アメリカと中国=「G2」
アメリカのトランプ大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席が5月14、15日の2日間にわたり中国・北京で会談しました。トランプ氏が「G2」と呼ぶ2大強国はトランプ氏が大統領に就任した2025年は関税政策や輸出規制などで対立が激化していましたが、2025年10月の首脳会談でいったん「休戦」。今回は米中が対立を避け、協力関係を築こうという流れに見えます。今後、米中関係はどうなっていくのか。今回の首脳会談についてざっくり把握し、今後の国際関係を読み解く材料にしていきましょう。(編集部・福井洋平)
(写真はiStock)
【中国の狙い】米国と「対等」意識する中国
昨年10月に続く今回の米中会談は本来今年4月に行われる予定でしたが、2月末にトランプ政権がイスラエルとともに仕掛けたイラン攻撃の影響を受け、延期されていました。今回の会談で両国はどのような狙いをもっていたのでしょうか。
中国側は、アメリカがイランとの停戦交渉でつまずき国際的な信用を下げる中で、米中をより対等な関係性に近づけたいとする思惑があったとみられます。
それを象徴するキーワードが、14日の首脳会談後、中国の国営新華社通信を通じて中国側が明らかにした「中米の建設的な戦略的安定関係」という言葉です。習氏は会談で「競争に節度がある良い安定であり、相違点が管理可能な常態的な安定であり、平和が見通せる持続的な安定であるべきだ」などと説明したそうです。このキーワードはアメリカ側からは発信されておらず、中国側の意向が強く反映された言葉とみられています。
中国は昨年以降、厳しい関税政策やベネズエラ、イランへの攻撃などを展開してきたトランプ政権を警戒してきたといいます。アメリカの信用が揺らいできている今、中国側が投げかける形で中米関係をひとまず安定させよう、としているわけです。中国がすでにアメリカと並ぶ大国になりつつある、という自信がその背景にあります。習氏は会談冒頭、トランプ氏にこう語りかけたといいます。
「世界は岐路に立っている。グローバルな課題に取り組み、安定をもたらせるのか、我々大国の指導者が答えを出さなければならない」
引き続き周辺国や地域に威圧的な態度をとっている中国ですが、昨今の国際法を無視したアメリカに対しては、いわば諭(さと)すようなアプローチをしたわけです。長年国際社会のリーダーとして君臨してきたアメリカの地位低下にあわせ、中国が国際秩序のなかで新たな「極」になろうとしている意図が見えてきます。
(写真・習近平国家主席=2026年3月5日、中国・北京/朝日新聞社)
【アメリカの狙い】ディール(取引)姿勢貫くも、成果乏しく
一方のトランプ氏も、対中関係を「競争」から「協力」基調に変える姿勢を見せています。ただ、グローバルな視点に立った中米関係構築を呼びかけた習氏に対し、トランプ氏は会談では習氏のことを「偉大な指導者」と持ち上げ、「あなたの友人であることが誇りだ」と語るなどして、習氏との個人的関係を強調し、対照的な姿勢を見せました。
今回のトランプ氏訪中にあたっては、イーロン・マスク氏(テスラCEO)、ティム・クック氏(アップルCEO)、ジェンスン・フアン氏(エヌビディアCEO)ら巨大テックの経営者が同行。トランプ氏は彼らを「世界最高のビジネスマンだ」と紹介するなどして、二国間の前向きなディール(取引)への積極的な姿勢をにじませています。トランプ氏は会談後のインタビューで、中国が米国産の大豆や原油、液化天然ガス(LNG)の購入を約束し、航空大手ボーイング製の航空機200機を購入することでも合意したと語っています。
ただ、会談以前はイラン情勢の手詰まりもあり、アメリカ側は交渉にのぞむための材料が乏しく、重要な成果は望めないのではないかという見方が関係者の間では根強くありました。たとえばイラン情勢についてホワイトハウスは今回の会談でホルムズ海峡の開放の必要性で中国側と一致し、イランが核兵器を保有できないことでも合意したとしていますが、いずれも中国の従来の立場を超えるものではありません。目先の経済的成果は得たものの、状況を打破できるような大きな成果が出せたかは疑問です。
(写真・トランプ米大統領=2026年3月19日午後、米ワシントン/朝日新聞社)
【台湾問題】「両国は衝突しうる」中国が警告
もうひとつ注目すべきポイントは、台湾をめぐる問題です。ここでも、中国がアメリカに対して強気に交渉している様子が見てとれます
中国は、台湾は自国の一部という主張を続けています。今回の会談で習氏はトランプ氏に対し、「(台湾問題の)処理を誤れば両国は衝突しうる」と警告しています。
アメリカは台湾と1979年に断交して中国と国交を結んでいますが、その後も台湾に武器の売却を続け、台湾に対しては1982年に武器売却を中国と事前協議しないと保証していました。ところがトランプ氏は会談後、台湾への武器売却について習氏と「詳細に議論した」と語り、その後のインタビューで台湾への武器売却について「中国次第だ。我々にとって非常によい交渉材料だ」と表明しています。長年の慣行を破って、台湾への武器売却について中国と交渉する姿勢を見せたわけです。これには、通商上の利益やイラン情勢での中国の対米支援と引き換えに、中国が反対する武器売却を見直すためではないかという観測も出ています。そうなれば、台湾の防衛計画や、台湾の人々に与える心理的影響ははかり知れません。
一方でトランプ氏は、台湾を率いる頼清徳(ライチントー)総統と協議する可能性も示唆しています。そうなれば中国側は強く反発されることが予想されるため、台湾問題の行く末はまだ流動的と言えそうです。
【日本どうなる】冷え込む日中関係、アメリカの助けも期待できず?
トランプ氏は今回の訪中時、9月24日に習氏をワシントンに招待することを表明しました。今年はその後もAPECやG20が予定されており、最大で4回、トランプ氏と習氏が会談するかもしれないと見られています。そのため、今回の首脳会談はあくまで「スタート」という見方もあるようです。
さまざまなリスクをはらみながらも米中が「戦略的安定関係」を築こうとしていくなか、日本の立場はどうなっていくのでしょうか。日中関係は長らく、対話が途絶えるほどに冷え込んでいます。中国人の日本への渡航自粛は続いており、日本企業向けのレアアース輸出についても中国政府が規制を強化。パンダも日本からいなくなってしまいました。そしてこれまでのように、アメリカが自国の犠牲をはらってまで中国と対峙してくれるという期待感は失われつつあります。米中が日本の頭越しに手を握る未来が迫りつつあるいま、日本がこの両大国とどう向き合うべきか、真剣に考えるときが来ているのかも知れません。
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