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2026年09月11日

社会

地震に水害、災害大国日本で遅れる避難所環境改善 今後の課題は? 考えてみよう【時事まとめ】

避難所の環境の悪さ指摘されている

 7月28日に最大震度7を計測した熊本地震は大きな被害をもたらし、いまも避難所生活を送る人がいます。9月に入ってからは連日のように水害のニュースが飛び込んでくるなど、自然災害の脅威は年々増し、災害と無縁な土地はもうなくなったと思わされます。

 防災・減災対策の重要性はきわめて高くなっているといえますが、そんな中で指摘されているのが、避難所の環境の悪さです。地震や水害など数多くの災害を経験してきたいまもなお、避難所では床に雑魚寝をするという光景が繰り返されています。なぜ、避難所は改善されていかないのでしょうか。防災・減災対策は今後の日本社会・経済にとって重要な柱であり、高市政権が重点投資先としてあげる戦略17分野のひとつにも「防災・国土強靱化」があげられています。避難所の問題から、防災・減災を考えるヒントをつかんでください。(編集部・福井洋平)
(写真・熊本県八代市に開設された避難所。段ボールを敷いて寝ている市民もいた=2026年7月30日/写真はすべて朝日新聞社)

【熊本地震】「避難所の環境十分でない」と熊本県知事

 地震や水害などの災害が発生すると避難所が開設されます。ただ、いまでもほとんどの避難所は被災者のプライバシーが十分確保されている環境とは言いがたい現状があります。8月19日に政府への要望活動で東京を訪れた木村敬・熊本県知事は、10年前の熊本地震と比較して災害対応のすべてが改善したといいつつ、「ただ、やっぱり発災当初で相対的に十分でなかったのは、避難所の環境だと思う」と語っています。

 避難所の問題を報じた9月1日の朝日新聞デジタル版の記事「1世紀前と変わらぬ避難所の雑魚寝 災害大国日本でなぜ繰り返すのか」では、103年前の1923年9月1日に起きた関東大震災後の避難所の写真を掲載しています。学校や寺に身を寄せ、持ってきた布団を床にしいて雑魚寝している光景は、1世紀たった今もほとんど変わっていません。避難所の環境改善に重要なのは清潔なトイレ(T)、温かい食事を出せるキッチン(K)、段ボールのベッド(B)といった「TKB」をより早く整えることだと言われているのですが、なぜ災害大国の日本で避難所の整備が進んでいないのでしょうか。
(写真・熊本県宇城市の避難所=2026年7月30日)

【被災地支援】避難所環境整備や人員育成は十分でなかった

 この記事によると、近代以降の日本では戦後まで長く、事前に災害対応を定めた基本法はなかったそうです。関東大震災のころは、炊き出しや救護も住民同士の助け合いが基本でした。転機となったのは戦後、死者・行方不明者が5千人を超えた災害「伊勢湾台風」(1959年)です。この2年後に災害対策基本法(災対法)が制定されて防災の概念が国の法律にはじめて盛り込まれ、同時に被災者を支援するのは基礎自治体、すなわち市町村と特別区(東京23区)の責務と定められました。国や県よりも住民に身近な存在だから、というのがその理由です。この枠組みは65年間、変えられていません。

 政府は繰り返される災害に対応するため、支援物資を被災地に送り込むことにも力を注いできました。しかし市区町村が被災地支援の責任をとる体制は継続しているため、支援を受け止めて環境を整える側の市町村がパンクすることが繰り返されていると記事では指摘しています。とりわけライフラインが寸断されるような大災害の場合、市区町村だけでは避難所運営などが難しくなります。

 いま日本各地の自治体は深刻な人口減少と高齢化に直面しています。地方自治体の人員不足が災害対応の遅れにつながったり、人員や予算の違いで自治体によって災害対応に大きな差がついたりすることにもつながりかねません。この記事で地域防災に詳しい大学教授は、アメリカでは災害時にまず地方政府が対応し、その能力を超えれば州、さらに連邦政府が人員・物資・財政面で支援を拡大すると紹介しています。この教授は、日本では避難所の環境整備や、運営を担う人材育成への支援は十分とはいえなかったと指摘しています。

 被災地の職員の人手不足をすくうために2018年から正式に導入されたのが「対口(たいこう)支援」と呼ばれる「応急対策職員派遣制度」です。これは支援に入る都道府県や政令指定市を被災自治体ごとに総務省が割り振り業務を助ける仕組みで、今回の熊本地震では8月末までに全国65の自治体から約2万2千人が被災地に派遣されました。

【防災庁】避難所の環境向上に国が責任をもつ

 被災地が直面する課題に対応するため、今年中に政府は「防災庁」を発足させる予定です。この組織は、防災を担う役所の権限や態勢を強くして「徹底した事前防災」にかじを切ることが目的です。トップは首相で、国土交通省や厚生労働省などほかの省庁への勧告権も持ちます。防災庁の職員に加え、自治体職員や民間のボランティアやNPOに参加する人も対象として研修を行う「防災大学校(仮称)」の設置も予定しています。

 防災庁が力を入れることの一つが、避難生活の環境改善です。さきほどのべたTKB(清潔なトイレ、温かい食事を提供するキッチン、段ボールのベッド)の調達や備蓄、それを使った訓練などを全国どこでも同じ水準にひきあげます。また、仕切り壁の導入によるプライバシーの確保など、いろいろな人が安心して過ごせる避難所づくりを進めるといいます。これまで地方自治体にまかせていた避難所運営について、国が責任をもって取り組むというアップデートがようやく行われるわけです。

【在宅避難】都市部では推奨、支援や情報どう届けるか課題

 人口の多い都市部では、避難所に人が集中して環境が悪くなる恐れがあります。そこで防災庁では、無事だったマンションなどの住民には、避難所に行かずに自宅にとどまる「在宅避難」を前提とする考え方を広めていくといいます。ただ、災害時の支援や情報は避難所に集まりがちです。避難所に行かない在宅避難者にも支援や情報を届ける仕組みづくりも、防災庁の課題となります。

 在宅避難者への支援は、今回の熊本地震でも問題となりました。自宅が無事であればまだいいのですが、自宅が損壊したとしても避難所に居場所がない、自宅が心配、健康状態の問題といった理由から、自宅や車のなかで過ごす在宅避難者が多数いました。実態の把握は難しく、区長や民生委員などが戸別配布で物資を提供するなどして対応していたといいます。県は特に健康被害が心配される車中泊の被災者に対して、看護師らが応対する相談ダイヤルを設けるなどしています。今後の災害対応でも課題となるテーマでしょう。

 災害はいまや、日本のどんな地域にでも起こりえます。防災・減災に向けての取り組みもますます広がっていくことが予想されます。防災・減災に役立つサービスやテクノロジーは今後の成長分野になっていくでしょう。自分の生活のため、また今後の成長分野を見極めるためにも、災害対策のニュースにはぜひ敏感になってほしいと思います。

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