新規受け入れが原則停止に
外食業の分野で、外国人労働者の新規受け入れを原則停止――3月末に公表されたこのニュース、覚えていますでしょうか。外食の現場で外国の方が働いているのはごく日常の光景になっていますが、実は受け入れ総数に上限があり、そこに達しそうだからというのです。
人手不足が常態化する日本では、外国人との共存は欠かせません。一方で日本人の仕事を奪ってしまうという懸念から、外国人労働者受け入れを制限すべきという議論も続いています。人口が減っていく日本で、私たちは外国人とどう向き合っていくべきなのか。社会に出ようとする皆さんも、いま一度自分事として考えてほしいテーマです。(編集部・福井洋平)
(写真・飲食店が立ち並ぶ繁華街=2026年4月12日、東京都/写真、図版はすべて朝日新聞社)
【特定技能停止】外食業界、上限に達する見込みで受け入れ停止
外国人労働者の受け入れが停止されるのは、「特定技能」という制度です。まずは、この「特定技能」とは何か、外食業にはどういう影響があるとみられているのか、まとめます。
特定技能とは、日本国内の人手不足に対応するために2019年度に始まった制度です。人手不足が深刻と政府が認めた分野で一定の専門性をもった即戦力の外国人を受け入れるもので、在留期間が最長5年の「1号」と、より高度な技術があり在留期間の上限を設けない「2号」の資格があります。現在、外食業を含めて19分野が定められています。ちなみに、途上国などへの技能移転を目的に外国人を受け入れる「技能実習」とは別の在留資格です。
「1号」については国内の雇用に悪い影響が出ないよう、政府が受け入れ人数の上限を決めています。2029年3月末までに80万人余りを受け入れる方針で、そのうち外食は5万人の枠がありましたが、近いうちに上限に達する見込みになったのです。そのため、政府は4月13日付で、外食業界への新たな受け入れを原則停止しました。
【外食業界への影響】業界団体トップ「人手不足倒産の可能性も」
農林水産省によると、国内の外食業で働く人は約400万人。特定技能1号はこのうち約1%を占めている計算になります。ご存じのとおり外食業界の人手不足は深刻で、特定技能1号の受け入れ停止は外食業界にとっては死活問題になりかねません。朝日新聞の取材では、外食大手のすかいらーくホールディングス(HD)やそばチェーンの「ゆで太郎システム」がアルバイトとして雇った外国人留学生を特定技能1号の資格取得後に正社員、正社員級として雇う予定だったといいます。雇われた人の不安も大きくなるでしょうし、要員計画にも影響が出てくるでしょう。
業界団体「日本フードサービス協会」の会長は、朝日新聞のインタビューに「外食の事業所は55万カ所あり、そもそも(上限)5万人では少なかった」と訴えています。業界側に受け入れ停止方針が伝えられたのは公表の2日前だったといい、あわてて申請に走ったものの、間に合わずに採用計画の見直しを余儀なくされたケースもあるといいます。また、 外食業全体で働く約400万人はアルバイトやパートを含めた数字であり、正社員に限ると約90万人で、特定技能1号の方はこのうちの5万人を占めていると指摘。「(原則停止で)人手不足に拍車がかかり、営業時間を短くしたり定休日を設けたりといった対応を迫られる可能性がある。人手不足倒産もあり得ます」とも話しています。
【今後の予想】他の業界でも上限に達する予測が
受け入れ停止によって人手不足が進めば、外食業界全体で給料があがるなどの変化もあるかもしれません。ただ、人手不足で現場が疲弊しサービス水準が下がったり、人件費の高騰で値上げが進んだりすることで、業界の魅力が薄れていく危険性もあります。
朝日新聞は、特定技能1号の受け入れがいまのペースで進めば、様々な業界で上限に達するという専門家の見解を紹介しています。それによれば飲食料品の製造は2028年2月、介護は3月、建設は4月、自動車整備と航空は12月に上限に達するとみられます。受け入れ停止の影響が今後どんどん広がっていく可能性も否定できません。
受け入れの上限設定は是か非か、設定するとして何人受け入れるのが「適正」なのか――。簡単に答えは出ませんが、多くの業界にかかわる問題でもありますので、高い関心をもってチェックしていきたいテーマだと思います。
【在日外国人】増加率はトップクラス、グローバル化への対応を
朝日新聞では多様な人々が共に暮らす姿を「多民社会」と名付け、2018年から断続的に連載を展開しています。今年から始まったシリーズ「不安の正体」では、増える外国人に対する「なんとなく感じる不安」に焦点をあて、外国人が多く暮らす日本社会への理解を深めようというねらいがあります。連載記事のなかから、在日外国人を理解する要点についてまとめます。
・日本の外国人人口……欧米諸国より少ないが、増加率はトップクラス
現在の日本の総人口に占める外国人の割合は過去最高の約3%ですが、10~20%台が並ぶ欧米諸国と比べるとまだ開きがあります。一方、日本で暮らす外国人は1年で約10%増えており、欧米と比べても増加率は著しく高いです。人手不足を背景に、政府が外国人受け入れに舵を切ったためです。
・在留資格(ビザ)で最も多いのは永住者(在日コリアンなどの特別永住者を除く)の約93万人(2025年6月現在)で、次いで技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザを持つホワイトカラー労働者の約46万人、技能実習の約45万人、特定技能の34万人となっています。
・日本で働く外国人労働者数は230万人を超え、過去最高を更新中です。日本の全就業者数に対する割合は約29人に1人、外国人を雇用する事業所は約32万カ所以上に上り、日本の産業は外国人労働者なしでは立ちゆかなくなりつつあるといえます。2024年に研究機関が出した労働需給予測では、政府が目標とする経済成長を実現するためには2040年に688万人の外国人労働者が必要となりますが、実際には100万人近く不足すると見込まれています。しかし、外国人政策の厳格化を掲げる高市政権は、むしろ外国人労働者の受け入れを一定程度制限する方向で検討しています。
グローバル化への対応を考えるのは、海外勤務をめざす人だけでいい――そういう時代はもう過去のものとなりました。どんなドメスティックな業界であっても外国人労働者と無縁ということはほぼなく、同僚、部下や上司、はたまた営業の相手として外国人と接することが当たり前の時代になっています。外国人受け入れ制限という流れも、社会の動きのなかでこれから大きく変化していくことでしょう。これからもぜひニュースをしっかりチェックしてください。
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