30年ぶりの金利水準に
日本に「金利のある世界」が再来しています。2024年に長年続いてきた「マイナス金利」が解除され、現在は政策金利が30年ぶりの水準の0.75%まで高まっているのです。
ふだん生活をしていると金利について意識することは少ないかもしれませんが、就職活動で企業研究を深めたり、今後の日本の経済や自分のライフプランについて考えたりする際には金利の動きを把握しておくことが欠かせません。「金利のある世界」で、いま何が起きているのでしょうか。就活をすすめるにあたってぜひいま一度、金利について考えてみてください。(編集部・福井洋平)
(写真はiStock)
【金利上昇】2024年にマイナス金利政策解除
就活ニュースペーパーでは過去に何度もとりあげていますが、改めて「金利」とは何か、いまなぜ「金利のある世界」が再来しているのか、まとめます。
・お金を借りると金利(利息)がかかります。会社や事業者の多くは銀行からお金を借り、金利をつけて返しています。一方で銀行は預金者からお金をあつめて金利をつけており、その差(利ざや)が銀行の収益の柱となっています。
・金利は民間銀行、金融機関がある程度自由に設定しますが、様々な金利の基準となるのが「政策金利」です。これは日本の中央銀行である日本銀行が定めるもので、銀行間で1日だけお金を貸し借りする際の金利(無担保コール翌日物)の誘導(ゆうどう)目標のことです。
・日本は長らくものの値段が上がらず(デフレ)、景気の低迷が続いていました。そのため日本銀行は、企業や人々がお金を借りやすくなり、市場にお金が出回ってものの値段が上がり(インフレ)、景気がよくなるよう、できるだけ金利を下げる「金融緩和」政策をとってきました。そのひとつが2016年にはじまった、政策金利をマイナスにする「マイナス金利政策」です。こうすると民間銀行はお金を日銀に預けるとお金が減ってしまう可能性があるため、企業への貸し出しにお金を回すようになる→インフレが起き景気がよくなる、と日銀は考えました。
・2024年、日銀は目標にしていた物価上昇が見込めると判断し、マイナス金利の解除に踏み切りました。その後政策金利はじわじわ上昇し、現在は0.75%程度となりました。「金利のある世界」が再来したわけです。
(図版は朝日新聞社)
【金融業界】「利ざや」拡大で銀行に追い風、預金獲得競争も
金利があがったことで、大きな追い風を受けているのが金融業界、とりわけ銀行です。
低金利時代は、お金を貸しても低い金利しかつけられなかったため「利ざや」を稼ぐことができず、苦しい経営が続いていました。金利が上がったことで利ざやが広がり、収益が改善したのです。銀行最大手である3メガバンクの2026年3月期決算で、最終的なもうけを示す純利益は3社とも前年から3~4割伸びて過去最高となりました。
また、長らく低金利に苦しめられてきた地方銀行も直近の決算は好業績が続出しています。東京都の東京きらぼしフィナンシャルグループ(FG)は、前身のひとつである旧「新銀行東京」が経営危機時に投入された東京都の公的資金400億円を、計画より2年前倒しで返済することに成功しました。
(写真・3メガバンクの看板=東京都江東区/朝日新聞社)
預金獲得競争激しくなり、楽天銀とみずほ銀提携も
企業などにたくさん貸し付けて利ざやを得るためには預金をたくさん集める必要があり、預金集めのために普通預金の金利をあげるなど、銀行間の競争が激しくなっています。3メガバンクの一角であるみずほFGは5月、傘下のみずほ銀行とネット専業の楽天銀行が資本業務提携を結んだと発表しました。ネット銀行は店舗を持たずコストが低い分、メガバンクよりも高い金利で預金を集めることに成功しています。楽天銀行の2025年度末の預金残高は前年比で10%以上も伸びましたが、貸出先は住宅ローンなど個人が中心で、集めたお金が企業に回りにくい課題がありました。法人顧客を多数抱えるみずほ銀行と提携することで、みずほ銀が楽天銀の集めた預金を法人顧客に融資するという協力体制がとれることになります。
このほか、生命保険会社も金利上昇で売上アップが見込まれています。大手生保の明治安田生命保険の社長は朝日新聞のインタビューで、売上高にあたる「グループ保険料」が2026年度は2024年度から1.6兆円増え、5兆円の大台に達するとの見通しを示しました。利上げが進むと、保険会社が契約者に約束する利回り(予定利率)の引きあげにつながります。そのため特に、掛け捨てではないため予定利率が重視される貯蓄性保険の売上が期待できるというのです。
【生活への影響】住宅ローン上昇、企業の利益も押し下げられる
金利の上昇は、私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。
銀行預金の金利が上がることは、日々の生活にはメリットでしょう。ただ、金利上昇は、住宅を買う際に金融機関から借り入れる「住宅ローン」の金利上昇にもつながります。つまり、返済金額が高くなるということです。
みずほリサーチ&テクノロジーズの服部直樹氏は2025年12月、政策金利が0.5%程度から0.75%程度になったことを受け、家計全体で年0.8兆円、1世帯あたり年1.5万円のプラス効果があると試算しました。ただ金利上昇の恩恵は、住宅ローンなどの返済が進み金融資産も多く持つ高齢世帯ほど受けやすいとも分析。住宅ローンなどの負債を保有している世帯に限ると29歳以下は年5万円のマイナス、30代は4.5万円のマイナスになるといいます。このマイナスを賃金上昇や資産運用でカバーできるかどうかが重要になると、服部氏は指摘します。みなさんのライフプランにも関わる重要な試算ですので、ぜひ認識しておいてください。
服部氏は、企業(全規模・全産業ベース、除く金融・保険業)の経常利益については、利上げにより1兆円下押しされると試算しています。借り入れの比率が高いほど返済額も高くなることになり、影響が大きくなります。服部氏は「勤務先の選択を含めて、家計を守り、自らの所得を伸ばす行動が求められる」と語っています。
金利上昇は奨学金の利率アップにもつながっており、奨学金返済に困る人が増えるという見方も出てきています。支援団体の試算によると、第二種(有利子)奨学金で月10万円を大学4年間借り、卒業後に20年間返済した場合、2026年3月の卒業時点と4年前とでは、返済総額に100万円以上の違いが出るというのです。物価上昇の影響も大きく、今後学生をどう支援していくかが問われることになりそうです。
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