析もAIに聞いてポイントをつかみ、伝え方のレクチャーも受けたといいます。さらに面接対策では、「想定質問を50個考えて」と指示して問答集を量産し、アプリで模擬面接を繰り返したとあります。

 記事ではこの方は「ぶっちゃけ、就活なんてチョロいなと思いました」と感想を語っていますが、AIの使い方に関しては短絡的、ずるいという印象はなく、むしろまっとうな使い方で就活を乗り切った例だと思います。たとえば自己分析についてはマスコミの社風にあわせて自分の経歴のどこが強みになるかという形でAIに整理してもらい、高校中退から大学進学という経歴をピックアップしてアピールにつなげた、とあります。自分のこれまでの経歴をしっかり棚卸し、高校中退というできごとも含めて客観的に評価するという過程がなければ、たとえAIに相談したところで自分の強みを見つけることは難しかったでしょう。また、面接で想定質問を50個考えてもらい模擬面接を繰り返すという作業も、「チョロい」というよりも、AIを使いこなす技術と努力が求められる作業です。

企業はESの評価を重視しない方向へ

 一方この記事にもありますが、ESの作成については確かに生成AIのめざましい進化によって、ある程度は「チョロい」分野になったかもしれません。生成AIの文章力はまさに日進月歩で飛躍し、材料を入力するだけでたちどころにポイントを抑えた読みやすい文章にしてくれます。AIに「優秀な就活アドバイザー」や「志望企業の採用担当者」といった人格をあたえてESを添削してもらう、といったこともできます。冒頭紹介した調査でも7割以上の学生がES推敲にAIを使っています。AIでのESのブラッシュアップ方法や、面接官として活用する方法は、下記の記事もぜひ参考にしてください。

ESの「要約」「見出し作成」で面接にも活かす 弱点も把握を【就活のキホン】
「面接の壁打ち」をしよう!【就活のキホン】

 ただ、こうした学生の動きに応じて、いま採用側ではESによる選考を重視しない方向に進みつつあります。たとえばロート製薬は27年卒採用からESによる書類選考を廃止し、人事担当者との15分間の対話を採用プロセスの第一ステップとする「Entry Meet(エントリーミート)採用」を導入しました。ソフトバンクは2025年から自己PRや志望動機を書き込むESを廃止し、代わりに学生に動画を提出してもらう形式としています。また、採用数を絞り込む「厳選採用」を掲げる大和ハウス工業も就活ニュースペーパー「人事のホンネ」のインタビューで、「私たちはESで合否を判断することはない」と話しています。絞り込みはSPIで行い、その先の面接などで人柄を見ることを大切にしています。ESはAIである程度いいものができてしまうだろうから、それ以外の方法を重視するという流れになってきているのです。

AIは100点を120点にも、60点を100点にもできない

 さらに選考過程が進むと、面接官はAIでの化粧の下にある、本当の姿を見ようとさまざまな質問を重ねてきます。ガクチカや過去のエピソードについて詳しく質問を重ねてどういうシチュエーションで何を考えて動いたかを聞き出したり、志望動機についてもいろいろな角度から質問して、本当に会社を理解し入りたいと思っているかを見極めようとしたりします。先に紹介した記事でも、面接に関して「ある会社では3次面接まで想定問答集が役立った」と書かれています。おそらく、最終面接ではAIによる対策は及ばず、自力で内定をつかみとったのではないでしょうか。

 就活ニュースペーパーで取材したある学生は、内定の決め手は「熱量」だったと振り返っています。

「内定先の最終面接では『御社からいただけたら就活をやめます』『御社のビジネスモデルが好きです』と直球で伝えていました。論理的とは言えないかもしれませんが、逆に志望度がそこまで高くなかった企業では最終面接で落ちることもあり、最後は熱意が伝わるかどうかが分かれ目だったと実感しています」

 学情の担当者は、「AIは100点のものは120点にはできないし、60点のものを100点にすることもできない」と学生に説明するそうです。「この企業に入りたいです」とAIに丸投げするだけでは就活はうまくいきません。自分の言葉で自分の経験や志望動機を語れるように考え、研究することが大切。その補助ツールとして、AIを活用するということを忘れないようにしてください。

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