2026年03月11日

高市首相が見直し前向き「裁量労働制」ってそもそも何? 就活生ならぜひ知っておこう【就活イチ押しニュース】

テーマ:就活

 高市早苗首相が、経済の成長戦略のひとつとして掲げているのが「裁量労働制の見直し」です。見直しにより「柔軟な働き方の拡大」がすすむとされています。そもそも、裁量労働制とは何でしょうか? 見直しにより、働き方はどのように変化するのでしょうか? 就活生のみなさんが会社を選ぶ際にも、今後の人生を考える際にも、必要となってくる情報です。ニュースをしっかり理解して、今後の動きをチェックしていきましょう。(編集部・福井洋平)
(写真・衆院本会議で、所信表明する高市早苗首相。裁量労働制見直しにも触れた=2025年10月24日/写真はすべて朝日新聞社)

【裁量労働制とは】何時間働いても決められた時間だけ働いたとみなす

 まず、裁量労働制とは何か、確認しましょう。

 会社などで働く場合、一般的には、働く時間はたとえば午前10時から午後6時までというように定められています。これ以上働くと、残業代が出るという決まりです。

 ただ、たとえば研究開発にたずさわったり、企画を立案したりといった仕事は、長い時間働いていたとしても成果があがるとは限りません。こういった仕事については、働いた時間ではなくその成果に報酬を払うと考え、何時間働いてもあらかじめ決められた時間だけ働いたとみなして賃金を支払うという仕組みです。これを「裁量労働制」といいます。働いたとみなす「みなし労働時間」が1日9時間だとすると、たとえ3時間しか働いていなくても12時間働いていても9時間分の賃金が支払われる、ということです。

 この「みなし労働時間」は、労働者(社員)と使用者(企業)とのあいだで交わす「労使協定」で決められます。いつ、どれだけ、どのように働くかは労働者の裁量(自分の判断・決定)にまかされているため、裁量労働制と呼ばれているわけです。1987年の労働基準法の改正により導入されました。

【裁量労働制の職種】「専門業務型」と「企画業務型」の2種類

 裁量労働制が導入できる職種は法令で定められています。おおきくわけて「専門業務型」と「企画業務型」の2種類となっています。

「専門業務型」は、研究職、プログラマー、デザイナー、建築士など、業務が専門的で仕事の進め方や時間配分を労働者にまかせたほうがよいとされている職種です。新聞記者や編集者もこれに含まれ、全部で20業務あります。対象業務は、厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。

 もうひとつの「企画業務型」は、1998年の労働基準法改正で導入されました(2000年スタート)。こちらは、本社などの企画や立案、調査・分析にあたる業務が対象となっています。

 2018年には、当時の安倍晋三政権がすすめていた「働き方改革関連法案」で、この企画業務型の対象業務拡大が盛り込まれました。しかし、安倍首相が国会で裁量労働制で働く人の労働時間について「平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と発言したことに対し、そのもとになるデータが不適切だったことが判明。批判が高まり、法案から削除されるに至りました。
(写真・「裁量労働制はやめろ」デモ=2018年2月、東京・JR新宿駅前)

【まちがえやすい制度】フレックスタイムとの違いに注意

 裁量労働制とまちがえやすい制度が「フレックスタイム制」です。これは「変形労働時間制」の一種です。

 労働時間を1日単位ではなく、1週間や1カ月、1年単位で調整するのが「変形労働時間制」です。たとえば1日8時間労働と定められていても、ひまな時期は1日6時間勤務とし、逆に忙しい時期は1日10時間勤務とするなどして、1週間や1カ月、1年単位で定められた労働時間にあわせるのがこの制度です。

「フレックスタイム制」は、1日の始業時間と終業時間を自分で決められる制度です。一般的には労働時間が定められている場合、始業、終業の時間も定められていますが、これを自分で決めることができます。必ず出勤していなければいけない時間(たとえば昼の11~14時など)=「コアタイム」を決めているケースと、コアタイムもなくまったく自由に始業、終業を決められるケースがあり、後者は「スーパーフレックスタイム」と呼ばれることもあります。いずれにしても、労働時間そのものを決めることができる「裁量労働制」とは違うことに注意しましょう。

【メリットとデメリット】柔軟な働き方できるが長時間労働になりやすい?

 裁量労働制は、まさに働き方が労働者の裁量に委ねられているため、時間にとらわれず柔軟な働き方ができるというメリットがあります。

 厚生労働省が2019年に実施した調査によると、「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワーク・ライフ・バランスが確保できる」「仕事の裁量が与えられることでメリハリのある仕事ができる」と回答した割合は、裁量労働制の適用労働者のほうが、非適用労働者よりも高かったそうです。裁量労働制の方が柔軟に効率的に仕事をこなせる、ということがこの調査から見えてきます。労働時間によって賃金が変わらないことから、短時間で成果を上げたほうがいいという発想につながり、生産性が向上することも期待できます。

 一方、労働時間が把握されないことから、長時間労働を助長するのではという懸念もあります。2019年の厚労省の調査では、1日の平均実労働時間と平均みなし労働時間を比べた場合、実労働時間のほうが長くなっていました。

 みなし労働時間を超えて働いても、労働者の賃金は変わらないため、「定額働かせ放題」との指摘もあります。もっとも危険なのは、仕事の進め方に裁量が与えられていないのに裁量労働制が導入されてしまうことです。それこそ「定額働かせ放題」で、長時間労働が当たり前になりかねません。会社が過大な業務量を与えていたりした場合は、「裁量が失われている」と判断され、裁量制が無効とされるケースもありました。

【今後の流れ】自民党「働きたい改革」の流れか?

 日本が人口減少に直面するなかで、経済成長を果たすためには、労働者一人ひとりの生産性を上げることが必要と考えられます。高市首相は裁量労働制の見直しをすることで、生産性の向上につなげようと考えているとみられます。

 裁量労働制については企業経営者など使用者側が、対象業務の拡充や運用の緩和を求めています。経団連は「長時間労働の是正と労働者の健康確保が大前提」としたうえで、「労使で対象業務を決定できる仕組みの創設」を求めています。いま、働き方改革で時間外労働には上限規制(複数月平均80時間)がかかっていますが、自民党は「上限規制によって働きたい人が働けていない」として昨夏の参院選公約で「働きたい改革」を明記。高市早苗首相も就任時に「労働時間規制の緩和検討」を指示しています。

 裁量労働制の拡大が、この流れのなかで労働者を長時間働かせやすくなる制度とならないよう注視する必要があります。経団連のいう「大前提」をどのように保証するか、明確な見通しがないまま対象業務を広げたりすれば、長時間労働がいま以上に広がりかねません。

 これからの働き方に、裁量労働制の見直しは大きな影響を与えそうです。今後どのような議論がすすめられ、見直しがされていくか、ぜひニュースをチェックしつづけてください。

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